【映画】「デュオ 1/2のピアニスト」感想・レビュー・解説
メチャクチャ面白いというわけではないのだが、なかなか興味深い映画だった。実話を元にした映画をよく観るが、本作などはまさに「実話じゃなければ成立しない物語」だと思う。
なにせ、普通は思いつかないだろう。「2台のピアノを1台のように弾く」なんてことは。そもそも普通はそんなことする必要がないのだし、仮にそんな必要性に駆られたとしてもまず不可能だからだ。
しかし本作は、「遺伝性の難病により、手が不自由になることが宿命付けられた双子姉妹の物語」だから成立するのであり、それが実話だというのだから、なんとも驚きである。
ただ、なんというのか、「こういう現実が存在した」という事実以外の部分には、さほど惹かれなかったかなぁ、という感じだ。本作は正直、どこまで事実に沿っているのかよく分からないのだが(家族の話や、学校での出来事なんかが実際にあった話なのか分からない)、それが事実にせよフィクションにせよ、そんなに強くは関心を抱けなかった。まあそんなわけで、僕はシンプルに「こんなムチャクチャなことをやってのけた双子姉妹が実在する」という事実に対して驚き、惹きつけられたみたいな感じである。
この双子の奏法の凄まじさについては、詳しくは説明されないのであくまでも僕なりの解釈になるが、どう「神業」なのかを少し説明しておきたいと思う。
まず、彼女たち双子は、遺伝性の病気により、手や腕の骨が「90歳くらい」と言われるほど弱っていた。治療によりどの程度改善するのかはよく分からなかったが、少なくとも「ピアノは趣味程度にしか弾けない」と突きつけられてしまった。
しかし2人は諦めない。まず彼女たちは、手の動かし方を工夫した。普通ピアノを弾く際は、概ね鍵盤の上に指を載せた状態のまま、指の関節を激しく動かすことで鍵盤を叩くことになるだろう。しかし、関節を動かせば動かすほど病状は悪化する。そのため彼女たちはまず、腕をピアノと身体の間で弧を描くように大きく動かすことにした。関節は動かさずに、腕を上下に上げ下げするその力で鍵盤を押しているというわけだ。
ざっくりこの辺りまではなんとなく説明されるのだけど、ここからは僕の推測だ。2人はここから、「1人で弾く楽譜を2人分に分割する」ことにした。どうしてそんなことをしたのかは、恐らくこういうことだと思う。
弧を描くような腕の動かし方によって、手や腕への負担を軽くすることは出来たが、しかしそれによって「速く弾くこと」が出来なくなったのだと思う。もう少し具体的にいうと、「楽譜の上で音符が密に詰まっている箇所は1人では弾けない」のだろう。だから彼女たちは凄まじいことを考えた。例えばある箇所に、音符が5個密に並んでいるとしよう。彼女たちの腕の動かし方では、1人では弾けない。しかしここを、「1音目、3音目、5音目を姉が」「2音目、4音目を妹が」弾くという形にしたのだ。こうすれば、手を速く動かせなくても弾ける。
しかし当たり前だが、この奏法は、2人が「完璧」というくらいのタイミングで鍵盤を押し続けなければ成立しない。双子のこのアイデアを聞いた教師は最初「不可能」「神業」と言っていた。まあ普通にはまず無理だろう。しかし、彼女たちは「双子」である。そして、「普段は付けているギブスを、ピアノを弾く時だけ外す」「膨大な楽譜と格闘し、お互いの弾く箇所やタイミングを揃える」という努力を繰り返すことで、ついに「2台のピアノで、まるで1台のピアノを弾いているかのような演奏」が可能になったというわけだ。
みたいなことを書いてはいるものの、正直僕はピアノも弾けないし楽譜も読めないので、これがどれぐらい難しいことなのかよく分からない。たぶん、ピアノを弾ける人が観たらもっと驚くんだろうなという気はする。
というわけで、そういう「双子が凄いことをしている」みたいな部分は結構面白かったのだけど、それ以外の部分はちょっとあんまりだったかな。「双子であるが故の葛藤や衝突」みたいな部分は面白いところもあったけど、「家族の物語」はちょっと不快だった。そのほとんどの理由が父親にあって、まあ最後の方はなんかしれっと良い感じの父親になっていたけど、個人的には父親としても人間としてもメチャクチャ嫌いなタイプだった。
ただまあ、ほとんど描かれていない部分ではあるものの、「父親があんな感じだったからこそ、双子姉妹はずっとピアノに熱中していられたのだろう」とは思うし、結果として「ピアノこそ自分の人生を賭けるべきものだ」みたいな感じで対峙出来るようになったことを考えれば、決して悪いだけではない。しかし、これは「物心付く前から子どもに無理やりスポーツをやらせる親(オリンピックに出る選手なんかはそういう育ちの人が多い印象)」に対しても感じることなのだけど、「ホントにそれは正解かね?」と感じてしまいもする。
ちょっと脱線するが、ホント、これはなかなか難しい。音楽もスポーツも同じだろうけど、若い頃からやっていればいるほど有利だろうし、有利どころか、その世界で生きていこうと思ったらそうならざるを得ないみたいなところはある(八村塁みたいな存在は例外中の例外だろう)。だから、結果的に活躍できる音楽家・アスリートになっているのであれば、「親が子どもの頃から無理やりやらせてくれて良かった」と思えるかもしれない。しかし、すべての子どもが活躍できるようになるわけではないし、むしろそうではない人の方が圧倒的に多いはずだ。その場合、親から無理やり押し付けられた子どもは、その生い立ちを許容できるのだろうか?
みたいなことをよく考えてしまう。僕には子どもはいないが、いたとしたら、僕にはそんな確信を持って、子どもに何かを押し付けたり出来ないな、と思う。出来ないというか、したくない。
まあ、正解など無い問いなのだけど、本作で描かれる父親を見ていて、普段からよく考えるそんな問いを改めて思い浮かべたりした。
あと、「双子姉妹」として登場する2人の女優は、実際には双子じゃないんだね。「双子だ」
って先入観があったからってのもあるかもだけど、普通に双子だと思ってたからビックリした。
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