【映画】「名無し」感想・レビュー・解説

うーん、どうかなぁ、僕が上手く受け取れてないだけかもだけど、ちょっとまとまってないなぁという印象が強かった。1つ1つの要素はなかなか興味深かったのだけど、それらがあまり上手く融合していないような。設定はなかなか秀逸だったので、物語的にもう少し上手くまとまっていたら良かったのにな、と思う。

映画の冒頭は、なかなか良い感じで始まる。佐藤二朗演じる謎の男がファミレスで無差別殺人を繰り返すのだが、皆彼が近づいても逃げたりしない。何故なら、血を噴き出して倒れていく人たちは明らかに鋭利な刃物で刺されているのに、男は手に何も持っていなかったからだ。しかし男は、何かを握りしめているような手でナイフを突き刺すような動作をし、そうすると、まさにナイフで刺されたかのように目の前の人が血を噴き出して倒れるのである。

すぐに警察が捜査を開始するが、店内を映したカメラや店内にいた客のスマートフォンに残っていた映像をすべてさらってみても、この謎の男の手には狂気らしきものが映っていない。

一体何が起こっているんだ?

というようなスタートである。実は男はナイフを持っており、それは、ガラスや鏡などに反射した時には映し出される。しかし、直接は見ることが出来ないのだ。そして、「どうやら、男が右手に持ったものは見えなくなってしまう」という設定であることが、割と早い段階で示唆される。

そして、そんな男が起こす凶行と、そんな男の来歴が描き出されるのが本作『名無し』である。

冒頭で提示される設定は、凄く良かった。明らかに非合理的な状況であり、だから「合理的に解決することはあり得ない」ことが冒頭からすぐに分かる。そしてそのお陰で、「何故そんなことをするのか?」みたいな部分に観客の焦点が自然と当たっていくように思うし、そういう構成は上手かったなと思う。

のだけど、そこからの展開は、うーんって感じだったなぁ。正直なところ、何を描きたいのか、僕にはちょっとピンと来なかった。

昔『イノセンツ』という、大友克洋の『童夢』をオマージュしたという映画を観たのだが、これは「突如超能力を手にしてしまった子どもたちが、無邪気さ故にその力を不用意に使ってしまう」みたいな物語だった。で、本作『名無し』も、なんとなくそういう方向性になるのかな、と思っていた。設定が全然違うので同じようにはならないが、要するに「望まずに手にしてしまった異形の能力といかに向き合って生きてきたのか?」的な話なのかなと想定していたというわけだ。

まあ、全然そんな風にはならず、別にそのこと自体はいいのだけど、本作『名無し』はどうにも中心軸がないような感じがあって、モヤモヤさせられた。

特に、タイトルの『名無し』というのは、本作の設定においては結構重要な要素のはずなのだが、最後まで観てもなんか中途半端な印象が強かった。「子どもに名前を付けると~」というのはまあ分かりやすい話だったが、個人的には「名前を知ること」と「見えない凶器を振り回して無差別殺人を行うこと」の間にあまり繋がりが感じられず、設定としてもシンプルじゃないよなぁ、と思う。「名無し」という要素を重視したかったのなら、「右手で持ったものは見えなくなる」みたいな設定は止めて、もう少しその「名無し」的な部分に振り切った方が良かったんじゃないかなぁ、と思う。ちょっと分かりづらかったなぁ。

あと、ラストで「あの人とあの人が出会うの???」みたいな展開になって、これもちょっと良く分からなかったなぁ。このシーンがあると、それまで積み上げてきた描写が色々と崩れない? だから、「一方が幽霊とか、幻覚みたいな存在」なんだと思ったんだけど、それにしたって「だから何?」って感じになるんだよなぁ。よく分からない。

というわけで、ちょっと微妙だったなぁ。

ただ、繰り返しになるが「凶器が見えない」という設定はメチャクチャ秀逸だったなと思う。映像的にインパクトあったなぁ。また、僕は最初、「凶器が映っていない状況で、この男の殺人罪が果たして成立するのか?」という部分を深堀りしていくのかな? と思ったりもした。映像記録があって、男が刃物を刺しているような動作も映っているが、しかし凶器そのものは映像では捉えられず、凶器も発見されていない、みたいな場合、現状の日本の刑法で彼を有罪に持ち込むことは出来るんだろうか? なんて方向に進んでも、それはそれで面白かったかもしれない(その場合、佐藤二朗の怪演は不要になるのだが)。

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