【映画】「済州島四・三事件 ハラン」感想・レビュー・解説


「こういう出来事が過去に起こっていた」という事実を知るという意味ではもちろん意味のある作品だろう。作中では、「日本人がいなくなったって、何も変わりゃしない」など、日本統治時代にも多少言及されるので、日本人も無関係とは言えない。どうやら韓国でも長らく真相が伏せられていたとかで、そういう意味でも「知られるべき真実」だと言っていいと思う。

のだけど、1つの作品として観た時には、うーん、正直「面白くなかったなぁ」という感じが強かった。まあこれは、僕がいわゆる「お涙ちょうだい的な良い話」にあまり興味がないからだと思う。全体的に、「親子や住民同士の絆を描いた良い話」という感じで、正直なところ、僕の興味からは少し遠い感じがした。

まあ、もちろんそれは仕方ないことだ。本作は、描かれている内容は恐らく事実そのものではないが、「実際にあった(だろう)出来事」をベースにしているわけで、特に「済州島の住民を悪く描く」みたいなことは出来ないはずだからだ。「物語的な面白さ」という観点だけから話すなら、「住民側も何か悪いことをしていた」みたいな描写があってもいいと思うのだが、そういう展開はない。だからどうしても、「物語」という意味ではちょっと弱さが目立つことになってしまう。

この辺りのことは、実話を元にした作品を観る度に思うことではある。「実話そのもの」がそのまま物語になるようなものならいいが、そうではない場合、「なるべく事実から外れないように描く」か、あるいは「多少脚色を加えてでも物語としての面白さを優先する」かである。

本作では、冒頭で「実話を元にしている」みたいな表示はなかったので、理屈だけで言えば、どういう改変をしようが特に問題はない。しかしやはり、倫理的にはそう簡単にいかないだろう。映画の最後には、済州島に実際に存在するのだろうたくさんの墓碑や墓が映し出された。この惨劇を生き延びた人がどのくらいいるのか分からないが、そういう人がまだ存命だったりもするだろう。そういう中で、「事実とかけ離れた描写」はなかなか難しい。

こういう話の時に僕は、毎回、NHKで放送していたドラマ『シミュレーション〜昭和16年夏の敗戦〜』」のことを思い出す。僕はリアルタイムでこのドラマを観ていたのだが、メインの主人公の描写が実際のものとはまるで違っていたと後に問題になっていた。その人物の遺族が声を上げたのである。

放送では、ドラマパートとドキュメンタリーパートがあり、そのドキュメンタリーパートの中で「◯◯氏はドラマの中でこう描いたが、実際にはこういう人物だった」と説明があった。なので、形式としてはまあセーフかもしれない。ただ、ドラマパートしか観ない人だって当然いるだろうし、そういう人の印象はドラマで描かれたままになってしまうだろう。僕自身、リアルタイムで観ながら、「えっ、そんなことしていいんだろうか?」と感じた記憶がある。

もちろん、「ドラマパートの面白さ」という意味で言えば、改変した方が圧倒的に面白くなる。対立関係がはっきりするからだ。しかしそれは事実ではなかった。「物語の面白さ」のために、そういう改変は許容されるだろうか?

「自分が同じような状況に置かれることはまずない」という立場だからこそ、僕はこの問いに「難しいなぁ」という曖昧な立場でいられる(自分が物語で取り上げられた人物の関係者だったら、そんな呑気なことは言っていられないだろう)。そして、本作『済州島四・三事件 ハラン』を「物語的にあまり面白くなかった」と言っている僕は、正直なところ、「物語的な面白さのためなら、多少の改変はいいんじゃないか?」みたいに思っている部分はある。ゼロとは言えない。

というわけで、全然内容に触れていないが、映画のタイトルが事件名そのものなので、詳しい状況は自分で調べてほしい。まあ、ホントに、酷い出来事である。こういうことが、ウクライナやパレスチナ、イランなどで起こっているのかもなと思うと、「人間の愚かさ」みたいなものに思いを馳せずにはいられない。


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