「ラストマン・イン・ザ・ダーク」に参加してきました。メチャクチャ面白かった!
「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」とドラマ・映画『ラストマン』とのコラボイベント「ラストマン・イン・ザ・ダーク」に参加してきました
「ラストマン・イン・ザ・ダーク」というイベントに参加してきました。これは、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」とドラマ・映画『ラストマン』がコラボしたものです。『ラストマン』に「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」が監修として関わったらしく、このようなコラボが実現したとのことでした。
「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」というのは、ざっくり言うと「完全な暗闇に包まれて、視覚障害者の世界を体験する」というイベントです。僕は数年前に一度参加したことがあり、その時にも体験記を書いたので、そちらもどうぞ。
ちなみに僕は、『ラストマン』には一切触れないまま参加しました。正直なところ、コラボと言ってもそこまで『ラストマン』っぽい感じはなく、『ラストマン』を観ているかどうかに関係なく楽しめると思います(もしかしたら、『ラストマン』っぽさを期待する人には物足りないかもしれません)。また、数年前に僕が体験した時とは内容が変わっている(後で触れますが、今回は暗闇で飲食するという内容も含まれています)ので、一度参加したことがあるという方も全然楽しめるでしょう。
あと、別に狙ったわけではありませんが、僕は『ラストマン』とのコラボ回の初回に参加しました。1/3(土)の10:20の回です。去年の12月に予約サイトを見た時に、1人分予約枠が空いてたので取ってみました。ちなみに、毎回最大で8人までのようです。現時点でのチケットの販売状況をチラッと見てみましたが、満席の回もかなり多く、行こうか検討している方は早めにチケットを押さえておくといいでしょう。ちなみに、『ラストマン』とのコラボは1/31(土)までです。
集合から参加開始まで
事前に案内があった通り、開始時間の15分以上前に到着しました。着いたら、身分証明書を見せて予約を確認し(免許証など何か提示が必要です)、その後「荷物をすべて預けてね」と案内されます。「すべて」というのは本当にすべてです。今回は「体験中にお金を払って飲食する」という内容が含まれていたので、「ポケットには、300円とロッカーの鍵だけ入れていいですよ」と言われました。それ以外の「財布」「スマホ」「腕時計」などなど、とにかくすべてをロッカーに入れる必要があります(ここには、「もし中で落とし物をした場合に、拾うのがかなり困難」という理由もあるみたいです)。というわけで、余計なものを持っていかずに参加するのが良いでしょう。
受付・荷物の預け入れ・トイレなどを済ませて、後は開始時間を待つばかりです。そして時間になると、まずは入口に集合となります。そこで、今回案内をしてくれる視覚障害者の方に「自分の背丈に合った白杖を選んで下さい」と言われました。「最上部がおヘソと胸の間ぐらいに来る長さ」が良いそうです。
さらにその後、「クロックポジション」についても説明を受けました。これは、「誰かの立ち位置を12時に見立てた時、その人から見て自分(相手)が何時の方向にいるか」を伝えることで居場所を示すための工夫です。戦争映画や自衛隊の特集などを見ていると、「14時の方向」みたいな指示の仕方が出てきますが、あれも「クロックポジション」だと思います(ただ軍隊等では、自分を6時の位置に置いている気がします)。
こんな風に入室の準備を整えたら中に入りましょう。最初に入った前室みたいなところにはまだ明かりがあり、そこで少し目を慣らす感じでした。そしてここで、簡単に白杖の使い方を教わります。さらに、明かりを消して真っ暗にした後で、参加者それぞれが「呼ばれたい名前」を口にしていきました。今回の参加者は、「(恐らく)夫婦」「母娘(子どもは中学1年生)」「女性3人組」「僕」という感じです。それぞれの名前を何となく把握した後(さすがに8人分は一気に覚えられなかった)、中に入りました。
暗闇でどんな体験をしたのか?
(※これ以降は内容に言及していきます。何が行われるかを知った上で体験しても全然面白いと思いますが、もし「何も知らないまま参加したい」ということであれば、これ以降の文章は読まないで下さい。)
前室みたいなところで明かりを消された時点で、マジでまったく何も見えません。そしてその真っ暗な視界のまま、スタッフの先導で中へと入っていきます。入ってすぐの空間は「林」だと言われていて、確かに歩くと枯れ葉を踏んでいるような感触があるし、ちょっと頭の上に手を伸ばすと木の枝に触れられたりしました。
それで、数年前とはいえ僕は一度経験しているので何となく感触は覚えていましたが、僕以外の人はどうも全員「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」初経験だったようで、終わった後で参加者が一様に「怖かった」と言っていたのが印象的だったなと思います。確かに、目をガン開きしてもマジでまったく何も見えない世界というのはかなりの恐怖だし、みんな、ちょっと前に進むのも苦労していたみたいです。
僕はどうもかなりすいすい歩いてしまったようで、スタッフの方から「ちょっと止まりましょう」と言われ、しばし他の人を待ちました(しかし、スタッフさんはホントに、目が見えているかのように状況をちゃんと把握していてビックリでした)。そうしてみんなで「広場」だという場所に辿り着きます。
ここではボール遊びをしました。ブラインドサッカーという、鈴みたいなものが中に入っているボールを使って行う球技があるのですが、車座に座ってそのボールを誰かにパスするというやり取りです。ここでまさに、先程学んだ「クロックポジション」の知識を使いました。
さて、この辺りになってくると参加者も割と慣れてきて、「どう振る舞うべきか」が分かってきた感じがします。皆、自ずと「◯◯はここです」「◯◯は今☓☓をしています」と声を掛け合うようになっていきました(もちろん、最初から出来ていた人もいましたけど)。
視界を完全に奪われると、普段視覚に頼って生きている人間には成すすべがなくなってしまいます。そういう状況で頼れるものは、本当に「言葉」しかないなという感じでした。「今自分が何をしているのか」をお互いに伝え合うことで、今やろうとしていることをスムーズに行えるようにするだけではなく、この声がけが「お互いが抱いている漠然とした不安」を吹き飛ばしてくれたような気もします。
で、面白かったのが、そんな風に声を掛け合うことで、「今自分が何をしているのか」を伝え合うことへの恥ずかしさが次第になくなっていったことです。普段の生活だったら、「〇〇は今☓☓してます」なんてあまり口にすることはないだろうし、もし口にしないといけない状況があったらちょっと恥ずかしさを覚えるんじゃないかと思います。特に日本人の場合、「阿吽の呼吸」みたいな感じで「言わずとも理解できる」的な文化が連綿と続いてきているので、余計に「自身の状況を実況的に話す」なんてことに躊躇が生まれてしまうはずです。
でも、暗闇ではそんなこと言ってられません。正直、「何も言わなければ、その場にいない人みたくなる」ぐらいの感覚があるし、だから皆当たり前のように「今〇〇してます!」みたいなことを躊躇なく口にしていました。「視界が奪われる」というその1点の変化だけで、これだけ瞬時に人間の感覚が変わるというのも面白いものだなと思います。
またこれは、「手を繋ぐ」みたいな他者との接触に関しても言えるでしょう。普段なら、恋愛を除けば「他者とのスキンシップ」的な状況はあまり生まれないだろうし(女性同士にはそういうコミュニケーションもあるだろうけど、男同士はまずありません)、これも日本人的な感覚だと思うけど、「恋愛ではない関係性で身体的な接触が発生すること」にやはり少し恥ずかしさを感じるような気がします。
ただ「ラストマン・イン・ザ・ダーク」では、そもそもスタッフさんから「前の人の肩に手を置いて下さい」とか「手を繋いで下さい」みたいに指示されるし、そうしないと前に進めなかったりもするので、そういうコミュニケーションが割と普通に感じられるようになるのです。なので、スタッフさんから指示が無いようなタイミングでも手を繋いだりみたいなことが自然に発生する感じがあって、こういう感覚もとても新鮮だなと思いました。
さて、それでは体験の話に戻りましょう。ブラインドサッカーのボールを使った遊びの後、この広場ではもう1つイベントがあったのですが、一応それは伏せておこうと思います。
というわけで、広場を離れるタイミングになりましたが、次はなんと「川に掛かった橋を渡ります」と言われました。メチャクチャハードルが高そうですね。ここでも、前の人と手を繋いだり、橋の直前まで来たら前の人が後ろの人にどういう状況になっているのかを教え合ったりして進んでいきます。
で、橋を渡りきった後、カフェへと向かいました。で、ここで「暗闇の中での飲食」を体験するという流れです。
カフェと言っても店員さんがいるわけではなく、セルフサービスの休憩所みたいなイメージでいいでしょう。コップやスティックコーヒー、お湯の入ったポットなどが置かれていて、それらを使って自分で飲み物を用意するというわけです。メニューは「ホットコーヒー」「ホットティー」「リンゴジュース」で、僕はホットコーヒーを選びました。
で、この「暗闇の中でスティックコーヒーをコップに入れ、ポットからお湯を入れる」というのが、まあなかなか難しかったです。普段何気なくやっている行為ですが、「見えていない」という状況では凄まじく難易度が上がります。特に、実際にやってみて「いや、そうだよなぁ」と感じたのが、「コップの中にどれぐらいお湯が入ったのか」が分からないということです。僕はとりあえず、「コップに口をつけ、どれぐらい傾けたら液体が唇に当たるか」みたいなことでお湯の量をイメージする感じにしました。
この点に関してはある参加者が終わった後でスタッフさんに質問をしていて、「盲学校なんかでは最初、『冷たい飲み物をコップに入れる時は、コップに指を入れて量を確かめてもいい』と教わる」と言っていました(もちろん、自分が飲む分に限った話ですが)。こういうのも、確かに想像しようと思えば出来なくはないかもしれないけど、そもそも「そういうことを想像してみよう」なんて思いもしないわけで、凄く良い機会だったなと思います。
またここでは、飲み物だけではなくお茶菓子的なものも出てきて、それも手探りで皿の場所を探りながら食べたりしました。
こんな風にカフェでしばし時間を過ごし、それでプログラムとしてはすべて終了という感じです。最後に出口へと向かい、スタッフさんがちょっと開けてくれた扉から差し込む光がメッチャ眩しく感じられました。そのまま外に出て終わりになります。最初の説明から退出までで概ね90分程度という感じです。
終了後から解散まで
ドアを出て、白杖を戻した後で、参加者全員で丸いテーブルを囲んで椅子に座りました。そしてそこで、感想を言い合ったり、色々質問したりします。そしてその中で出てきた印象的な話が、「紙の上下が分かるように、上部の右端を切っている」という話です。
実はこれ、カフェにいる時に中学1年生の女の子が気付きました。テーブルの上にあったメニューの右上が切られていたそうで(僕は気づきませんでした)、それで、映画『ラストマン』の中で右上が切れた紙が出てきたことを思い出したのだそうです。僕はその話が気になっていたので、終了後に「上下の判別のために右上を切るというのは、シャンプーのボトルの横の溝みたいにユニバーサルデザインなんですか?」と質問したのですが、どうやらこれ、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」が考えて独自にやっていることなんだそうです。以前から、参加者に上下逆さまのまま必要な紙類を渡してしまうようなことが多く、スタッフで話し合って右上を切って上下が分かるようにしたのだとか。そして映画『ラストマン』では、そんな「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」のやり方を採用したのだそうです。面白い話だなと思います。
また、スタッフさんが「そろそろ次があるから行かないと」と言いながらしていた行動にも驚きました。なんと、左腕にしていたアナログの腕時計のガラスケースを開き(そういう仕様みたいです)、文字盤を直接触って時間を判別していたのです。なるほどそんなやり方があるのか。ちょっとビックリしました。
最後に
というわけで、久々に「完全な暗闇」を体験しましたが、やっぱりとても面白い経験だったなと思います。これはホント、人生で一度は体験しておいて良いことだと言っていいでしょう。「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の会場に行く以外に、これほどの「完全な暗闇」を体験できる空間は恐らく存在しないし、あったとしても視覚障害者のガイド無しには何も出来ないはずです。
あくまでも「疑似体験」でしかなく、参加したからと言って視覚障害者の世界が理解できるなんて考えてはいけないと思うけど、その入口を体験するだけでもメチャクチャ有意義だと思うし、機会を見つけて参加してみるのをオススメします。
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