【映画】「決断するとき」感想・レビュー・解説

いやー、さすがにこれは分からないだろ。と思うんだが、どうなんだろう。とにかく、状況の説明が無さすぎて、僕には結局最後まで意味が分からなかった。公式HPの内容紹介を読んでちょっとは分かったが、しかしそれでもちょっとだ。「何でもかんでも描けばいいわけじゃない」というのはその通りだが、本作はちょっと描かなすぎだろう。本作には原作があるらしいので、その小説を読んだ人ならもちろん理解できると思うが、小説を読んでなくて映画だけを観た人がこの物語をどのぐらい理解できるものなのか聞いてみたいものだなと思う。

公式HPによると、本作は「アイルランドに実在した“マグダレン洗濯所”の人権問題を背景に描かれる人間ドラマ」であるらしい。ただ、作中には「マグダレン洗濯所」の名前は出てこないし、まあそれはいいのだけど(その名前が出てきたところで何もピンと来ないので)、「何が起こっているのか?」に関する情報がほぼ出てこない。

「マグダレン洗濯所」は作中では「修道院」として登場する。で、割と冒頭の方で主人公が、その修道院に無理やり放り込まれる少女の姿を目撃する。確かに不穏な雰囲気ではあった。が、この時点でこの建物が「修道院」だとは知り得なかったし、僕は学校なのかと思ってたから、「学校に行きたがらない娘を両親が無理やり連れてきた」ぐらいにしか思っていなかった。

で、その後しばらくの間、この「修道院」に関する描写は特にない。まったくないわけではないが、石炭商をしている主人公が石炭などを運び込んだ際のシスターの態度がクソいけ好かないな、みたいに思ったりするぐらいだ。

で、中盤ぐらいかな、主人公がシスターに請求書を渡そうと修道院の中に入った時に、「明らかに不穏な状況」が登場する。確かにこの場面では、「ここには何かあるのかもしれない?」と思わせるものだった。で、その後、その時の少女が少し物語に絡んでくる。

で、修道院に関する描写は本当にこれぐらいだ。確かに「不穏さ」は描かれる。が、「何が起こっているのか?」「個人の問題なのか、組織の問題なのか?」みたいなことを判断する情報は一切ないのだ。中盤で描かれる「不穏さ」にしても、「もしかしたら、少女の側に問題があるのかもしれない?」と考えることだって出来る(情報が何も提示されないので)。

だから僕は、「主人公が一体何を思い悩んでいるのか」が、全然理解できなかったのだ。

いや、まあそれは嘘と言えば嘘だ。上映情報を調べるために公式HPを訪れた際に、メインビジュアルに書かれている「助けるべきか、見過ごすべきか」というキャッチコピーは視界にはいった。本作のテーマは「知ってしまった個人はどう振る舞うのか」だそうだが、何となくそういう物語であることは分かっていたと思う。

が、それにしても描写が少なすぎて、僕にはさっぱり理解できなかった。本作に対しては、主人公を演じたキリアン・マーフィーの「言葉を抑え、沈黙によって内面の葛藤を描き出す演技」が評価されているらしく、それはそれでもちろんいいが、「いや、もうちょい説明してくれないとさすがに分からんよ」と僕には感じられてしまった。

状況が理解できないとどう困るのかというと、「深刻さ」がまったく分からなくなってしまう。本作では、かなり後半の方に、「あの修道院は絶大な権力を持っている」みたいなセリフが出てくる。それでようやく僕は、「権力を振りかざして何かやってるんだ」と理解できたのだが、そのセリフが出てくるまで僕は「事の重大さ」みたいなものがさっぱり理解できなかった。何せ、舞台は修道院である。「そんな悪いことをしてるはずがないだろう」というのが一般的なイメージではないだろうか。だからこそ大問題だったわけだが、知らない人にはそんなこと分かりようがない。ってか結局、未だに僕は「マグダレン洗濯所」が何をしていたのか知らない。Filmarksの感想を覗いたら、「性的に「堕落」したとされる女性たちを強制労働に駆り立て虐待するマグダレン修道院」みたいなことを書いている人がいて「えっ!?」と思う。「強制労働」はまあ分かるけど「性的に堕落した」なんて要素、映画で描かれてたかなぁ。

と思って自分でも調べてみたのだが、「20世紀のアイルランドでカトリック教会が運営し、国家も関与した、主に“問題のある”女性たちを強制収容して無報酬で洗濯労働を強いた施設です。性的虐待や暴力が横行し、多数の女性が命を落とした人権侵害の現場であり、2013年に政府が正式に謝罪しました」と書かれていて、想像以上に悪質だった。ってか「国家も関与した」ってどういうこと?

作中でそういうことが描かれて入れば、僕だってもちろん「主人公の葛藤」が理解できただろう。でも、本作にはそういう描写はまったくない。完全に「『マグダレン洗濯所』のことを知っていることが前提」の映画という感じがした。もちろん、そういう意識で作っているのであれば別にいいが、「『マグダレン洗濯所』のことを知らない人にも観てもらいたい」と思っているのなら、この構成はマジで無理がありすぎるだろう。

というわけで、死ぬほどつまらなかった。

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