【映画】「鉄コン筋クリート」感想・レビュー・解説
これは面白かったなぁ。まあ、よくわからんっちゃわからんし、ラストは特に「なんこれ?」って感じだったけど、全体の雰囲気は好きだし、観て良かったなと思う。
というわけで、まずはざっくりと内容の紹介を。
舞台は「宝町」。そしてここを「俺の町」と言っているのがクロだ。凄まじい身体能力で、ヤクザの事務所にも1人で乗り込んで大人をボコボコにしてしまうほどだ。町の住民の中でクロの存在を知っている者はそれなりにいて、警察の藤村も一目置いているようだ。
そんなクロは、宝町を守ることの他に、シロという少年を守ることも使命だと感じている(勝手に弟だと思ってたのだけど、どうもそういうわけではなさそうだ)。シロは幼稚園児のようで、服もクロに着させてもらっているし、11歳にして幼稚な喋り方をしている。公衆電話から「こちら地球星~」と、宇宙のどこかに報告するような遊びをしたりと、とにかく不思議な少年だ。この2人は通称<ネコ>と呼ばれていて、裏社会的な世界では「宝町を番人」的に認識されているようだ。
しかしそんな街に、かつて藤村が追い払ったはずのヤクザや、蛇と呼ばれる謎の男、そしてなんかメチャクチャ強い殺し屋なんかがやってくる。どうやらこの町に「子供の城」という名の子供用カジノ(みたいな場所)の建設計画が進んでいるようで、きな臭い連中が集まっているというわけだ。
もちろん、宝町を荒らす連中はクロが許さない。暴力を屁とも思わないクロは、「俺の町」を守るためにシロと共に(そしてシロを守りつつ)闘いに挑む。
しかしある日を境に、彼らは離れ離れにならざるを得なくなり……。
というような話です。
さて、本作にはちゃんとストーリーはあるのだけど、別にストーリーで惹きつける作品ではないなと思う。本作ではとにかく、まずはクロとシロのやり取りや関係性が興味深く、彼らのことをずっと追っているだけで全然観続けられてしまうなという感じだった。
彼らが兄弟じゃないとしたら、どこでどう出会って何故一緒に暮らしているのかは謎だし、その中で、クロがどうしてシロをそこまで守ろうと思うようになったのかも謎である。僕はなんとなく兄弟だと思っていたので、観ている間は別に疑問に思わなかったが、兄弟じゃないとするとその辺りは結構謎だなと思う。でも、2人の関係が興味深いから全然観れちゃうよなとも思う。
本作では、映画の冒頭からしばらくの間、「監督:◯◯」「脚本:◯◯」というように、エンドロールで表示されるだろう人の中の主要な人たちが画面の端に表示される。だから、いつも観る映画について何も調べない僕も、最初の段階で「クロの声:二宮和也 シロの声:蒼井優」というのは分かっていた。
で、この2人の声は大変良かったなと思う。特に、シロの声をやった蒼井優は素晴らしい。
別に、二宮和也・蒼井優だと分かったところで、クロ・シロが喋っている時に2人の顔が浮かんだりはしない。だから、ちゃんと「キャラクターの声」になってるんだなぁ、とまずは感じた。で、その上で、「この声を二宮和也・蒼井優がやっているのか」とふと思うと、なんか面白くなる、みたいなところがある。特にシロは、喋り方も喋る内容もかなり特殊で特異的なので、言われなきゃ蒼井優だなんて全然分からないが、「これを蒼井優がやってるんだなぁ」と思うと、それはそれで別の楽しさが浮き上がるなと思う。
で、分かちがたく生き続けてきたこの2人が、あるきっかけを経て離れ離れになるのだが、これによって物語が大きく転換していく。観ている時にはあまり具体的に言語化できていなかったのだけど、要するにこの物語は「ニコイチを離してしまった」みたいなことなんだなと思う。
作中でシロが面白いことを言っていた。事情があって警察に保護されたシロは、東大出身で宝町に配属になった沢田という若手刑事と一緒にいる時間が長くなるのだが、ある日沢田がシロに「クロのこと、何も聞かないけど、気にならないのか?」と質問する。シロは、クロと離れ離れにさせられる時泣いて喚いて抵抗したので、その姿を見ていた沢田からすれば、その後シロがクロについて何も聞いてこないのが不思議だったのだろう。
で、沢田からそう聞かれたシロは、答えになってない返答をする。
【シロね、色んなネジが足りないの。心のネジ、とか。で、クロも色んなネジが足りないの。
だけどね、クロの足りないネジは、全部シロが持ってるの】
このセリフが出てきた時にはイマイチ汲み取れなかったのだが、これは本作の本質的な部分に絡むものなんだろうなと、最後まで観て何となく理解した。
さて、これ以上書くとネタバレ的な感じになると思うので、知りたくない方はここで読むのを止めていただくのがいいだろう。
クロはそれまでずっと、「俺がシロを守っている」という自覚を持っていた。それはある意味で、彼の「生きる理由」だったと言ってもいいだろう。僕にはあまり実感は湧かないが、子供がいる人なんかは、「我が子を守ることが生きる理由」みたいな感覚を持っているだろうし、クロもシロに対してそういう感覚を持っている気がする。
しかしそんなクロに対して、2人の親代わり的な存在であるホームレスの爺さんは、「お前にシロは守れないよ」みたいなことを口にする。さらに別の場面では確か、「ワシには、守られてるのはお前の方に見えるがの」みたいなことも言っていた気がする。
そしてそのことは、2人が離れ離れになることで明らかになる。
シロは、警察が用意した部屋で大好きなお絵描きをしながら日々過ごしている。引き剥がされる時に大泣きしていたくせに、そんなことなかったかのようにケロッとしているのだ。
しかし一方のクロの方は、近くにシロがいないせいだろう、精神がおかしくなってしまっている。以前より暴力性が増したようだし、町では「クロには悪魔が取り憑いた」という噂が立つまでになっていた。最終的には、人形をシロだと思い込んで話しかけるような錯乱状態に陥っていた。
ホームレスの爺さんが言っていた通り、相手が存在することによって守られていたのは、実はクロの方だったのだ。とはいえ、シロの方も1人では全然何も出来ないわけで、だからこの2人はニコイチで、引き剥がしてはいけないのである。
さらに、これは観ている時には全然気づかなかったのだが、「クロ、これもうやられちゃうだろ」ってタイミングで出てきた謎の存在がイタチだったようで(こういう勘の悪さは相変わらずである)、つまり、作中でもちょっと示唆があったように「クロ=イタチ」だったというわけだ。
でそう考えると、「クロの中にいるイタチは、シロがいるお陰で抑え込まれていた」ということになるだろう。まあ、結果的には、イタチが出てきたお陰でクロは間一髪助かったわけだが、イタチはどうもクロを飲み込もうとする存在のようで、本質的には出てきてほしくはないだろう。
シロがいればクロの中のイタチが抑え込め、クロがいればシロは平穏に生きられる。なんともWin-Winな関係である。
さらに面白いのは、彼らの関係は「宝町」という外部要因ありきで成立しているように感じられることだ。もし彼らが「宝町を守る」なんて使命を持っていなかったとしたら、兄弟でもない2人が一緒に暮らす意味が大分薄れるだろう。彼らは共に身体能力が高く、またお互いに得意なことが違っていたりするので、だから一緒にいれば「共闘する」という意味で有益だ。しかしそれは、「外部に敵がいる」という状況でなければ成立しない。宝町はまさにそういう環境なわけだが、そう考えると彼らは「クロ、シロ、宝町」という「サンコイチ」の関係にあるとも言えるのかもしれない。
ラストシーンは、彼らが海で遊んでいるシーンだった。シロはブタの貯金箱にお金を貯めていて、それで海の近くに家を建てるんだ、と言っている。クロとそういう夢を交わしたのだそうだ。となると、このラストシーンは単に「彼らが海に遊びに行った」というシーンの可能性もあるが、それよりは「夢を叶えたという妄想の世界」みたいなことじゃないかという気がする。だとすると、彼らは結局まだ宝町に”囚われたまま”なのだろうし、「サンコイチ」の状態は何も変わっていないのではないだろうか。
まあ、その辺りのことは僕の勝手な想像だが、1つ言えるのは、「彼らは、この騒動で一度強制的に引き剥がされたことで、お互いの存在の重要性がより理解できたんだろう」ということだ。なかなか面白い物語だなと思う。
さて、今回本作は20周年記念ということでリバイバル上映されたのだが、20年前にこの映像のクオリティってかなり凄いんじゃないかという感じがした(アニメのことは詳しくないのでなんとも言えないが)。スピード感とかアングルの妙とか、カメラが手ブレしているみたいなシーンとか、現代のアニメを見慣れている人なら別に驚くようなことではないかもしれないが、当時はかなり斬新だったんじゃないかなぁ。どうなんだろう。普段そこまで映像的なものにあまり反応出来ないのだが、本作は「凄い営巣だなぁ」と感じさせられた。
さらに、全然知らなかったが、二宮和也・蒼井優以外の声優もなかなか豪華だ。伊勢谷友介、宮藤官九郎、田中泯、大森南朋、本木雅弘など、「この人がこの声だったのか」みたいな人が色々いる。そういう面白さもあるなと思う。
あと、個人的に気になるのが、本作は監督も脚本も外国人だということ。日本のマンガを、日本人声優でアニメ化しているのに、監督も脚本も外国人っていうのは、なんか色んな意味で大変そうな気がするけど、どうやって成立させたんだろうなという感じがする。そういう制作の裏側も気になる作品だ。
というわけで、観れて良かったなと思う。
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