【映画】「フランケンシュタイン」感想・レビュー・解説
さて、今週はあんまり観る映画がなく、何かないかなと思っていたらこれを見つけた。Netflixには入ってないので、時々劇場公開されるのを観るしかないので良かったかな。シネマリスっていう、神保町にある映画館に初めて行った。
さて、本作は、結構面白かった。原作小説は読んだことないからどれぐらい話が変わっているのか分からないけど、なんとなく、原作そのまま描いてるんじゃないような気がする。結構ストーリー変えてるんじゃないだろうか? で、もちろん100%フィクションなんだけど、どことなく「実話を元にしてるのか?」と感じさせるような雰囲気もあって、それも結構良かったなぁ。
しかし、これも原作がどうなってるのか分からないけど、生み出された怪物って「死なない存在」っていうイメージだったけど、生み出されたきっかけは別に「死なない存在を作る」みたいなことじゃなかったみたいで、それはちょっと意外だった。そうなのか。本作では、「死を克服する」というか「死から逃れる」みたいなニュアンスが強い印象で、「永遠の命」みたいなものを目指していたわけではなさそうに見えた。なんとなくだが「死なない存在になったのは誤算」ぐらいの雰囲気さえあった。
全然ストーリーを知らなかったから、「なるほど、あの怪物はそういうことを望んでいたのか」と、後半になって明らかになった事実に結構納得させられた。確かに、自分がその立場に置かれたとしたら、同じような発想になるかもしれないよなぁ、と思う。
そもそも僕は全然長生きしたいと思わないので、シンプルに「人間として長く生きる」っていうだけでもしんどいのだが、その上さらに「死なないでずっと生きざるを得ない」としたらしんどすぎるよなと思う。そういう状況で、「自分を創り出した者」の存在を知れば、そりゃあ「お前なんとかしろよ」って思いたくもなるだろう。
映画の冒頭からは「怪物の動機が分からず、ヤバさ全開」という感じだったが、物語を追っていくにつれて「そりゃあしゃーないよな」という感覚になるし、そういう感覚になる感じはなかなか新鮮で面白かった。
というわけで、ざっくり内容の紹介をしておこう。ちなみに、よくある間違いとして、「フランケンシュタイン=怪物」というのがあるが、フランケンシュタインというのはその怪物を生み出した博士の名前である。
1857年の北の最果ての地で、一隻の巨大な船が氷に阻まれ座礁していた。船長は北極点まで向かうつもりのようで、船員たちに氷を砕いて船を動かせるようにと発破をかけるが、船員の疲労も空腹もピークに達しており、士気は上がらない。
そんな時、3km先で爆発が起こった。様子を見に行くと、まず負傷した男性が視界に入る。そしてそれから、得体の知れない存在。船長は負傷した男性を保護し、それから全員を船へと戻らせた。そして船の付近で銃を撃たせるも、謎の存在は死なず、船上まで乗り込んでくる。
その一騒動が一旦落ち着いた後、船長はヴィクター・フランケンシュタインと名乗る男の長い長い物語を聞くことになる。
男爵で優秀な外科医だった父に、お前は私の跡を継ぐんだと言われて育ったヴィクターは、ある日母が倒れた際に一緒にいたため、慌てて父親を呼んだ。妊娠中だった母は、ウィリアムを産んでそのまま亡くなってしまう。家柄と持参金目当てで母と結婚した父が、わざと母を助けなかったのだと考えたヴィクターは、「誰も死には勝てない」と口にする父親に対して「なら勝ってみせる」と啖呵を切った。
その後ヴィクターは医者となり、そしてある裁判の場に立たされていた。死者に電流を流して復活させるという悪魔的な研究が問題視されたようだ。彼は自説を曲げず、「神が命を与えた。奪うのも神だ」と言い募る教授たち(なのか裁判官なのか)に自説を主張し続ける。
そんな様子を見ていた実業家のハインリヒ・ハーランダーがヴィクターに声を掛けてきた。なんと、彼の姪の結婚相手がヴィクターの弟ウィリアムだというのだ。ウィリアムとは、父の死後離れて暮らしており、金融業界で成功しているという話を聞いていたぐらいだ。
ハインリヒは、ヴィクターの研究に無制限の支援を約束した。純粋に、真理を追い求める者としての知的好奇心からの行動のようだ。ヴィクターは、ウィリアムに指示を出し研究拠点を整備させ、そして同時に、ウィリアムの婚約者であるハインリヒの姪エリザベスと良い仲になっていく。
こうしてついにヴィクターは、死者の身体を使って新たな命を生み出すことに成功するのだが……。
というような話です。
まず冒頭の北極点付近での物語が結構インパクトがあったなぁ。つかみは抜群、という感じだった。怪物が暴れている理由も、フランケンシュタインが襲われている理由も分からないまま、フランケンシュタインが過去を回想するみたいなパートに入っていく。
幼少期から彼がハインリヒの支援を受けて研究を始めるまでも部分はさほど面白くはないのだけど、まあ物語的には必要な部分だろう。あとその中で言えば、裁判で意気揚々とプレゼンしている姿はなかなか印象的だったなと思う。本当はフランケンシュタインの方が狂気じみているはずなのに、なんとなく彼の勢いに気圧されて、周りの人間が変なことを言っているみたいな印象になるし、そういう雰囲気は絶妙だったなと思う。
個人的には、ヴィクターとエリザベスの仲が良くなるという要素がどうして必要なんだろう? と最初は思っていたのだけど、エリザベスと怪物との関わりが一定程度あって、そしてそれが物語全体としては結構重要な要素になってくるので、観ている中で、「なるほど、確かにこれは必要か」という感じになっていった。最初は全然気づかなかったけど、エリザベスを演じているのがミア・ゴスで、この人は結構印象的な役柄でちょいちょい見かけるなぁという感じである。
で、物語は実に上手い流れで、怪物側の視点の物語に変わっていく。個人的には、このパートが特に良かったなぁと思う。物語的によくある展開だとは思うけど、「怪物であるが故のすれ違いや葛藤や絶望」みたいなものがちゃんと描かれていた感じがする。
特に、目の見えないおじいさんとの関わりは色々考えさせられる部分があって、素敵だった。怪物はとにかく見た目だけで判断され酷い扱いを受けるのだが、目の見えないおじいさんは視覚情報がないのでそれ以外の何かで怪物を判断する。そういう扱われ方は初めてだったはずだし、そして同時に、「見えている人に自分の姿を正しく見てもらうのは不可能だ」とも悟ったのだろう。
この「見た目だけで判断され酷い扱いを受ける」というのは、現実世界でも色々と起こっていることだし、だから現実の何かと対比させて受け取ることも可能だろう。原作小説は大分前に発表されているはずだが、怪物の生き様を通じて「普遍的な問題」を掘り下げているとも言えるように思う。
映像的にも「金かかってるんだろうなぁ」という感じがあったし、決して登場人物が多いわけではないのに色んな人間模様が描かれる物語で、かなり面白く観られる作品だった。しかし結局怪物はどうするんだろうなぁ。絶望的な想像しか浮かばないし、どうにか穏やかに生きてほしいものだと願うほかない。
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