【映画】「春画先生」感想・レビュー・解説

いやーしかし、むちゃくちゃな話だったな。特段これと言ってどんな想像もしていなかったが、しかし、全然想像していたのと違う物語だった。

物語は、喫茶店で働く春野弓子が、近所で有名な「春画先生」から店内で話しかけられたことから始まる。喫茶店のテーブルで春画を広げていた、春画先生こと芳賀一郎は、弓子の視線が春画に一瞬注がれたのを見逃さなかったのか、「もっと春画が観たければここに来るといい」と言って名刺を渡す。弓子は翌日、名刺を頼りに春画先生を訪ね、そこで前置きも無しに色んな春画を目にし、すぐさま「お手伝いさん兼弟子」の立場になった。

しかし弓子には、春画以上に心惹かれる存在があった。それは、春画先生その人である。

ある日、春画とワインを楽しむパーティーに参加するため、弓子は先生からあるドレスを着るよう言われる。亡き妻のものだそうだ。伊都という女性はとても美しいのだが、7年も前に亡くなってしまった。そんな亡き妻のドレスを着て、パーティーに参加。そこで彼女は、先生が語る「伝説の7日間」のエピソードを知る。

その後、先生の屋敷に勝手に上がり込んだ男と共に、かつて先生が在籍していたという大学へと向かうことに、出版社の編集者だという辻村俊介は、夜のバーで弓子が知りたがっていた先生の亡き妻の話を滔々と語るのだが……。

というような話です。

なんと言ったらいいのかよく分からないけど、とにかく「偏愛」の物語であることは確かである。しかし、その「偏愛」は決して、「春画」だけに向けられているわけではない。作中では、様々な形で「偏愛」が描かれていく。そしてそのどれもが「奇妙奇天烈」という感じなのである。

そもそも冒頭の2人が出会うシーンからしてむちゃくちゃというか、「普通はそこ、もうちょっと描かないと成立しないでしょ」みたいな感じで始まる。本作では随所にそういう「省略」があり、「問答無用で好きだから」みたいなある種の「暴論」で話が進んでいく。この感じが好きかどうかで、作品の受け取り方が変わるだろうなぁ。一種の「ファンタジー」だと受け取って楽しめればいいけど、そうでないと「なにこれ?」みたいな感じになってしまいそうな気がする。

僕は、最初こそ面食らったけど、途中からは「そういうルールで展開される物語なんだな」と受け入れて、割りかし楽しめた。しかし、辻村俊介の存在感とか、先生との「密約」とか、物語の最後の「むちゃくちゃな展開」とか、結構ギリギリのライン際を攻めているというか、むしろアウトなんじゃないかみたいな感じもあって、そういう部分も結構賛否分かれそうだ。特に、女性からは受け入れられないような感じもするんだけど、どうなんだろうか。

しかし素晴らしかったのは柄本佑。辻村俊介という役柄は、本当に上手くやらないと「単に嫌な奴」で終わってしまうと思うんだけど、柄本佑が絶妙に演じることで、僕の感覚では「ギリギリセーフ側にいる」という感じがした。ホント上手いよなぁ、柄本佑。「実際にこういう人いそうだよなぁ」という雰囲気の醸し出し方も含めて、見事だったと思う。

むちゃくちゃ良かった、というわけではないが、「笑い絵」と称される春画のように、肩の力を抜いて観る分にはなかなか楽しめる映画じゃないかと思う。また個人的には、この作品に出てくるような「変人」は結構好きなので、割と関わりたいタイプの人たちでもある。まあ、春画にはさほど興味は持てないが。

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