【映画】「ペンギン・レッスン」感想・レビュー・解説

なかなか面白い作品だった。しかし、「実話」じゃなかったら「なんだそりゃ!?」って話だろうなぁ。あまりフィクションっぽくない展開をするので、だから「概ね実話なんだろうな」って思ってるけど、全体的に「何がどうしてそうなった??」みたいな部分が多く、「実話である」という要素が重要な物語だったような気がする。

さて、「何がどうしてそうなった??」の要素の1つは、「物語の舞台が1976年のアルゼンチンである」という点にある。というのも、この時期のアルゼンチンは軍事政権下にあったそうなのだ。

物語的に、その事実がそこまで影響することはないのだが、ある場面である人物が突如誘拐されてしまう。で、どうやらその誘拐は、政府(軍部)が行っているようなのだ。映画の最後で、「1976年のクーデターは7年間続き、今も3万人が行方不明のままになっている」と字幕で表記された。実にきな臭い世の中だったようだ。そしてだからこそ、「ペンギン」の存在が一層重要視されたのだと思う。

というわけで、ざっくりと物語を。

イギリス人の英語教師のトムは、割と投げやりな気持ちでアルゼンチンの名門寄宿学校であるセントジョージ校に赴任した。学校隣接の宿舎に住むことになったようだ。彼は学力が並以下のクラスと、あとラグビー部の顧問を任されることになった。ラグビーのルールは知らないし、むしろ嫌いですらあるのに。

ある日彼は、何故かつきまとってくる物理教師のタピオと共に旅行に出かけた。旅先で「評判が悪い」とタピオが言っていたナイトバーのような店に入り、そしてそこでトムはある美女と知り合う。朝まで店にいたようで、2人で早朝の海岸を歩く。すると海岸に重油が溜まっており、そしてその中に一羽のペンギンを見つけたのだ。トムは「もう助からない」と全然乗り気じゃないが、美女が「助けなきゃ」と意気込んでいるため、「ワンナイトラブのため」と割り切って、彼らは宿に重油まみれのペンギンを運び込んだ。そして美女と一緒にペンギンを洗ってあげたのだが、結局、美女とセックスすることはなく、ペンギンだけが残ってしまった。

トムはもちろん、ペンギンを海に還そうとしたが何故かトムのところに戻ってくる。ホテルに置き去りにしようとしたり、税関で止められたので没収されようとしたりしたのだが上手くいかず、結局家まで連れて帰ってしまった。赴任当初、「ペット禁止」と校長から言われていた。見つかったら、大変だ。

トムはやはりここでも、常識的な判断として、動物園で引き取ってもらうことを考えた。どうにかこうにか園長と面会の日程を決めたが、その日まで少し先だ。世話はしなくちゃいけない。あと、ひょんなことから寄宿学校の清掃係に見つかってしまった。

とまあそんなこともあって、トムは、「授業崩壊」と言っていいような状況のクラスにペンギンを連れて行ってみることにした。すると生徒たちは興味津々。結果として授業も上手くいくようになり……。

というような話です。

物語的にはホントにこんな感じで、冒頭で少し触れた「誘拐」を除けば、メチャクチャ大きな出来事が起こるなんてことはありません。基本的には学校内とトムの周辺でのちょっとした変化を描く物語であり、なんてことはないと言えばなんてことはありません。

ただ、全体的にとにかく面白いんですよね。客席からも随時笑い声が上がっていました。なんか凄く「お笑い的」というか、「きっとこういうことが起こるんだろうなぁ」と予測出来るような描写から「やっぱりそうだよね!」みたいな展開になると、思わず笑ってしまう、みたいな場面が多かったように思います。

特に、「トムの部屋でみんなが何故かペンギンに悩み相談をする」みたいなシーンは、ホント、僕も思わず笑ってしまいました。

そしてそんな「楽しい物語」が、「軍事政権下のアルゼンチン」という不穏な世界で展開されているというチグハグさも何だか気になるポイントだし、さらに「これが実話を元にしている」という事実もおかしみをプラスしている感じがあったなと思います。ホント、様々な要素が絶妙に絡まりあって、何とも言えない不思議な雰囲気を醸し出している感じがありました。

あと、個人的にはトムがなかなか興味深いキャラクターをしていたなと思います。なんというのか、普通なら嘘をついたり取り繕ったりしちゃいそうな場面で、トムはホントのことを割とスルッと口にしてしまいます。まあもしかしたらこれは、物語をシンプルに展開させるためのフィクション的な変更だったとするかもしれないけど、物語という観点で言えばシンプルで分かりやすくなっていて良い気がしました。

正直、もう少し何かあるともっと良かったなという感じはあったけど、これはこれで作品としてまとまっている感じはします。ペンギンに演技をさせるのは難しかったんじゃないかという気もするけど、どうなんだろう。あと、トムがやってた「ペンギン重視の授業スタイル」は面白かった。ペンギンがいないと成立しないやり方だけど、生徒が「興味深い授業でした」って言ってたのは理解できるし、こういうのっていいかもねって思ったりした。


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