【映画】「アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓」感想・レビュー・解説

途中ちょっと寝てしまったぐらい、中盤はちょっと面白くなかったのだが(寝てたから何とも言えないが、セリフもないし状況もあまり変わらずウトウトしてしまった)、後半になるとなかなかおもしろくなってきて、全体としては悪くない鑑賞だった。しかしなかなか変な物語だったなぁ。

物語は1915年のオスマン帝国から始まる。トルコ兵(って言ってたと思うけど違うかも)の襲来で人々が殺されていく中、祖母の咄嗟の判断でトランクに隠された4歳の少年は、トランクの隙間から外の様子を眺めていた。恐らくこれが、後にアルメニアと呼ばれる場所だったのだと思う(と思ったけど、公式HPを読むと、オスマン帝国は今のトルコで、そこにいたアルメニア人が迫害された、ということらしい。全然理解してなかった)。

そして30年後。ソビエト連邦支配下の共産主義国となっていたアルメニアは、スターリンの呼びかけで、全国に散らばったアルメニア人を祖国へと呼び戻す帰還事業を始めた。そしてアルメニアには、アメリカ国籍の313人を含む10万人が帰還したそうだ。

その1人であるアメリカ人のチャーリー(すぐに彼が、1915年にトランクの中で生き延びた少年だと分かる)は、ある日ひょんなことから、軍司令官の妻とその息子を助けることになった。妻・ソナはかつて英語教師をしていたこともあり、少し英語を話すことが出来る。ほぼロシア語が話せないチャーリーは、ソナに招待されたパーティーで、軍司令官であるドミトリーから「良い仕事を紹介してあげる」と約束をもらった。

しかしその後、彼は警察に拘束され、刑務所の独房に閉じ込められてしまった。アメリカから「世界主義」を広めるためにやってきたスパイだと疑われたようだ。言葉の通じない彼は、状況をまったく理解できないまま、とりあえずシベリアへと送られることが決まってしまった。

しかし、まさにその移送の日に大きな地震が起こり、シベリアに送られるはずだった者たちは「刑務所の壁を修復する」という名目でそのまま残ることになる(もちろんこれは、シベリアより大分マシな状況である)。独房と作業場を往復するだけの日々の中、チャーリーは1つ楽しみを見つけた。独房の窓から、向かいの建物の部屋を見ることが出来ると気付いたのだ。そこではパーティーが行われていたり、恋人らしき男女(これも公式HPによると「夫婦」らしい)が食事したりしている。チャーリーは、独房に閉じ込められているという現実を忘れるようにして、まるでその部屋に自分もいるかのように一緒に食事をしたり、会話しているような雰囲気を感じたりしている。

そんなある日、ずっと見ていた夫婦が仲違いしてしまう様を目撃してしまう。そしてチャーリーだけが「ある鍵」の場所に気づいてしまったのだ。残された夫はその鍵の在処が分からずに奔走する。そして、ただ見ているだけで鍵の在処を伝える手段を持たないチャーリー。彼はどうにかして夫婦の仲を元に戻そうと奔走するのだが……。

というような話です。

なかなかチャレンジングな映画で、物語はほぼ刑務所、しかも「チャーリーが小窓から隣の部屋の様子を見ている場面」で構成されていきます。この何が凄いって、まず、「チャーリーと部屋の住人には直接の関係がない」ということです(まあ、最後の最後はちょっと違った雰囲気にもなるのだけど)。チャーリーは基本的に見ていることしか出来ないわけで、そこにやり取りが発生しようがありません。

さらに、「刑務所から隣の部屋まではかなり距離があるため、姿は見えるけど会話は聞こえない」というのも凄い点でしょう。遠目から様々なやり取りを見ているわけですが、その部屋の住人がどんな関係の人たちで、どういう会話をしているのかみたいなことは基本的には分からないわけです。僕が途中寝ていたからかもしれませんが、後半で重要になる「ある鍵」が一体何の鍵なのか、僕には結局よく分からないままでした。

だから、チャーリーが小窓から隣の部屋を覗いている場面では、会話もやり取りも何もないということになります。

さらに刑務所内では、入口ドアの小さな開閉口から食事の提供がなされる程度で、そこで僅かに看守らと会話が発生するぐらいです。というわけで、作品全体として「ほとんどやり取りが発生しないまま展開される」という感じになるわけです。なかなか挑戦的な設定だなと思いました。

まあそれ故に、中盤ぐらいは「会話もないし、状況もあんまり変化しないし、単調だなぁ」と思って寝ちゃったわけなんですけど、後半に入ってからの「俺だけが知ってる鍵の在処をあいつに伝えないと!」っていうなかなか高難度のミッションが始まってからは結構面白いじゃないの、という感じになりました。普通ならそんなことまず不可能ですが、まあそこは物語なのでそれなりに状況は整えられていて、ただそれでも困難なミッションであることに変わりはなく、チャーリーはかなり苦労させられることになります。

そして、そんな動きをすることからも理解できるでしょうが、チャーリーは、どう考えても理不尽過ぎる状況に置かれながらも、他人の心配をしたり、現状をどうにかして楽しもうとしたりと、凄く前向きです。もちろん、「そうあらざるを得なかった」みたいな部分もあるでしょうが、チャーリーの元々の性質みたいなものも大きく影響しているでしょう。なかなかこんな風には生きられないだろうなとは思うけど、こういうスタンスを忘れないで生きていたいものだなとも思ったりします。

メチャクチャ良かったというわけではないけど(途中寝たし)、激動の時代を背景に数奇な運命を背負った人物の物語としてなかなか興味深いし、「刑務所の小窓から見える風景だけで全体を構成する」というのもなかなか斬新で、結構面白かったです。

いいなと思ったら応援しよう!

長江貴士 サポートいただけると励みになります!

この記事が参加している募集