【映画】「WEAPONS/ウェポンズ」感想・レビュー・解説
正直、まったく観る予定じゃなかった映画で、「観る予定の映画ストック」がちょっと落ち着いてきたから「何かないかな」って探して見つけた作品なんだけど、これ、メチャクチャ面白かった!ジャンルとしてはホラー映画になるんだろうけど、ミステリ・サスペンス要素もあって、さらに、最後の最後までホラー映画の体裁は保っているのに、ラスト5分ぐらいは何故か客席から笑い声が上がるという展開で(僕も笑った)、なんとも変な映画だった。
物語の設定や展開を踏まえると、普段の僕なら「物語の畳み方次第で評価が変わるな」と思うような映画なんだけど、本作の場合、観ている途中の段階で、「あ、これ、ラストの展開がどうでも割と面白いって評価できる映画だな」って感じだった。これは、僕の感覚的には結構珍しい。で本作は、割とラストもちゃんとしてるっていうか、全体を通じて「ストーリーをちゃんと作ってる」って感じがあるので、そういう部分も良かった。普段全然ホラー映画とか観ないんだけど、これは観て良かったなぁ。
あと、割と早い段階で気づいたんだけど、「新人教師ジャスティンを演じてるの、映画『アシスタント』の人だよな」ってなった。普段人の顔とか全然覚えられないんだけど、分かる時は分かるんだよなぁ。不思議。ジュリア・ガーナーって女優らしいんだけど、彼女は物語の中で、「いやいや、そんなことしない方がいいんじゃない?」みたいに感じるようなことを割とするっとやっちゃう。教師なのに。でも、「こういう感じの人ならやっちゃうかもねぇ」みたいな絶妙な雰囲気を醸し出していて、凄く良かった。映画『アシスタント』の時とはまた全然違う感じで、大変良かったです。
というわけでざっくり内容の紹介を。
冒頭、「これは本当にあった出来事です」というナレーションから始まる(もちろん、実話のはずがないが)。ある町で、子どもたちの失踪事件が発生したのだ。しかも、これが実に奇妙だった。メイブルックという小学校のあるクラスの生徒17人が一斉にいなくなったのだ。アレックスという生徒を除いて。そして、そのクラスの担任教師がジャスティンである。
警察の捜査により、いくつかのことが明らかになった。防犯ベルの作動時間から、子どもたちは深夜2時17分に一斉に自ら家を飛び出したようだ。いくつかの家庭では防犯カメラが設置されており、そこに子どもたちが深夜凄い勢いで走る姿が記録されていた。しかし、分かったのはそれだけ。子どもたちの行方はさっぱり分からないし、何が起こったのかもまったく解明できないままだ。
というのが、この物語の前提である(これらは冒頭数分間で、主にナレーションベースで説明される)。で、物語は事件から1ヶ月後、休校が続いていた小学校を再開させる前に行われた保護者向けの集会から始まる。
校長があれこれ説明するが、保護者の1人が「お前の話など興味はない」と話を遮る。そして、担任教師のジャスティンに話させるのだ。当然、彼女は何も知らない。しかし、子どもたちを”奪われた”保護者たちは、その怒りを分かりやすくジャスティンに向ける。その日のよる、逃げるように自宅に帰った彼女は、何者かによって車に「WITCH(魔女)」とスプレーで落書きされているのを発見する。
こうして、「失踪した子どもの父親であるアーチャー」「警察官であり、ジャスティンの元恋人でもあるポール」「小学校の校長であるマーカス」など様々な人物の視点を経由しながら、「謎の失踪事件に振り回される者たち」を描き出していく……。
というような話です。
さて、こんな風に内容を紹介すると、「失踪事件はいかに起こったのか?」に物語の焦点が当てられるように思うだろう。しかし、実はそうではない。もしそういう展開だったとしたら、「ラストの展開次第で評価が決まるよなぁ」といういつもの感覚で作品を観ていたと思うが、本作はそうはならないのだ。
ではどんな風に展開していくのか。それはちょっと説明しにくいのだが、「担任教師ジャスティンを中心とした、失踪事件後の町で起こる細々とした出来事が描かれる」という感じである。
主要な登場人物の中で、「失踪事件そのもの」に執着しているのは、マシューという我が子が失踪してしまった父親のアーチャーだけだろう。彼だけは、マシューがどこにいるのかを、つまり、集団失踪事件の真相を追い求めようとしている。警察に足繁く通って報告を聞くのだが、警察の捜査が進展している感じがしない。だから彼は、自身が経営者である建設会社の仕事でミスを連発するぐらいに仕事に注力せず、子どもの行方を追っているのだ。
しかし他の面々はそうではない。校長のマーカスは「学校運営に支障を来さないように」という観点から対応をするだけだし、警察官のポールは妻と署長のことしか気にしていない。担任教師のジャスティンは、「保護者の気が立っているから」という理由でしばらく教師の仕事を求職せざるを得なくなっており、そんな自分の現状をどうにかするので精一杯だ。ジャスティンは、唯一失踪しなかったアレックスのことを気にして接触しようとしているが、これも「アレックスから話を聞けば自分の身の潔白を示せるかもしれない」という動機によるものな気がするし、やはり自分のことしか考えていないと考えていいように思う。
というわけで、冒頭で提示される「子どもたち17人の集団失踪」というセンセーショナルな事件は、冒頭からしばらくしてすぐに「背景」と化してしまうのだ。この構成・設定が凄く良かったと思う。失踪事件そのものに焦点を当てれば、「真相は何なんだ?」という関心だけで引っ張るような展開にならざるを得ないが、本作では、町の様々な住人の思惑や行動が絶妙に交錯するような形で物語が展開されるので、物語の展開そのものが面白いという感じになる。
もちろん、そのような「住民の思惑や行動の交錯」は、最終的には集団失踪事件と関わってくるのだが、その関係性はかなりラストに至るまで理解できない。つまり、ストーリー全体としては「住民の思惑や行動の交錯」によって進んでいくというわけだ。これが本当によく出来ているなと感じたし、脚本と構成が上手いなと感じさせられた。
主要な登場人物それぞれの行動は、もちろん、「最後の大団円」を演出するために周到に用意されたものと言えるが、しかし、その「最後の大団円」のことを知らずに観ている時点では、彼らの行動はとても自然に見える。まあ、冒頭でも触れた通り、ジャスティンだけは「おいおいおい」と感じるような言動をするのだが、しかしそれも、ジャスティンというキャラクター設定から考えれば許容範囲内と言えるように思う。
そして本作は、そんな幾人かの主要な登場人物の物語が交錯するように作られている。物語はジャスティン視点から始まり、それからアーチャー、ポール、マーカスと視点人物が入れ替わっていく。同じ場面が複数の登場人物視点から描かれ、「その時何があったのか?」の見え方が少しずつズレていく。そして、彼らの物語がやがて一箇所に収斂していき、そこで「最後の大団円」が繰り広げられるというわけだ。ホント、よく出来てるなと思った。
というわけで、作品の性質上書けないことも多いが、とても面白かった。ホラー映画であることは確かだが、「メチャクチャ怖いシーン」はそう多いわけではなく、展開としてはミステリやサスペンスに近いだろう。ただやはり、ちょいちょいグロいシーンはあって、特にラストシーンでは「おー、なかなかのグロさですな」って感じになるので、そういうのが苦手な人は観ない方がいいかもしれない。
あと最後に。メチャクチャどうでもいい話なんだけど、「病院に行けば?」と言われたある人物が、「Hospital don't fix me.」みたいに返してたと思うんだけど、「え? 『fix』?」って感じだったんだよなぁ。「修理」って意味だろうから、「人間を治療する」みたいな意味でも使うのかな? とか思ったり。まあ状況的に、「敢えて『fix』って単語を使った」って可能性もあるような気がするけど。この辺り、もう少し英語が理解できると面白いだろうなと感じたりした。
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