【映画】「よみがえる声」感想・レビュー・解説
本作で扱われている個別の要素はとても興味深い。のだけど、「要素が多すぎる」のと「焦点がなかなか定まらない」のとで、非常に観にくい映画になっているなと思う。個人的にはちょっと、良い風には評価しにくい映画だった。
本作にはまず、「かつてドキュメンタリー映画を撮っていた母が残した16mmのフィルムをデジタル化する」という話が出てくる。90歳になったパク・スナムは在日朝鮮人2世であり、カメラと録音機を持って、「広島・長崎で被爆した朝鮮人」「長崎の軍艦島に連行された徴用工」「日本人の慰安婦にされた女性」など、様々な人たちの声と姿を記録してきた。それらを元にいくつかのドキュメンタリー映画を発表しているのだが、結局使わなかったフィルムも膨大な量残っており、それは音声テープも同様である。そこで、娘のパク・マイがそれらを整理し、デジタル化出来るものはして保存するということを始めたようだ。
そしてさらに、「映像・音声のデジタル化に際して、母親にカメラを向け、当時の思い出を語ってもらう」という要素も含まれている。パク・スナムの記憶力はなかなか凄まじく、90歳を超えているにも拘らず、娘が映像を観ながら当時の話をするとすぐに何か記憶が蘇るようだ。パク・スナムは、「最終的には失明する目の難病」を患っているとかで、恐らく娘からインタビューを受けている時にはあまり目が見えていなかったんじゃないかと思う。つまり、デジタル化した(しようとしている)映像そのものはほぼ見えていなかったはずなので、そういう視覚情報のきっかけなしに当時の記憶を思い出しているのだと思う。凄いものだ。
また本作には、「パク・スナムが事実を記録する旅に出るきっかけとなった事件」も扱われる。それが、1958年に起こった「小松川事件」である。女子高生が殺された事件で、当時18歳だった在日朝鮮人の男が逮捕されたのだ。彼は死刑判決を受けたが、その後大岡昇平ら知識人が減刑を求めて運動を起こす。そして彼女は、そんな世の中の動きに呼応するように、逮捕された青年と2年間も文通を続け、後にそれをまとめた書籍を出版し大ベストセラーになったそうだ。
で、これをきっかけに「世の中の社会問題(特に、自身にも関係が大きい在日朝鮮人の問題)」に目を向けるようになった彼女は、あらゆる場所へ赴き、様々な人々の声を聞くようになったのである。
そしてその上で本作では、「広島・長崎で被爆した朝鮮人」「長崎の軍艦島に連行された徴用工」「日本人の慰安婦にされた女性」など、結果的に使われないまましまいこまれていた映像そのものもたくさん使われているのである。
いやいや、ちょっと要素が多すぎる。本作はそもそも、148分もある結構長尺の映画なのだが、しかしそれでも全然まとまりきってないぐらいぎゅうぎゅうに要素が詰め込まれていて、さすがにまとまりがなさすぎるなと感じた。
冒頭で書いた通り、1つ1つの要素はとても興味深いし、要素を2~3個に絞ってそれぞれを掘り下げる構成にすればもっと見やすく、興味深い作品になったように思う。個人的にはホント、その1点がどうにも許容しがたかった。
特に、パク・スナムが捉えた「在日朝鮮人の苦労」については、かつての日本の悪事が描かれているし、やはり日本人としては知っておくべき歴史の側面だよなと思う。特に世の中では、「日本は素晴らしい国だった」という主張のために、過去の黒歴史を「なかったこと」にしようとする動きが強くなっている気がしていて、嫌だなと思う。作中で誰かが、「起こったことは起こったことだし、なかったことにはならない」と言っていて、ホントその通りだなと思う。
今まさに、アメリカがベネズエラに軍事介入(というか、戦争だろうよ)を行っている。恐らくだが、多くの人が「酷い」と感じているのではないだろうか。しかし、そう思うのであれば、「かつて日本という国が何をしでかしたのか」も同じように認識しておく必要があるだろう。
排外主義がますます加速しているように感じられる世の中に生きているからこそ、現在進行形の出来事だけではなく、過去の歴史にも目を向け、「排外主義が何をもたらしてきたのか」を改めて理解すべきだと実感させられた。
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