【映画】「六人の嘘つきな大学生」感想・レビュー・解説
さて、「そんなに面白くないだろうなぁ」というテンションで観に行ったので、それなりに楽しめた。
しかしなぁ。さすがに設定に無理がありすぎるだろ。と思ってしまう。
「就活の最終面接」という設定で、「6人の候補者がディスカッションしている様子を人事部が固定カメラの映像を通じて見ている」ということになっている。しかしなぁ、この映画みたいなことが起こっていた時に、果たして、まともな企業が止めずに放置するだろうか? と思ってしまう。正直、「全体の仕掛けが、企業によるもの」というのなら、その動機はともかくとして、設定は受け入れられるのだけど、「そうではない」ということは、確定こそしないものの、割と早い段階で明らかになるので、「じゃあ、企業はどうしてこの状況を放置してるんだ?」ってところが、僕にはどうしても気になってしまった。個人的には、そこに何か納得の行く説明がほしかったなぁ。
また、動機の話で言えば、「犯人の動機」もまた、「うーん」という感じだった。確かに、「犯人がそういう動機を抱いていたのなら、こういう行為を成したことは理解できる」とは思う。しかしそもそもだけど、「そんな動機、成り立ち得るか?」と感じてしまった。原作小説の方ではどんな風に描かれているのか知らないけど(原作は読んでいない)、この「犯人像」を成り立たせるためには、かなりの人物描写が必要だと思う。少なくとも、映画ではその点には成功していなかったと僕には感じられた。
一応amazonで原作小説の評価を見てみたのだけど、ざっくり眺めた感じメチャクチャ高評価のようなので、原作では、上述したような違和感を上手く説明しているのかもしれない。分からないけど。
また、映像化する上で難点だなと感じたのは、「舞台が室内で固定されていること」だ。「舞台設定が変わらない映像作品」は色々あると思うけど、にしても、「全員スーツで、無機質な雰囲気の会議室にいる」というのは、あまりにも画変わりがしなさすぎるだろう。これは原作小説が持つ制約であり、映画の責任ではないが、ただ、そういう小説を映像化する以上は、この点もう少し工夫があっても良かったかなぁ、という気がする(まあ、工夫のしようはないと思うのだが)。
まあそんなわけで色々思うところはあるのだけど、そういう違和感にぎゅっと目を瞑れば、話としてはなかなか面白く作ってあるという感じだった。特に、これは予告編でも言及されているから書いていいと思うけど、物語は最終的に、最終面接の8年後に終わる。8年後にすべての謎が明かされるのだけど、そこで、僅かな情報しか存在しない中で真相に行き着くプロセスみたいなものはなかなか面白かった。
観ていて、全然違うのだけど、昔観た映画『9人の翻訳家』を連想した。『ダ・ヴィンチ・コード』を翻訳するために翻訳家が地下室に隔離されていた、という実話を元にしたフィクションで、「隔離され、情報を持ち出せないはずの地下室から、翻訳原稿が流出した」という謎を追う物語である。本作『六人の嘘つきな大学生』は別に「密室」というわけではないが、「理由なく退出したらその時点で失格」と言われていたため、「心理的な密室だった」とは言えるだろう。そしてそういう中で、「誰の仕業なのか分からない出来事」が起こり、状況が混沌としていくという感じである。
「就活」の方が身近な題材ではあるが、しかしやはり、身近であるが故にリアリティを厳しく捉える人も出てくるだろう(僕のように)。逆に、「世界的大ベストセラーの翻訳のために翻訳家を地下室に閉じ込めた」という、実話なのだが実話とは思えない設定の方が、リアリティを気にせずに色々遊べるだろう。本作はそういう、「就活」を舞台にしているが故の「制約の厳しさ」に上手く対応できていない感じがした。
ただ、僕は実は「就職活動」をしたことがない人間なので、「リアリティがない」みたいなことを言う資格がない、という点はちょっと弱いところである。でもなぁ、いくら経験がなくたって、さすがに、こんな最終面接の状況を見ていて放置する企業があるとは思えないんだよなぁ。分かんないけど。
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