【映画】「長崎―閃光の影で―」感想・レビュー・解説
正直なところ、物語として面白いという感じではない。みたいなことを書くのもどうかとは思うが、正直な感想である。ただ、こういう作品はちゃんと観られてほしいなとも思う。別に「過去起こったすべての『酷い出来事』に関心を持て」などと思っているわけではないが、やはり、日本で生まれ育っている以上、避けては通れない「出来事」はいくつかあるはずだ。「原爆投下」はやはり、その1つだろう。
物語は、原爆投下の初日から始まる。大阪から戻った看護学生3人がそれぞれ、投下地点の付近にいたのだ。アツ子は日赤(日本赤十字)の長崎支社で引き続き看護の実践を、ミサヲは「独りじゃ何もしない」というクリスチャンの父親と時間を過ごすことに、そしてスミは、実家に戻って家の手伝いをしていた。そして3人は、それぞれの場所で原爆に巻き込まれ、そしてそれぞれ大変な状況にある中、看護婦(作中では「看護婦」と呼ばれている)として治療に当たるのである。
しかし、原因も分からないし、薬も水もない。通り一遍の手当てをして、水も与えられず(何故か「水をあげると死ぬ」ということで患者には水が与えられなかった)、ほとんどの人がそのまま命を落としていく。そして、敷地内で死体を焼く。その繰り返しだ。あまりにも酷い日常であり、あまりにも酷い「青春」だった。
そんな中、目の前の「命」に対して、どうにか出来ることはないかと奮闘する少女たちの物語である。
本作の原案は、日本赤十字社の看護師たちによる手記『閃光の影で-原爆被爆者救護赤十字看護婦の手記―』だそうだ。原爆投下から35年後に出版されたという。それを知って納得できたシーンがある。
原爆が投下された夜のこと。祖母の家に行く途中で爆発に巻き込まれたスミは、救護に向かうという医師・看護婦らのトラックに乗り込み、負傷者の多い場所で救護活動を行っていた。しかし薬が無くなり、医師と一部の看護婦の除いて一度病院に戻るという話になった。スミは残れと言われ、医師から、「救護を待つ人をここに連れてこい」と言われる。
それで彼女は、焼け野原みたいな中を「救護です!救護です!」と声を張り上げながら歩くのだが、明らかに負傷しているだろう老人の一団が彼女の声に反応するでもなくどこかを目指している。その内の1人が、スミに言っていた。「浦上の教会(※浦上天主堂のこと)で死にますけん」と。
物語の中に登場する描写としては、かなり脈絡がなかったというか、個人的には「えっ?」という感じだった。ただ、「実際に誰かが体験したこと」であるなら納得できる。現実というのはこういう「意味不明さ」に溢れているからだ。本作はそのような、「実際にあった出来事」を色々とつなぎ合わせながら1つの物語として構成したということなのだろう。
しかし、1つ注意しておくべきことがある。これは、エンドロールの中で小さく表示されたことなのだが、「作中で描かれる差別は、当時の時代背景を反映したものであり、実際に日本赤十字長崎支社の看護婦が行っていたというわけではありません」みたいな注意書きが出るのだ。これはエンドロール中ではなく、映画の最後(本作の最後には、広島・長崎での死者数なども表示されるので、そのタイミングなど)に表示すべきことだったんじゃないかなと思う。いや、別に物語としてはこういう要素が入っていて全然いいと思うのだけど、「手記を原案にしている」と謳っている以上、そこはちゃんと示しておくべきポイントな気がした。まあ、外野がとやかく言うことではないのだけど。
さて、僕は昨日、『原爆スパイ』というドキュメンタリー映画を観ていた。原爆のトップシークレットをソ連に流出させた、マンハッタン計画に参加していた若き天才物理学者に焦点を当てた作品だ。その中で、「もはや降伏寸前」と理解していた日本に対して原爆を使用した理由の1つとして、「日本を倒すのはソ連ではなく、我々の原爆だ」という、戦後を見据えたアメリカの戦略があった、という話が出てきた。どんな理由であれ、広島・長崎に対する原爆投下は許容できるものではないが、それにしても「そんなことのために大勢の犠牲が出たのか」と感じてしまった。
そして本作『長崎―閃光の影で―』の中では、ある人物が、「7日間、あと1週間早く負けとったら、みんな生きてた」と口にする。ホントその通りだなと思う。あまりにもやってられない。本当に、何かが少し違っていれば、全然違う状況になったはずだ。言っても仕方ないことではあるが。
特に若い世代であれば、「『戦争には絶対に反対!』なんて当たり前だよ」みたいに感じるかもしれないし、だからこういう、ある種の「啓蒙」的な作品に対しては「言われなくても分かってるよ」みたいに感じたりするかもしれないが、やはり「その時その場所で何が起こっていたのか?」を知識として知っておくことは大事だと思う。僕は本作を観ながら、「地下鉄サリン事件」や「ダイヤモンドプリンセス号での新型コロナ蔓延」を連想した。「未知の原因で多くの死傷者が出ている」という状況だけ切り取れば同じだと言えるだろう。そう考えれば、本作で描かれていることが「遠い過去の出来事」ではないという風にも感じられるかもしれない。
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