【映画】「チルド」感想・レビュー・解説
なかなかムチャクチャな話だったな。僕の印象としては、「大量のショートショートをバラバラに分解して、それを無秩序に繋ぎ合わせた」みたいな物語だった。うーん、面白かったのかどうかはちょっとなんとも言えないなぁ。
「広く括ったらヨルゴス・ランティモス作品」みたいな映画で、「日常的な状況をちょっと不穏に演出して、その日常的不穏さを保ったまま奇妙な出来事がどんどん起こり、いつしか『日常』からかけ離れていく」という印象で、まあそれ自体は悪くないのだけど、全体的にはそんなに好きにはなれなかったかなと思う。
本作ではとにかく、西村まさ彦がとにかくイカれてて、凄く良い存在感だった。普通はあり得ないようなキャラクターなのだが、「すべてを機械のように繰り返していく」みたいな装置として登場させられているのだろうコンビニが舞台となると、「『コンビニ』という概念の付属物」みたいな感覚になって、謎に実在感が増す。
西村まさ彦はコンビニのオーナーなのだが、本部の社員ですらオーナーに強く出られない(これは、力関係というよりは、狂気が滲み出ていて関わりたくないという方が強いだろう)という描写がなされ、コンビニのスタッフたちもそういう様子を目にしている。だからある種の「絶対権力者」であり、そしてそんな人物が狂気を放っているからこそ「エニーマート」というこのコンビニの時空が歪んでいるような感じがする。
で、この「絶対権力者が狂気的」というのは、広く捉えれば今の世の中を皮肉っているようにも感じられる。アメリカのトランプ大統領を始めとした「強権的で狂気的な指導者」は色んな国にいるし、日本にしても、個人ではなく「自民党」というのがそういう存在にハマるように思う。ま、そんなことを描こうとしている作品ではないと思うが、エニーマートが「世の中の縮図」的に感じられる部分もまた興味深いかなと思う。
さて、作中には「生きてる人も死んでる人も大差ないように感じませんか?」みたいなセリフが出てくるのだが、本作の登場人物たちはまさにそんなセリフを体現するかのような存在としてこの世界を生きているなと思う。西村まさ彦はずっと、染谷将太は仕事中はずっと死んでるみたいな顔をしているし、一方で、そうではない元気そうに見える人があっさり死んだりもする。「コンビニって、通り過ぎるだけの場所で長く滞在したりしないから、生きてる人だけじゃなくて死んでる人も来ちゃうんだろうね」みたいなセリフもあるのだが、まさに「この世とあの世の境界線に跨って建っている場所」みたいな雰囲気を醸し出す感じは面白かったかな。
まあでもやっぱり僕は基本的に、よほどのことがない限り「雰囲気が良いから好き」とはならなくて、やっぱりストーリー的なものの魅力を求めてしまう。で、そういう意味でいうと本作はちょっと微妙だったかなぁ。とにかく、ストーリーが面白くなかった。もう少し何かあると良かったんだけど、個人的には「何もなかった」みたいに感じられてしまった。
というわけで最後にどうでもいいことを1つ。予告でも使われてた、飼っている犬が何歳なのか聞かれて「あ、もう死んじゃったんですよ~」と返す女の子、絶対知ってる人なんだけど、名前だけじゃなくて誰だったかも思い出せない、って感じだったのだけど、エンドロールで「清宮レイ」ってあって「そうか、元乃木坂か!」となった。久しぶりに見たなぁ、清宮レイ。ちょっとしか出てこないけど、予告で使われているぐらいだしやはりインパクトは抜群で、なかなか良い存在感だった。
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