【映画】「POCA PON ポカポン」感想・レビュー・解説
凄く面白かったというわけではないけど、なかなか奇妙な雰囲気を持つ映画だったなと思う。
上映後に、ホラー映画の監督をしている清水崇と、本作監督の大塚信一のトークイベントかあったのだけど、その話を聞いて「ふむふむ」と思った部分もあって、鑑賞直後から若干評価がプラスに動いたかも、と思う。しかし、清水崇はトークが面白い。夢グループをぶっこんでくるとかね。
で、そのトークイベントの中で清水崇が言ってた1つに、「誰の物語として観ればいいかよく分からなくて怖い」みたいなのがある。うん、確かになと思う。
本作は、「28年前に起こった連続殺人事件の犯人が、今この団地に住んでいる」みたいな設定で話が進んでいく。で、清水崇が言っていたのが、「こういう場合、被害者が加害者を赦す過程に焦点を当てるとか、加害者にはこんな事情があったんだみたいな感じで話を展開させることが多いと思うけど、本作はどっちにもいかない」みたいなことを言っていた。
ホントその通り。本作の主人公は、その噂の団地に住む一家の長男だ。シングルマザーの母親と弟の3人で暮らしている。
この長男は、もちろん事件の被害者ではないし、父親が実は被害者だったみたいなこともないし、単に「28年前の連続殺人犯が住んでるかもしれない団地に住んでる」ってだけの少年だ。それでどう物語が展開するんだ? って感じだろう。
で、確かにその長男が中心にはいるのだけど、加害者の話もあるし被害者家族の話もあるし、あるいはその長男の母親の話も出てくる。必ずしも長男がすべての中心という感じでもないのだ。
で、この物語、何が興味深いかと言うと、「長男が、28年前の連続殺人犯に親和性を抱く」のである。これだけ聞くと、なかなか狂気的に感じられるだろう。が、映画を観てると、そういう強い印象にはならないんじゃないかなと思う。感じ方は人それぞれだろうけど、「なるほどなぁ、確かになぁ」なんて感覚になる人もいるんじゃないかと思う。
長男が言ってた言葉で印象的だったのは、「僕は家族のために正しいことをしたいけど、おじさん(連続殺人犯)は正しいことのために正しいことをしようとしてる。だからおじさんは凄い人だと思う」である。これはなかなか示唆に富む発言だったなと思う。
もちろん長男は、「過去に酷い犯罪をしたことがある」と言う事実を忘れていないし、その点はマイナス評価として捉えているようだ。でも、そうだとしても、自分が接してきたおじさんの印象の方がやはり強くて、だから「尊敬」みたいな感覚になってしまう。
後半から強く描かれるこの絶妙に奇妙な雰囲気が、1つ本作の特異な点かなと思う。
で、僕は彼のスタンスを是としたいなぁと思う。
「その人が過去に何をしたのか」はもちろん重要な情報だが、同じくらい「その人が今どうしているのか」も大事だろう。で、多くの人が「過去」ばかり見ている気がする。もちろん、その方が合理的な状況は多々あるだろう。でもそうじゃないことだってあるよなと思う。
その上で僕は、「過去よりも今を見て判断したい」と思う。過去のことを気にしないのは難しいが、一旦保留にして、今の判断を重視したいと思っているのだ。
だから、長男の振る舞いに好感が持てるのだと思う。
ただ、長男のスタンスが「狂信」の方に振れそうな雰囲気もあって、そういう怖さはあったりする。特に、長男の母親は、「勉強なんかしなくていい」と言って教科書を捨てるようなかなり狂気的な人物なので、身近にいるそういう存在と比較することで「おじさんの方がいいかも」みたいに傾きそうな感じもあって、その不定形な感じが絶妙だったなと思う。
主要な登場人物全員の輪郭が曖昧というか、はっきりしない感じがあって、それ故に物語全体も不定形な印象が強い。だから、観ている人にとってそれが良い方に転ぶか悪い方に転ぶかで評価は変わりそうだなという感じがする。個人的には今ひとつという感じだったけど、この世界観に惹かれる人はいるんじゃないかなと思う。
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