【映画】「ピンポン」感想・レビュー・解説

さて、デジタル版としてリバイバル上映ということで、初めて『ピンポン』を観てきた。ホントやっぱ、シンプルに面白いよなぁ。

個人的に、やっぱり凄いなぁと思ったのが窪塚洋介。本作は、松本大洋のマンガが原作だということだけは知っていて、さらに宮藤官九郎が脚本ということもあって、映画も全体的にマンガチックな雰囲気がある。「登場人物」というより「キャラクター」と呼ぶ方がしっくり来るような人物が色々と出てきて、リアルからちょっと浮き上がったみたいな世界観の中で話が進んでいく。

で、中村獅童とか大倉孝二はスキンヘッドだったり、竹中直人が英語交じりで喋ったりと、「キャラクター」という感じを強くしているのに対して、窪塚洋介は、確かに髪型こそ「おかっぱ」ではあるけど、でも割と「窪塚洋介」のまま、マンガチックな世界観に馴染んでいる感じがした。これはホントに、役者の存在感って感じがするよなぁ。

あと、この当時は「ARATA」という名前だったらしい井浦新(だよな?)も、良い雰囲気出してたなぁ。「スマイル」と呼ばれている彼は、実は全然笑わないのだけど、その「笑わない人物」が「キャラクター」寄りになりすぎずに、比較的「登場人物」という感じの雰囲気で存在していたのが良かった。

やはり、物語全体がマンガチックになってしまうと、どうしてもリアルから浮きすぎてしまう感じがあるが、それを避けるための「重し」みたいな存在として機能していたのが井浦新だったなと思う。めちゃくちゃマンガっぽい存在であるペコ(窪塚洋介)と、映画『ピンポン』の世界の中ではリアル寄りの存在であるスマイル(井浦新)が分かちがたい関係性であるという物語の設定も相まって、マンガ原作の物語を絶妙な形で実写に落とし込んでいる感じがした。

物語は、年配の女性が一人でやっているタムラ卓球場から始まる。高校1年生のペコはそこで、大学生相手に「賭け卓球」を仕掛け、圧勝していた。そこにやってくるのがスマイル。2人はこのタムラで卓球を学び、そして同じ片瀬高校に通っている。2人とももちろん卓球部に所属しているのだが、ペコは練習にさえ顔を出さないし、またスマイルもペコがいないと張り合いがないのか、大して練習に顔を出さない。

2人は、卓球雑誌を通じて、ある高校が中国からのエリート留学生を獲得したことを知る。勝手に「チャイナ」と名付けたその留学生を倒そうと、ペコとスマイルは道場破りに行くが、ペコは21対0で完敗。手も足も出なかった。そんなチャイナは、海王高校の絶対的エース風間を倒すために雇われており、全員が倒すべき目標に定めている圧倒的な強者である。

そんな風にして、インターハイに日を迎えた。2人はそれぞれ、3回戦で運命の相手とぶつかる。スマイルはチャイナと、そしてペコは、海王高校の1年であり、同じくタムラで切磋琢磨したアクマ(佐久間)である。2人はそれぞれ無難に3回戦まで勝ち進むのだが……。

さて、本作の非常に面白いポイントは、「スマイルは、卓球の圧倒的才能を持っているのだが、それを発揮しようとしない」ということだろう。彼は、「卓球なんて、死ぬまでの暇つぶしですよ」「卓球に人生を賭けるなんてダサい」みたいなことを時々口にしては、「卓球に本気になることなんかない」という意思を示すのだけど、しかし本当は違う。彼が全力を出さない理由は、「スマイルにとってペコがヒーローだから」なのだ。

子どもの頃は、スマイルの卓球はド下手で、アクマに馬鹿にされるほどだったが、ペコが熱心に教えていた。そしてそれによって、スマイルの内に元々あった才能が開花したのだ。海王高校のエース風間は、部員からスマイルに注目する理由を聞かれ、「半分は嫉妬だな」と答えている。そしてそれに続けて、「才能は、求める者のところだけに宿るわけじゃないからな」とも言っていた。

また、アクマはあるシーンで、同じタムラで切磋琢磨したスマイルに対して、「俺はお前の1万倍も努力した!」と口にする。このセリフの意図は、このセリフだけ聞いても理解できると思うが、アクマは1万倍も努力したのにスマイルに敵わないということだ。それぐらい、圧倒的な才能の違いがあるというわけである。

しかしスマイルは、その才能を発揮しようとしない。そのことは、割と冒頭で示唆される。ペコとスマイルが、チャイナのいる高校に殴り込みに行った時のこと。コーチと共に屋上に
いたチャイナは、体育館から聴こえるラリーの音から、「一方が手を抜いている」と気づくのだ。当然、手を抜いていたのはスマイルである。この事実は、片瀬高校のコーチにもバレていた。スマイルはとにかく、ペコと打つ時は実力を発揮しようとしないのだ。

そしてその理由こそが、「スマイルにとってペコがヒーローだから」である。ペコも、スマイルとはまた違った形で卓球の才能に溢れた人物であり、そういう意味でも「ヒーロー」なのだが、それだけではない。スマイルにとってペコは、もっと大きな意味で「ヒーロー」なのである。

だからそんな自分にとってのヒーローに勝ってしまいたくないのだ。もっと言えば、「負けると大泣きする」と知られているペコが泣くのを見たくないということなんだと思う。

この「超絶的な才能を持つ人物が、全然やる気がなく、才能を発揮しようとしない」という設定が、「スポ根」的な物語をちょっとズラしている感じがあって、「どうなるんだ、この物語」という関心が最後まで続いていた気がする。面白かった。

しかし、ホント、卓球の試合のシーンは凄いよなぁ。CGなんだろうけど、それにしたって、役者はちゃんと身体を動かしているはずだから、「後からボールをCGで加えるにしても、役者の動きが凄い」という感じがした。しかも、窪塚洋介(ペコ)だけが、ジャンプしながらボールを返すなどやはりマンガ的な動きをしていたのだけど、それも全然様になっているというか、違和感を与えない雰囲気があって、マジでこの主人公を窪塚洋介にしたの完璧すぎるだろって思った。

あと、夏木マリの存在感も素晴らしいよなぁ。役名が分からなかったから、さっきの内容紹介では「年配の女性」って書いたんだけど、この表現はしっくり来ないよなぁ。この撮影の時の夏木マリの実年齢も、作中での役の年齢も知らないけど、何にしても「年齢を感じさせない存在」みたいなところがあって、それもまた、リアルから少し浮き上がっている本作の雰囲気には絶妙にマッチしていたなと思う。

あとは、時代背景的に驚いたのが2つ。1つは、みんなバンバンタバコを吸ってたこと。夏木マリはいいとしても、高校生って設定のペコとかアクマも吸ってて、どうなんだろう、令和の今だと、物語上でもそういう描写は許容されなかったりするような気がする(映画はOKだけど、地上波はダメ、とかかな?)。あと、とにかく懐かしかったのが「学校の焼却炉」。僕も小学校時代とか校舎の裏に焼却炉あったなぁ、とか思ったけど、これも今は、そもそもリアルの学校にそんなものは存在しないだろう。まあそんなところも気になった。

とにかく、窪塚洋介と井浦新が良すぎた映画だったなぁ。素晴らしかった。

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