【映画】「モンテ・クリスト伯」感想・レビュー・解説

いやー、これは面白いなぁ! 正直そんなに期待してなかった、というか、そもそも観るかどうかも迷っていたぐらいなんだけど、3時間あっという間だった。原作は、もちろん名前は知ってるけど(「有名な古典作品」ぐらいしか知らないが)、読んだことはない。まさかこんなにどエンタメだと思わなかったし、よく出来てるなぁと思う。原作がどれだけ長い小説なのかも知らないけど、昔の古典作品って何巻も続いたりするし、もしかしたらこれでも色んな要素を削ってるのかもしれない。まあ恐らく原作を読むことはないのでどうなのかよく分からないままだろうが、とにかく、映画はムチャクチャ面白かった。

というわけで、まずはざっくり物語を紹介しておこう。

1815年、ナポレオンは流刑地であるエルバ島にいた。そして、彼の支持者を根絶するため、無慈悲な逮捕や処刑が行われているような時代だったようだ。

そんなある日のこと、エルバ島の近くのコルス岬で商船ファラオン号が難破した(難破したのは別の船だったかもしれないが)。そして海に浮かんでいた謎の女性を救うために飛び込んだのが航海士のエドモン・ダンテスである。彼は無事に女性を救ったが、その後胸糞悪い船長ダングラールから「勝手をするな」と叱責され、マルセイユに着くまで船倉にいろと命じられた。

その寄港し、アンジェルと名乗った謎の女性とは別れ、その後雇い主であるエルモに呼ばれる。そこには船長もいて、彼がエドモンの命令を無視した行動を非難していた。そして「彼とはもうやっていけない」と訴える船長に、エルモは「望みを叶えよう」と口にし、そのままダングラールを解雇した。そしてそのままエドモンを船長に指名する。彼は思いがけず出世を果たすことになった。

船長への昇格を機に、地元の有力者の娘メルセデスとの結婚も決まり、彼は人生の絶頂にいた。しかし、まさにその結婚式の最中、王室検事であるヴィルフォールの命により、なんとエドモンは逮捕されてしまう。容疑は、ナポレオン直筆の手紙を所持していたことだ。エドモンにはまったく身に覚えのないものだったが、船員2人(内1人はもちろんダングラールである)の証言も得られたとのことで、彼はそのまま投獄されてしまった。

孤島に浮かぶイフ城塞。彼は、深く掘られた穴状の牢獄に入れられ、既に4年が経過した。壁はよじ登れる高さではないし、周りは海に囲まれている。どうあがいても、脱獄など不可能だろう。

しかしそんなある日、彼のいる牢獄の石壁が崩れ、見知らぬ男が顔を覗かせた。どうやら隣にいる囚人のようで、牢獄と牢獄の間の空間を掘り進んできたという。司祭だというファリアは、同じように壁を掘り進んで脱獄する計画を提案し、エドモンもそれに乗った。

ある日ファリアは、ここを出られたら何をしたいという話から、唐突にテンプル騎士団の話を始める。そしてこの話が、その後の彼の運命を大きく変えることになり……。

というような話です。

さて、上述の内容紹介は、ざっくり本編の中盤ぐらいまでで、そして後半に入って「エドモンの復讐劇」が始まっていく。この話が本作のメインパートと言っていいだろうが、前半と後半のあまりのトーンの違いに驚かされるだろうし、「何がどうしてそうなった!?」みたいに感じてもらう方がいいと思うので、後半の詳しい設定については触れないでおこうと思う。

何にせよ、エドモンは復讐を決意した。彼を捕まえた検事ヴィルフォール、彼を陥れた元船長ダングラール、そして彼の失脚に加担し、さらに愛するメルセデスをも奪ったフェルナンの3人だ。この3人は、エドモンが世俗へとカムバックした時にはかなり高い地位に上り詰めており、普通のやり方ではなかなか復讐は難しいだろう。

さらに、エドモンは仲間(これも詳しく触れないことにしよう)と共に復讐計画を進めるのだが、その内の1人に対して、「殺すんじゃ生ぬるい」と口にする場面がある。ただ殺すだけなら、まあどうとでもなるかもしれない。しかし、ラストでエドモンが「死者は英雄となり、罪は赦される」と言っていたように、エドモンはとにかく「殺すんじゃ意味がない」と考えている。そうではなく、彼らが大事にしているものを根こそぎ奪い去ろうと考えるのだ。

そしてそのための計画がなかなか面白い。

彼らは慎重に計画を練り、入念に準備・練習を重ね、そして本番を迎えている。3人の動向を調べ上げ、様々な要素を組み込みながら、心理戦を仕掛けていくのだ。さならがチェスや将棋のようで、「こうすれば、きっと相手はこう動く」というように動きを読んでいる。エドモンは、自分が積極的に動くのではなく、罠を張り、相手に動き回らせることで、いつの間にかクモの巣のようなものに絡め取られている、みたいな状況を狙うのである。

ある屋敷で唐突に怪談話をしたり、「これでもっと儲けられる」と思わせる状況を作り出したりと、その罠はなかなか絶妙だ。エドモンがどうやって彼らを追い詰めようとしているのかは是非観てほしいが(僕も、後半の物語が始まってからしばらくは「こっからどうするんだ?」って思ってた)、ストーリー的にはこの部分がまずかなり面白いんじゃないかなと思う。

そしてその上で、「復讐劇の背後で展開される人間関係」もまた興味深い。分かりやすいところで言えば、やはりエドモンとメルセデスの関係が挙げられるだろう。メルセデスは、エドモンの復讐の対象者の1人であるフェルナンと結婚しているわけで、当然顔を合わせることになる。この2人の関係性がどうなっていくのかは、なかなか興味深いだろう。

また本作にはエデという謎の女性が登場する。彼女の素性は最後の最後で明かされるので、それまでずっと謎の存在なのだが、彼女の葛藤もまた面白いなと思う。復讐の一貫としてある人物に近づくのだが、それがややこしい感じになってしまうのだ。こちらも、どう展開していくのか見ものだろう。

さて、印象的なシーンは色々あったが、個人的に一番好きだったのは、かなりラストに近いシーンなので詳細は伏せるが、「今伝えられた」というセリフが出てくる場面だ。もちろんこれは、「そういう展開になるんだろうな」と分かった上で観ていたのだけど、それでも「いいねぇ」って感じになったシーンだった。まあ、最近の物語では、「そういう展開になりそうだけど、その予想を外してくる」みたいなパターンもあるだろうけど、古典作品だけあって、大体の展開は王道で、「きっとこうなるだろう」と予想出来る場面についてはその通りの展開になると言っていいだろう。この辺りはもしかしたら「物足りなさ」として伝わる可能性もあるが、しかし「古典作品を映像がしている」という事実によって、その印象も薄れるんじゃないかと思う。

というわけで、後半の復讐劇の展開についてなるべく詳しいことに触れないことにしたので、ふわっとしたことしか書いていないが、とにかくストーリーがメチャクチャ面白い作品だった。

で、その上で、映像的にも凄いよなぁ。船のシーンは、CGなのかもしれないけど、実際に海で撮ってる場面もあるんじゃないかなと思う。また、「豪華絢爛」と言っていいだろう美術制作の数々は圧倒的だし(室内はセットだろうなと思うけど、外観は実際に存在する建物を使ってるんじゃないかなぁ)、「メチャクチャ金掛かってるだろうなぁ」という印象の映画だった。映像的にも凄く綺麗だし、迫力あるシーンもあるので、そういう点でも楽しめるかなと思う。

あと、謎の女性エデを演じたアナマリア・ヴァルトロメイは、ホントよく目にするなぁと思う。昔観た映画『あのこと』はメチャクチャ印象的だったし、最近では映画『タンゴのあとで』でも実在した人物を体当たりで演じていた。そうか、映画『ミッキー17』にも出てるのか(どの役だったか思い出せないけど)。

まあそんなわけで、想定よりも遥かに面白かったし、3時間の映画とは思えないぐらいあっという間だったし、でももちろんメチャクチャ濃密な鑑賞体験で、大変満足だった。同じ3時間を観るなら映画『国宝』をまず観てほしいけど、『国宝』を既に観てる人は本作にもチャレンジしてみてもいいだろう。


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