【映画】「密偵」感想・レビュー・解説
内容に入ろうと思います。
日本統治下にある朝鮮で、イ・ジョンチュルは通訳上がりの日本警察の警務として働いていた。当時、朝鮮の独立を掲げた抗日武装秘密結社である義烈団の活動が秘密裏に行われており、日本警察としては義烈団の動きを抑え、団長であるチョン・チュサンを捕らえることを至上命令としていた。
東部長の元で働いていたイ・ジョンチュルは、その語学力と独自の情報網を駆使して、義烈団のメンバーを追うが、なかなか決定的に捕まえることが出来ない。
ある時部長から、“橋本”(日本名ではあるが、朝鮮人)の男を組むように命じられる。お互いの情報は共有するように、と指示されたが、イも橋本もお互いを信用しない。互いのやり口を牽制し、それぞれが自らの正しさで捜査を進めようとする。
一方、義烈団の隊長を務めていたキム・ウジンは、商人として町に溶け込みながら、革命のための準備や情報戦の最前線にいた。情報漏れや資金難など課題は山積だが、メンバーの士気は高く、なんとか朝鮮の独立をと意気込んで活動に邁進している。
ある日イが、キムの営む写真店を訪れた。互いに牽制しながら、キムはイを「アニキ」と呼び、仲の良さをアピールするようになる。イも、キムが義烈団のメンバーであると認識しながら、それを知らせず、キムを動かして組織の壊滅を目論もうとする。
そんなある日、イにとって青天の霹靂とでも言うべき事態が起こり…。
というような話です。
全体的にはなかなか面白かったんですけど、とにかく最初の内は設定を理解するのが大変でした。調べると「義烈団」というのは実在したようです(歴史にはまったく詳しくないので、もしかしたら普通は学校で習うことなのかもですけど知りませんでした)。韓国では義烈団というのは恐らく誰もが知っている存在なのでしょう。この映画は韓国映画であるが故に、その辺りの詳細があまり詳しく描かれないまま話が展開されていきます。義烈団が何なのか、そもそもそこから知らない僕は、義烈団というのはどういう組織で、何と何が対立していて、誰がどちらの陣営なのか、みたいなことを理解しながら観るのにかなり苦労しました。
その辺りを大体理解できたら、後はスピーディーに展開する物語を楽しめるようになりました。そうなってくると、主人公のイ・ジョンチュルの葛藤が様々な形で浮き彫りになってきます。
内容を明かすことになってしまうので詳しくは書きませんが、イは様々な葛藤の中で目まぐるしく立場が入れ替わり、悩みながら行動していくことになります。義烈団、日本警察、そして朝鮮人という出自。どれもが彼の行動を制約し、苦しめる結果になります。イ自身は、恐らく善良な人間でしょう。というか、善良でありたいと願っている人間だと感じます。ただ、社会情勢や出自が、ただ善良であり続けることを許さない。その時その時で自分に与えられた役割をまっとうしながら、一人絶望的なまでの葛藤を飲み込んでいく姿は、なかなか迫ってくるものがありました。
だからこそ、イの最後の行動は、なんというか、個人的には受け入れてあげたい、という感じがしてしまいます。そう思うことは間違っているんでしょうけど。彼の最後の行動は、正しいか正しくないか、という判断基準ではなく、そうすべきか否か、という基準で選ばれたのだろうな、と思います。で、やるべきだ、と判断した。その決断をさせたものがなんだったのか、それは正直分かりません。分かりませんが、だからと言って納得感がないわけではありません。イの行動は、正しいかどうかではなく、すべきかどうかという観点から見れば、すべきだったと結論してしまっても仕方ないものに感じられます。いや、観る人によって感覚は変わるかもしれませんが、僕にはそう感じられました。
結局のところ、憎しみは何も生み出さないのだと感じる。憎しみを捨てきれないことは多々あるし、何も生み出さないと分かっていながらせざるを得ないこともあるのだろうけど、憎み合い続けることの不毛さみたいなものを感じました。この映画で描かれている状況は、日本側が憎み合いの口火を切っているわけで、「憎み合い続けることの不毛さ」などと言えるような立場ではないとは思うのだけど。
いいなと思ったら応援しよう!
サポートいただけると励みになります!