【映画】「竜宮の誘い」感想・レビュー・解説
つまらなくは全然なかった。のだけど、うーん、ちょっと期待しすぎた感じもあったかなぁ。
個人的に難ありかなと感じたのは、「何かが起こるまでがちょっと長い」ということ。この「何か」についてはポスタービジュアルや公式HPに載っている内容紹介なんかからかなり明らかだと思うので書いちゃうが、「主人公のサトウが人を殺す」のである。
で、そうなるまでがちょっと長くない? というのが僕の率直な感想だった。
先述した通り、「サトウが人を殺すこと」は、映画を観始めてちょっとすれば、ほとんどの観客は想定できる展開だと思う(逆にそうじゃなかったらビックリするぐらいの感じだろう)。だから観客は1つの関心として、「サトウがいつヤバい行為に踏み出すのか?」みたいな興味で物語を追っていくんじゃないかなと思う。
のだけど、全然そうなっていかない。本作は92分の映画なのだが、半分ぐらい経った時点(一度時計を見たので間違いない)でもまだそんな展開にならなかった。始まってから1時間ぐらいは経ってからかなぁ、そうなるのは。
で、そこに至るまでの物語が決してつまらなかったというわけではないのだけど、やはり「サトウの狂気が発露される」という点に比べれば弱いよなと思う。なので僕としては、「サトウはいつになったらヤバなるん?」と思いながら、結構ストレスフルに物語を追っていた。
個人的には、もうちょっと早く、冒頭からせめて3~40分ぐらいの時点でそういう展開になっててほしかったなと思う。本作では、サトウの狂気が発動されてから、割とすぐに物語が終わってしまった印象があるので、「サトウの狂気発動後の物語が長い」方が作品にとっていいんじゃない? と感じた。
もちろん、「来るぞ来るぞ来るぞ」みたいな予感を溜めて溜めて溜めて放出する、みたいなのもいいとは思うし、その辺りは好みの問題かもしれないけど、「来るぞ来るぞ来るぞ」がちょっと長すぎた気がする。
あと、「サトウが人を殺す」という点に関しては、どれだけサトウ自身の描写を積み上げようが、「なるほど! だからサトウは殺しちゃったんだね」なんて納得には至らない(そういう設定の物語である)わけで、だから余計にその展開を前倒しにした方がいいよな、と感じた。サトウの描写を積み上げないと動機にリアリティが生まれない、とかなら分かるが、本作の場合は、どれだけサトウの描写を積み上げたところで動機がリアルになったりはしないので、全然もっと展開が早くても良かったよなぁ、と思う。むしろ、セナの「何すればいい?」という発言以降の感じとか、もうちょっと観たかった気もするし。ラストの展開も、「なるほど、そこで終わるんか!」って感じだったから、だから余計にセナの描写はもっとあっても良かった気がするんだよなぁ。
で、上映後にトークイベントがあったのだけど、何故か白石和彌が登壇していて(本作監督の山田純が大好きだから、だそうだが)、色々と話を聞けた。白石和彌は「地下鉄のシーンがメチャクチャ上手くて、俺より上手いんじゃないか」みたいに言っていたが、確かにあのシーンの緊迫感は見事だったし、僕も上手いなぁ、と感じた。ってかそもそも、地下鉄の車両内のシーン、どうやって撮ったんだろうなぁ。本物の車両でやってるとしたら結構大変だと思うんだけど。その辺りの撮影秘話はパンフレットに書いてあるらしいけど、パンフレットを買う習慣がないのでスルー。
あと個人的には、「フライパンで肉を焼いてるだけのシーンがこんなに気持ち悪いのって凄いな」と思った。
そんなわけで、個人的にはちょっと不満というか、ちょっとしっくり来なかったなぁ、という感じ。でも、悪くはない。トークイベントの中でサトウを演じた役者が「『棒読みすぎる』とか批判もある」みたいに言っていたが、白石和彌も言っていたように、僕も別に悪いと思わなかったし、狂気的な存在感で良かったと思う。サトウ役の俳優は、監督から「殺人鬼にしか見えない」と言われていて面白かった(オーディション用に送った、恋愛的な演技を収めた映像を見た時点で監督は「殺人鬼にしか見えない」と言っていたそうだ)。サトウの、助走した感じもなくナチュラルに一線を超えていく感じは、結構良かったと思う。
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