【映画】「叛逆のサウンドトラック」感想・レビュー・解説

本作はどう考えても失敗していると思う。っていうか、マジで何がしたかったのか理解不能だ。

本作の予告も結構観たが、観る度に「ジャズのドキュメンタリー映画なんだな」と思っていた。僕は別にジャズには全然興味はないが、ドキュメンタリー映画だから観てみるかと思ったのだ。

で、鑑賞前に公式HPを見たりはしないが、鑑賞後に見た公式HPも「ジャズメイン」で記されている。なにせ「主な登場人物」欄にはまず、ミュージシャンの名前が列記されているのだ。当然、公式HPをチェックしてから映画を観に行った人も「ジャズの映画だろう」と考えるはずだ。

でも本作は全然ジャズ関係ない。本作で描かれているのは、「希少鉱物の宝庫だったコンゴの独立のために奮闘するルムンバを、欧米の列強が国連の傘を借りつつ無力化した史実」だからだ。まあ、ジャズがまったく関係ないわけではない。ルイ・アームストロングって人がコンゴへ公演に行ったり、アビー・リンカーンって人が呼びかけてたくさんの人が国連の安保理に乗り込んだ、みたいなエピソードが語られる。のだけど、正直その程度だ。

なのに本作では、随所に「ジャズの演奏シーン」が挿入される。正直僕には「何の脈絡もない」としか感じられなかった。コンゴの歴史を追う映像を無駄に分断するようにジャズの演奏が挿入される、という風にしか感じられなかったのだ。

本作は156分あるらしいが、ジャズの演奏シーンを除けば130~140分ぐらいに圧縮されたのでは? と思う。マジで何のために存在するのか理解できなかったジャズの演奏シーンは除いた方が、「コンゴの歴史を映し出す」という意味では分かりやすかったはずだ。

まあもちろん制作側はジャズを描きたかったのだろう。でもだったら、もう少し「コンゴの歴史」との関わりを示さないと、ちょっと意味不明にすぎると僕には感じられる。いやもしかしたら、ジャズの知識がある人なら、「この音楽はあの時代のこういう風潮に対抗して作られたもので……」みたいなことが分かるのかもしれないが、ジャズ知識ゼロの僕には、「コンゴの歴史」と「ジャズ」にどんな関係があるのか1ミリも理解できなかった。

というわけで、僕には本作は「大失敗」にしか見えなかった。

ただそれはそれとして、本作で描かれる「コンゴの歴史」は実に興味深かった。僕は以前、『誰がハマーショルドを殺したか』というドキュメンタリー映画を観たことがあるのだが、本作『叛逆のサウンドトラック』で描かれるコンゴの歴史は、まさに『誰がハマーショルドを殺したか』に繋がるものだったのだ。

『誰がハマーショルドを殺したか』は、「当時の国連事務総長であるハマーショルドが暗殺されたのではないか?」という疑惑を調査するものだ。彼が乗った飛行機がコンゴで墜落し亡くなったのである。当時、コンゴを巡って国連を二分するような事態が起こっており、ハマーショルドはその間に立って色々やっていた。彼は基本的に「植民地支配は止めるべき」という理想を抱いていたようだが、欧米列強の圧力もかなりのもので、かなり厳しい状況に置かれていたのだ。

で、本作『叛逆のサウンドトラック』では、そんなハマーショルドが置かれていた「厳しい状況」を詳しく説明する内容だった。情報量のメチャクチャ多い映画だったので、追えなかった部分も多いが、ざっと説明しておこう。しかし本作は、始まってから15分ぐらいかな、マジで何の映画なのかさっぱり理解できない。色んな人の言葉が紹介されたり、ルムンバ、フルシチョフ、ルイ・アームストロングなどの紹介をしたりするのだが、何の説明もなく始まるので、提示されるそれらの情報が何なのかマジで理解できなかった。こんなに不親切な映画も珍しいだろう。

さて、最初に「ルムンバがベルギーとの密約を暴露する」という話が出てくる。彼のスピーチライターであり側近のアンドレ・ブルアン(フランスとの混血、みたいに紹介されてたかな)が、ルムンバが書いた文書を結った髪に隠して持ち運び、ローマの記者に渡した(話した?)ようだ。「ベルギーとの密約」の中身が何だったのかよく分からないが、当時コンゴはベルギーの植民地だったようで、何か色々あったのだろう(ちなみに、コンゴというのは元々国王の私有地みたいな国で、国王がそれをベルギーに譲り渡した、みたいな流れらしい)。

で、この出来事をきっかけにルムンバは首相になったようだ。そしてそこから、独立のためにさらに積極的に動くようになる。

さて、コンゴにはとにかく希少鉱物が凄まじい量あったそうだ。ある場面で、「アメリカが原爆に使うために、コンゴ産のウランを3310トンの優先権を云々」みたいな話が出てくる。3310トンってどんな量だよって感じである。また別の場面では、「コンゴの埋蔵希少鉱物の価値は24兆ドル」みたいにも説明されていた。24兆ドル、ヤバすぎ。

でもちろん、欧米列強はそんな希少鉱物の利権を確保しようとしてコンゴに介入していたのだ。ちなみにある場面でベルギー首相の映像が使われているのだが(本作は基本的にほぼ当時の映像・音声・新聞の見出しなどだけで構成されている。例外は、イギリスの情報部の女性のインタビュー映像ぐらい)、その中で首相が、「発展途上国の文明化のために尽力して来たのに、植民地支配だなんだと非難されている」みたいなことを言っていた。ンなわけないやろが。

で、そんなコンゴの鉱物採取を一手に引き受けていたのがユニオン・ミニエール社である。ユニオン・ミニエール社を紹介する映像では、「あの煙突から煙が出ていれば、カタンガ州は安泰です」みたいに紹介されていた。

というわけで世界はコンゴを巡って、「コンゴを独立に導こうとするルムンバ」と「コンゴの利権を得続けたい欧米列強」の争いが激化することになる。で、そんな争いの主戦場が国連だった。コンゴへ平和維持軍の投入を決めたり、フルシチョフが植民地支配の廃絶を訴える演説をしたりしていた。またこの当時、アフリカの国の独立が相次ぎ、アジア・アフリカ地域の国連加盟国が増えていた。アジア・アフリカ勢が共闘するとかなりの多数派になる状況で、さらにそれをフルシチョフの演説が加速させているような感じだった。コンゴの利権維持を狙う欧米列強は票の獲得のために奔走するなど、国連がコンゴの問題に振り回されているような状況だった。

でそんな中、1960年6月30日にコンゴがついに独立を果たす。が、話はここで終わらない。

個人的にまず凄いなと思ったのが、「欧米列強がカタンガ州を独立させたこと」だ。彼らとすれば鉱物資源さえ確保できればいいわけで、だったらカタンガ州をコンゴから独立させればいいじゃん、と考えたようだ。なかなかムチャクチャなことをする。

また、「ルムンバを誘拐しろ」みたいな指示が、たぶんCIAの指示(元は大統領の指示かも)で出されたりもする。でもたぶん上手くいかなかったのかな。

でそれから、「コンゴのカサブブ大統領がルムンバ首相を解任する」のだが、その直後、「ルムンバ首相がカサブブ大統領を解任する」という手段に出る。そしてその後、「カサブブとルムンバのどちらに正当性があるのか?」が議論され、41対2でルムンバが勝利したそうだ。

しかし欧米列強は諦めない。今度はモブツ大佐を担ぎ上げ、大統領と首相の権限を停止させた(要するにクーデターである)。その後、国連がコンゴの代表権を承認する際、ルムンバではなくカサブブを認める決議をした。この決定にはアジア・アフリカ勢が反発したが、アメリカの圧力で決まったという。さらに、どこのタイミングでか忘れたが、ルムンバは自宅軟禁させられてしまう。こうやって欧米列強はルムンバを徹底的に抑え込むのだ。

で結局、アメリカなどの後ろ盾を得たモブツがルムンバを逮捕、さらに捕虜の虐殺など酷いことをしまくってコンゴをムチャクチャにしたのである。

みたいなことが語られるドキュメンタリー映画だ。全然ジャズ関係ない。だから本作をジャズの作品だと思って観に行った人は、結構キレるんじゃないかなぁ。僕的には結果として面白かったけど。

というわけで、本作は大分失敗作だと僕には感じられた。

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