【映画】「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」感想・レビュー・解説

いやー、メチャクチャ面白かったなぁ。びっくりしたー。

本作は、予告は何回か見たことがあるんだけど(だから「殺し屋の話」だということは知ってた)、全然観るつもりはなかった。本作がシリーズ第3弾だということも知らなかったし、もちろん前2作も見てないし、だから物語の設定は何も知らない。なんとなく漫画原作なのかと思ってたんだけど、違うのか。いや、それは別にどうでもいいんだけど、とにかく、シリーズの設定やキャラクター造形についてはまったく何も知らずに鑑賞した。

本作を観ようと思ったのは、Twitterで「池松壮亮が凄い」みたいなのがちょっと話題になっていたからだ。池松壮亮って、出てると見ちゃうよなぁ。というわけで、ただそれだけの理由で観てみたんだけど、やっぱり池松壮亮は凄かった。この人、「無茶苦茶な世界観でも成立させちゃう」みたいな雰囲気があって、それが凄い。本作も、普通に考えたら「いやいやいや」と思ってしまうようなあり得ない世界観で物語が展開されるのに、どことなくリアリティがある。「僕が知らないだけで、世界のどこかでこんなことが起こってるんじゃないか」みたいな予感を漂わせるのだ。

その一端を、池松壮亮が担ってる気がするんだよなぁ。どんな荒唐無稽な状況でも、池松壮亮が「大黒柱」的に作品を下支えしてるみたいなところがある気がする。いや、まあそれは作品にもよるのかもだけど、ちょっと前までやってたドラマ『海のはじまり』でも、やっぱり池松壮亮は凄かったし、そういう「作品を成立させる請負人」的なポジションに期せずしてなってるみたいなところがある感じするなぁ。

しかし、それ以上に、主人公の杉本ちさと、深川まひろを演じた2人がとても良かった。

という話は、少し後でしよう。

「本作を観て面白いと感じた」というのは正直、僕にとってはなかなか驚きの状況である。というのも、僕は基本的に「ストーリー」にしか興味がないからだ。小説でも映画でも、「話の筋」にほぼ集中していて、それ以外のことにはあまり関心が向かない。もちろん、「登場人物の会話がいい」とか「登場人物のキャラがメッチャ良かった」みたいなことはあるが、「この映像が綺麗」「あそこの音楽は良かった」「衣装が素敵」「この俳優をここで使うのか!」みたいなことには、正直あまり関心がないのである。

さて、本作『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』は、まぁストーリーが存在しない。潔い。「話の筋」なんて何もない。本作の紹介は、一瞬で終わる。「2人の殺し屋が、ターゲットを殺しに向かうと、”野良の殺し屋”が先回りしており、色々あって結局、ターゲットも”野良の殺し屋”も逃した。で、その”野良の殺し屋”を全力で殺しに行く」というだけである。本当に、物語としてはこれしかない。「ストーリー」にしか興味がない僕は普通、全然面白いと感じられない作品のはずなのだ。

にも拘らず、ムチャクチャ面白かった。だからビックリした。まあ、時々そういうことはあるが、にしても「ただ殺し合ってるだけの映画」がこんなに面白いとはなぁ。

で、やはりその凄みはアクションシーンにある。これ凄すぎないか? と思って、鑑賞後に公式HPを観たら、深川まひろを演じた伊澤彩織って人はガチのアクションスタントの人なのか。「~の人なのか。へぇ~」で終われるようなレベルのアクションじゃなかったんだけど、まあとりあえずは納得。

で、その相棒を務める杉本ちさとを演じた髙石あかりも、負けず劣らず凄かったと思う。もちろん、伊澤彩織がガチのアクションスタントだと知ると、「深川まひろの方がアクション多かったのはそういうことか」と納得出来るんだけど、髙石あかりも、素人の僕の目には全然見劣りしないぐらい動けていたから、むしろそっちの方に驚かされたという感じがする。

で、池松壮亮は、そんな2人に命を狙われる”野良の殺し屋”を演じてたんだけど、池松壮亮もアクションがちょっと凄まじかった。ガチのアクションスタントであり伊澤彩織とタイマンで肉弾戦を繰り広げるんだけど、「ホントに闘ってる風にしか見えない」ようなアクションだった。凄い。このアクション観るだけで、十分元取れる感じある。

しかし池松壮亮は、ちょっと前は映画『ぼくのお日さま』でスケートやってたし(元々出来たのかもしれないけど)、今回もメチャクチャなアクションやってたりで、「演技力がある」というだけでは乗り越えられない状況を努力で吹き飛ばしてる感じあるなぁ。ホント凄いなと思う。

あと、本作には、伊澤彩織と池松壮亮がガチで闘う場面が2回出てくるんだけど、この2つのシーンの対比も良かったですね。ただ、深川まひろの心中を想像すると「悔しいだろうな」という気がする。まあでも、別に「趣味」なわけじゃなくて「仕事」なんだから、そんな感情的な部分は置き去りにしていくしかないわけだけど。

そう、本作は「殺し屋」を「仕事」と割り切る者たち(元の設定をよく知らないけど、どうやら「殺し屋協会」みたいなものがあり、深川まひろも杉本ちさともそこに所属する”正規の殺し屋”らしい)が大暴れしていく。そんなわけで「清掃屋」なんて役割の人たちも出てきて、「仕事で人を殺してます感」が醸し出されていて面白かった。

また、日本であれだけドンパチやってるのに、警察も来なけりゃ、「キャー!」とか言ってる一般市民もほぼ出てこないってのも、「リアリティ」を潔く置き去りにしてて良かった。確かに本作には、そういう要素は要らないよなぁ。シンプルに「殺し屋稼業」に焦点を当てるのが正解で、そういう感じも凄く良かった。

と色々書いて来たんだけど、実はまだ、本作の一番好きな点に触れていない。それは、深川まひろと杉本ちさとの会話である。メチャクチャ良かった。この2人の会話、永遠に聞いてられるなって感じ。これ、脚本書いてるの男なんだよなぁ。この「ダルさ全開の女子トーク」を、聞いて面白いと思わせるレベルで成立させるのって、個人的にはちょっと凄いなって思う。

深川まひろと杉本ちさとは別に、中身のある会話は全然していない。マジでクソどうでもいい話を延々としているだけなんだけど、僕的には「混ざりてぇ!」って感じるぐらいの会話のテンションで凄く良かった。正直、既に今(映画を観終えてから2時間後ぐらい)には、彼女たちの会話の中身をまったく思い出せないのだが(それぐらい、まったく中身のない会話をしている)、ただ聞いている時には凄く面白かったし、少なくとも僕はああいう会話がとても好きだ。

そしてさらに言えば、「そういう会話が、2人にとっては必要だ」ということばビシバシ伝わってくる感じも良かった。1つ思い出したのが、深川まひろが落ち込んでいる時に杉本ちさとが話しかけにいった時の会話の内容。「元気出せよ~」みたいなことを杉本ちさとが言うわけないということは分かっていたが、彼女は、「東京戻ったら、どういう感じにする?」と話しかけるのだ。これは説明しなければ伝わらないやり取りなのだが、それより前に2人は、「美容院の予約を一緒にした」という話をしている。深川まひろは1人で美容院に行けないとかで、毎回杉本ちさとと同じタイミングで髪を切っているらしいのだ。

そしてそんなやり取りをしていたことを踏まえた上で、「東京戻っ(て美容院に行っ)たら(髪型)どういう感じにする?」と聞いているのである。もちろん深川まひろはこのやり取りを、「自分を勇気づけるためにしてくれている」と感じただろう。そういう心の繋がりみたいなものが2人にはあるのだ。そして2人はスマホを見ながら「こんな髪型がいいんじゃない」みたいな話をして元気を取り戻していく。

こういうやり取りも、とても良い。とても良かった。「クソどうでもいい会話をしている」ということが、ある意味で逆説的に「2人の間にある長い長い時間の堆積」を想像させるし、そしてそういうことを考えずとも、シンプルに2人の「ダルい会話」は、テンポがとても良かったりで、聞いていて心地よい。そしてそんな会話を、「人殺しをする前後」に普通にしているというギャップも、本作の魅力なんだと思う。

というわけで、もちろんアクションシーンは素晴らしかったし、本作の核となる部分なのだけど、僕は何よりも、2人の会話に惹きつけられた。マジで、この2人の会話、永遠に聞いてられるわー。

あと、クソどうでもいい話だけど、唐突に「灰原哀」が出てきてビックリした。

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