【映画】「オアシス スーパーソニック」感想・レビュー・解説
さて、いつもの如く、「オアシス」のことはよく知らない。観る前の時点で知っていたのは、「兄弟でやってるバンド(2人でやってるんだと思ってた)」「兄弟仲が悪すぎて解散」「最近奇跡の復活を遂げた」ぐらいだろうか。ちなみに、曲もほとんど知らなかったが、最後の方で出てきた『ワンダーウォール』と『ドント・ルック・バック・イン・アンガー』は知ってた。
そんな人間にも、本作はメチャクチャ面白く感じられた。
本作が(というかオアシスが)凄いのは、「レコード会社と契約を交わしてから、その2年半後のネブワースでの25万人ライブ」までを中心に描いているということだ。オアシス結成前の話もあるので、全体としてはもう少し期間は長くなるが、それにしてもあまりにも爆速で売れたバンドなのだなと思う。作中では「真のロックジャイアント」みたいな表現が出てきた。
あと、本作の凄さは、「ほぼ当時の映像・インタビューで構成されている」ということだろう(ただ正直、インタビューはいつ録られたものかは分からないが)。映像がない場面は一部アニメーションで再現されてはいるものの、本作で描かれているエピソードのほとんどに「当時の映像」が存在する。デビュー後であればさほど不思議ではないだろうが、本作にはオアシスとして注目を集める前の映像も多くあった。よく撮ってたものだな、と思う。まあ、リアムはまだオアシスの「オ」の字もない頃から母親に「いつか有名になって母ちゃんを楽させてやるよ」と言っていたようだし、そうなった時に備えてた、みたいなこともあるのかな。これに対して母親は、「金は今すぐ要るんだよ」と返したそうだが。もちろん、愛を込めてである。
さて、オアシスに関しては面白いエピソードが満載だったのだが、まずは「リアムが音楽に興味を持つようになったきっかけ」がぶっ飛んでいた(ホントの話なのかはよく分からないが)。
元々、兄のノエルは家に引きこもりギターばかり弾いているような子どもだったらしいが(そこには、結局離婚したんだったかな? 父親との確執みたいなものも関係していたようだが)、一方のリアムは16~17ぐらいまで音楽なんかまるで興味がなく、なんなら「ギターなんか弾いてるやつはなよなよしてダセェ」みたいに思っていたそうだ。
で、リアムは学校一ケンカが強いと言われていたそうなのだが、そんなある日、他校の生徒から金づちで頭を殴られたのだという。なかなかムチャクチャだ。リアムは、「血まみれになったが、数学の授業を2時間サボれたから良かった」みたいに言ってて、その口ぶりからだとそこまで申告な怪我ではなかったのかなとは思うが。
それで、リアムはどうもこの出来事をきっかけに音楽を聴くようになったのだそうだ。「あの時、俺の脳にスイッチが入ったんだ」「殴った奴、サンキュー」みたいに言っていた。変な話である。
しかしその後、ノエルはノエルで、リアムはリアムで別々のバンドで活動していたそうだが(ただノエルは、リアムがバンドでボーカルをやっていると聞いて驚いたそうだ)、なんやかんやあって同じバンドで活動するようになったそうだ。この辺りの流れはイマイチよく掴めなかったが(それは僕がノエルとリアムの区別をまだこの時点ではちゃんと付けれていなかったことも関係している)、たぶん「ノエルが所属していたバンドをクビになり(クビにしてくれてサンキュー、と言っていた)、その後弟のリアムがボーカルをしていることを知り、そのバンドに合流することになった」みたいな感じのようだ。ノエルは当初「マネージャーをやらないか」と誘われたそうだ。「お前、顔広いだろ」と。
さてその後、これはノエルが語っていたことだが、そのバンド(「オアシス」になる前で、確か「レイン」ってバンド名だった)の2回目の練習で彼にとっての転機が訪れたという。リアムが「お前の曲をやろう」と言ってきたのだそうだ。それで実際に演奏してみると、「俺が書いた曲がみんなの手を辿って自分のところにまた戻ってきた」と、最高の気分になったのだそうだ。ノエルは「これがオアシスの始まりだ」と言っていた。
ちなみにオアシスという名前は、何かのライブポスターに書かれていたどこかの会場名だったそうだ。彼らは「『砂漠のオアシス』なんて、俺たちにお似合いじゃないか」と考えたという。
これが1991年のことなのだが、しかしその後2年間は鳴かず飛ばずだったそうだ。しかし彼らは諦めずに練習を続けた。確かリアムだったが、「10年後に、フィル・コリンズの首が冷蔵庫に入ってなきゃ俺たちの負けだ」みたいに言っていた(こんな風に言っている映像がちゃんと残っているわけで、本作はその素材の豊富さが凄いなとも感じた)。フィル・コリンズが誰なのか知らないが、要するに「今ブイブイ言わせてる奴をぶっ倒すぞ」という宣言なのだろう。
その後、「オアシスの精神そのもの」だというメンバーのボーンヘッドが作曲した曲に対して、たぶんノエルが「お前の曲じゃないだろ」と突っ込んだみたいなエピソードが紹介される。何故そんなことを言ったかというと「良すぎるから」だそうだ。それが何の曲だったか忘れたが、彼らは次第に「オアシスらしさ」みたいなものを積み上げていったのだろう。当時は、彼らのことを悪く言う記事さえ何もなく完全に無視されていたそうだが、彼ら(というかリアムだったかな)は「成功する予感しかなかった」みたいなことを言っていた。その自信がどこからく来るのかはよく分からないが。
さて、こうして彼らは1993年を迎える。本作全体のエピソードの中で、僕はこれが一番好きだった。彼らがレコード会社との契約を果たすまでの出来事である。
当時彼らは、「Sister Lovers」というガールズバンドとスタジオを共有していたそうだ。で、そのメンバーの1人であるデビーが、アラン・マッギーの元カノだったのだという(アラン・マッギーのことももちろん知らなかったが、「クリエイション・レコーズ」の創設者だそうだ)。である日、彼女たちがライブに出るという話をしており、オアシスのメンバーは「俺たちは出れないのか?」と話していたという。それに対してデビーが、「一緒に来て、出ちゃう?」と持ちかけ、オアシスのメンバーはなけなしの金でバンを借りてライブ会場まで向かった。
当然、出演者リストにないオアシスの面々は入口で止められるのだが、ここでもデビーが「私たちの時間を削ってもいいから、彼らを出してあげて」と説得、どうにか出演できることになったそうだ。デビーは「そもそも私たちは5曲しかなかったし、時間が余っちゃうから」と話していた。
そしてそんなライブに、元カノが出ると知っていたアラン・マッギーが”冷やかし”にやってきていたのである。彼は妹とライブに来ていたそうだが、妹から「彼らと契約を」と言われたのがまだ1曲目だったので「2曲目まで待とう」と答え、3曲目をやる頃には「絶対に」と言っていたそうだ。
こうして彼らは、その日に契約を交わしたのである。しかし、オアシスも凄いが、アラン・マッギーも凄いな。たったそれだけで後の大スターを見抜いてしまうのだから。
その後デビューとなったのだが、アラン・マッギーがデビュー曲に決めたのがなんとかって曲(忘れた)で、そのレコーディングをしてたんじゃないかな。だけど、どうも上手くいかなかったという。メンバーも、「どうしてあの曲を選んだのか分からない」みたいに言っていた。で、この時のことを振り返ってノエルが、「どうして自分があの時他の曲を書いていたかは謎だ」と言っていたのだが、ノエルはみんなが中華を食べている間に1曲書き上げてしまったという。それが彼らのデビュー曲である『スーパーソニック』である。
それまでオアシスは、曲を聴きにライブに来る人がいても、歌詞までは覚えていないみたいな感じだったという。しかし『スーパーソニック』の発売日には、多くの人がその歌詞を覚えて口ずさんでいたそうだ。ノエルは「俺が深夜3時考えた意味不明な歌詞をみんなが歌ってた」と驚きを口にしていた。
こうして彼らは人気になっていく。その後、アルバムを出せることになり、ミックスを、これまでライブの音響を担当してきたマークが担当することになった。しかしマークは、ライブの経験はあるが、レコーディングはまた勝手が違う。メンバーはマークがやってくれるということで安心感を抱いていたが、出来上がったものは結局アランを満足させられなかったそうだ。それで別の人にミックスの白羽の矢が立ち、その人物(たぶんオーウェン・モリスって人)のミックスによって劇的に変わったのだそうだ。音楽の世界のことはよく知らないが、これも凄い話だなと思う。そんなに変わるものなのか。
ただ、オアシスは元々ライブが良いと言われていて、でもアルバムではその良さが出ていなかったことが問題だったようだ。それでオーウェンは新しい機材を入れて音量を2倍にしてライブ感を盛り込んだのだそうだ。やったことはそれだけではないだろうが、結局このアルバムは英国史上最速で売れたそうである。
本作には、日本ツアーの様子も映し出されていた。オアシスのメンバーは、「日本なのにどうしてメンバーの名前を知ってるんだ?」「何故英語も話さないのに、ライブの前からこんなに熱狂してるんだ?」と驚いたそうだが、総じて「日本はムチャクチャで最高!」という感想だったそうだ。
しかしそこから今度はアメリカツアーへと繰り出すのだが、オアシスはアメリカではまったく知られておらずゼロからのスタートだった。さらにオアシスの面々は皆「クリスタル・メス」という覚醒剤にハマり、ムチャクチャな状態でライブをしていたそうだ。そんなことも関係していたのだろう、ライブでは色々と齟齬が生まれ、ノエルの表現を使うなら、「それまでは『俺たち』だったのに、その時から『俺 vs 奴ら』になってしまった」そうである。
で、ノエルはアメリカで行方不明になった。後に分かったことだが、サンフランシスコで出会った女の子の部屋でしこたまドラッグをやっていたそうだ。ノエルはバンドを辞めると女の子に話したそうだが、彼女から「辞めてどうするの?」と言われ、「確かに自分は歌えないし、フロントマンでもないし」と考え、結局戻ることにしたそうだ。しかしその後、この時のことを振り返って「人生最大のミス」と口にする場面があった。
ノエルはその後『サム・マイト・セイ』を書き上げたが、これは「書く前から1位を獲ることが分かっていた」という。そしてさらにこの曲は、「ドラムのトニーにとっての最後の曲」にもなった。トニーのドラムの腕はあまり良くなかったそうで、ボーンヘッド曰く「アメリカツアーの最中、トニーはイジメの対象になっていた」というぐらい酷い扱われ方になっていたそうだ。トニー自身は「ただドラムを叩いていたいだけなんだ」と言っていたが、結局メンバーから「NO」を突きつけられる形でオアシスを辞めることになった(しかしその後、権利の配分を求めて裁判を起こしたようである。少しだけ、そんなシーンが本作中にあった)。
新たなドラム(アラン・マッギーと同じくアランという名前だった)を迎え、新体制になった彼らは、クイーンが『ボヘミアン・ラプソディ』を録音したスタジオで再びアルバム作りに取り掛かる。この時のノエルの仕事ぶりについて、誰だったか忘れたがある人物が「驚異的だ」と話していた。音楽プロデューサーみたいな人をこき使いながら(という表現で合ってるか分からないが)、1日1曲みたいなペースで仕上げていったという。
また、同じ人物だったと思うが、ボーカルのリアムとのやり取りにも驚いていた。オアシスでは、ノエルが曲を書きリアムが歌うのだが、レコーディングでは、まずノエルがリアムに1度曲を聴いてもらい、それを受けてリアムが1度歌ってみる、そしてそれに対してノエルが変更点などを伝え、それですぐレコーディング、という感じで進んでいくのだそうだ。「そんなやり取りだけで、あのクオリティのレコーディングが出来るのか」と驚いているようだった。
さて、この時のレコーディングでは、「まだ仕事中のノエルを置いて、他のメンバーがパブへ行く」→「他のメンバーの不在にノエルが気づき、キレる」という流れが繰り返されたそうで、そしてそんな中で、「オアシス史上最大の大喧嘩」が巻き起こったそうだ。この時、ドラムのアランはまだ加入して2週間ぐらいだったそうだが、その壮絶な喧嘩を目にして「入ったばかりなのに解散?」と感じたそうだが、他のメンバー「いや、いつもあんな感じだよ」というのを聞いて「とんでもないところに来てしまった」と感じたそうだ。
その後、ベースのギグジーが辞めたがってるという話になったり(神経がやられていたそうだ)、ライブで歌うのを放棄(本当に喉がしんどかったそうだ)したリアムに代わってノエルが歌うことが増えたりと色々起こる。ノエルは自分が歌うようになって、「案外これもアリかもしれないな」と感じたそうだし、だからこそオアシスに戻ってきたしまったことを「人生最大のミス」と表現していたのだ(要するに、ソロデビューすれば良かった、みたいなことである。もちろん冗談だろうが)。当然リアムは気に入らなかったそうで、「ノエルはソングライターとして最高だが、歌は俺の仕事だ。ノエルが歌までやるとしたら、俺は紅茶係か?」と不満を口にしていた。
そしてそんな紆余曲折を経ながら、彼らは伝説の25万人ライブを開催するのである。このライブについて報じるニュース番組では、「国民の4%がライブに応募した」と紹介されていた。その後ノエルが、「皆は舞台上の俺たちを偉い人間だと思うが、もし客席がゼロだったら? 260万もの人がいてくれるから俺たちはここにいられるんだ」みたいなことを言っていた。計算すると、当時の人口は6500万人だったということだろう。これをざっくり日本に当てはめると(計算がわかりやすいので、日本の人口を1億3000万人とする)、520万人が応募したということになるだろう。そりゃあ「英国一のバンド」「ビートルズ以来最大のバンド」と評されるだろう。凄いものである。
さてこれだけでも大分あれこれ書いたが、まだこれはオアシスというバンド全体の話である。さらにこれに加えて、ノエルとリアムの兄弟の話や、父親との確執なんかも描かれるのである。
兄弟間のバトルについては随所で描かれていたが、ここではその争いの本質について触れた箇所の紹介をしておこう。オアシスでは、ソングライターであるノエルがリーダーであり(しかし、バンドに後から加入したのにリーダーなんだなと思う)、だから色んな人がノエルに意見を求めるわけだが、そのことが、フロントマンであるリアムには気に入らない。その「主導権争い」が本質だと誰かが話していた。
その人物は、「2人のこの緊張感がバンドを前進させたし、そして殺しもした」と言っていた。また映画の冒頭の方では、「オアシスはフェラーリみたいなものだ。見ている分にはいいが、スピードを出しすぎると制御できなくなる」みたいな話もあった。そしてやはり、「イカれた兄弟こそがバンドの強みだが、そのせいでバンドがぶっ壊れもした」という。使われていた映像の中では、仲良さそうにしている場面も、お互いを罵っているような場面もあった。「兄弟仲が悪くて解散した」という事実を知らなければ「喧嘩するほど仲が良いんだな」みたいに思えただろうが、たぶんそんな感じでもなかったのだろう。ホントにぶっ飛んだ兄弟だなと思う。
父親との確執については、「ノエルとリアムがオアシスとして爆売れした後で、芸能記者にネタを売り込んで小銭を稼いでいる」みたいな紹介がされていた。まあ、なかなかのクズである。2人の母親も夫については酷かったと話していたし、リアムだったかな、「俺は殴られなかったけど、母親はよく殴られてたし、兄弟ではノエルが一番酷かった」みたいなことを言っていた。しかしどこかで書いたが、たぶんどこかのタイミングで父親がいなくなったのだろう、それ以降ノエルは自室に籠もってギターの練習に励めるようになったので、そのことについては「良かった」と話していた。
他にも色々印象的なシーンはあったが、何かの賞を受賞した時のスピーチは良かったなぁ。ノエルだったと思うが、「既に過去になったやつからもらいたくない」と捨て台詞みたいなことを壇上で口にしたのだ。その後、別の場面で記者から「一番大事な賞は何か?」と聞かれ、「ファンが選んでくれた賞が一番大事だ。企業のブタどもの賞なんて興味ない」と話していた。個人的には、こういうところは結構好きだなと思う。
ちなみに、もっと早く書いても良かったような気もするが、本作はノエルとリアムが製作総指揮を務めているそうだ。だから(と繋げるのもおかしいが)、普通なら「黒歴史」として隠したくなるような出来事もあけっぴろげに描き出していて、潔いなと感じた。ノエルはある時、「ドラッグなんかイギリス人はみんなやってる」「ドラッグなんか朝食と同じだ」みたいなことをマスコミの前で発言して大炎上したようだが、その映像も使われている。彼らは別に「汚点」だなんて思っていないのかもしれないが、こういうところは好感が持てる(しかしさすがに、フェリー内のカジノで大暴れして逮捕されるのはやり過ぎだと思うが)。
それでは最後に。ノエルだったかリアムだったか忘れたが、「ネブワースでのライブは、インターネットが登場する前の最高の出来事だった」と話していた。インターネットが登場する前は「人間関係が濃密だった」という感覚があるようで、それを踏まえての発言だった。
さらに、この兄弟は公営住宅出身らしいのだが、同じくどちらかが「公営住宅から世界へ出ていくなんて今(本作は2016年公開らしいのでそのタイミングだろう)では起こり得ない。だから、20年後の音楽業界が心配だ」と言っていた。まあ、SNSの登場によってまた大分状況が変わったので、この発言そのものはあまりしっくりこないかもしれないが、何にせよ、彼らほど短期間でスターの階段を駆け上る者はそうそう出てこないだろう。凄い時代だったのだろうなと思うし、凄い人たちだったなと思う。
まあそんなわけで、オアシスのことなんかまるで知らない人間が観ても楽しめるドキュメンタリー映画だった。
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