【映画】「ショーシャンクの空に 4Kリマスター版」感想・レビュー・解説

もちろん良い映画だった。さすが名作と言われるだけのことはある。

ただ、どうしてもこうも考えてしまう。どうにかしてこの「ショーシャンクの空に」と、「名作である」という事実を知らずに出会う方法はないものか、と。

僕はいつも、そういうことを避けたくて、配信で映画を観ることはせず、基本的にはまだ評価の定まっていないだろう劇場公開中の映画を映画館で観るようにしている。

僕が感じているこの問題に共感してくれる人がどれぐらいいるのか知らないが、僕にとってそれは、本を読み始めた頃からのずっと大きな問題だった。

映画や本に限らず、今の時代は、飲食店などあらゆるものを探す際に、「事前のレビュー」が重視される。もちろん僕も、電化製品など結構値の張る商品を買う時にはそれなりに調べて決める。しかしそれは、電化製品などには「求める機能」がある程度事前に分かっているから自分の中で許容できている。

ただ、映画や本や飲食店の場合、電化製品のような「求める機能」は正直ないだろう。基本的に唯一の価値判断は、「その時の自分が良いと思うかどうか」だけのはずだ。もちろん、「ホラー映画は苦手だから観たくない」「バッドエンドの小説は避けたい」「パクチーを使っている店は困る」など、「排除すべき要素」を予め確認したいという動機はあっていいと思うが、「それが良いのかどうか」を、自分がそれに触れる前の段階で情報として仕入れることが、僕にはあまり良いことには思えない。

ただ、ここにはもう1つ難しい点がある。それは、「『これは良い』という情報に事前に触れなければ出会えなかったかもしれない」という点だ。

もし僕が、「『ショーシャンクの空に』は名作である」という情報を知らなかったら、恐らく「ショーシャンクの空に」を観ようという気にはならなかっただろうし、そもそも存在すら知らないままだっただろう。そもそも出会えなければ評価のしようもないのだから、「『ショーシャンクの空に』は名作だ、という事実を知らずに観たかった」という感想さえ抱くことはなかったことになる。

このジレンマを、昔からずっと抱えていた。今も、まったく解消されていない。

とりあえず、映画は映画館で観る、本は本屋で買う、というやり方で、8~9割ぐらいの問題は解消できる。ただ、「ショーシャンクの空に」のような、昔からの名作などは、この方法ではどうしても上手くいかない。

今回、「ショーシャンクの空に」を観てよかったと思う。純粋に良い映画だと思うし、面白かった。ただ、「名作だと知らなかった自分」がどういう評価をしただろうかという思考が、どうしても頭の中に紛れ込む。「『名作』という情報は邪魔だなぁ」とどうしても感じてしまう。

難しい問題だ。

相変わらず、「刑務所の話」ぐらいしか知らずに映画を観たので、ラストの展開には結構驚いた。ほぉ、なるほど、そういう展開になるんだ、と。物語がすごく綺麗にまとまってて、なんだかスッキリする。最後の最後まで、よく出来てるよなぁ、と感じさせる、構成が見事な映画だった。

今回初めて知ったのだけど、これ、原作がスティーヴン・キングの短編小説なのか。知らんかった。スティーヴン・キングの小説が名作と呼ばれる映画になっているのはいくつか知ってるけど、まさか「ショーシャンクの空に」もそうだとは知らなかったから驚いた。

映画の本筋に触れるとネタバレになりそうなので、あまり具体的には触れないでおこう。本筋とは直接的には関係ない部分ですごく印象的だったのが、「仮釈放が怖い」という話。

囚人仲間の1人で、既に50年も刑務所に入っている人物が、仮釈放を認められた。そう聞くと、喜ばしいことに感じられるだろう。実際に仲間の1人も、「元気でな」とその決定を喜ぶ声をかけた。

しかしその人物は仮釈放をまったく喜ばしいものだとは思っていなかった。50年も刑務所で暮らした人間が、シャバで生きられるはずがないと考えているのだ。確かにその通りだろう。この物語は、1947年からスタートしている。現代ほど時代の変化は早くないとはいえ、その人物は、「刑務所に入る前に1台だけ自動車を見たことがあるが、今では至る所にある」と驚いている。今から50年前に収監された人間が2022年に出所したら、まさに浦島太郎のようなものではないかと思う。

そしてその話の中で、

『終身刑は人を廃人にする刑罰だ』

というセリフが出てくる。

もちろん、罪を犯した人間が悪いのであり、規定に則った罰を受けなければならない。また僕は、裁判などに何か誤りがあった場合に「死刑」だと手遅れなので、そういう意味でも「終身刑」という刑罰の方がマシだと思っている。だから「終身刑」という刑罰に批判的な意見を持っているわけではない。

ただやはり、「50年も刑務所にいると、刑務所の外が怖くなる」という言葉は考えさせられる。

ある人物はこうも言っていた。

『刑務所の塀は、最初は恐れる。そして次第に慣れていく。そして長い年月の間に頼るようになる』

刑務所に長くいる者だからこその実感だろう。最初は「自分を取り囲む障害」でしかなかったものが、やがて「自分を外の世界から守ってくれるもの」に感じられるというのだから。

そしてそんな世界だからこそ、

『希望は危険だ。塀の中では劇薬だ』

なんていうセリフも成立する。ここで言う「希望」とは「塀の外」のことを指す。「塀が自分を守ってくれる」という感覚を抱くようになればなるほど、「塀の内」こそが「希望」に感じられるだろう。だからこそ、「塀の外」のことを指す「希望」は「劇薬」だと言いたくなるのだ。この言葉は後半に入ってしばらくしてから出てきたような感じだったと思うが、映画のラストの展開でも非常に重要な要素として登場するので、その辺りも展開が上手いと思う。

主人公のアンディーの話で言えば、やはり、彼が「刑務所のルール」に沿わずに、「ギリギリアウト」なラインを絶妙に広げながら「善行」を進めていく感じが凄く良い。刑務所的な絶望も存分に描かれるわけだが、アンディーの自発的な行動だけ見ていると、とても刑務所の話には思えないような「真っ直ぐさ」がある。そして、全編に渡って貫かれるアンディーのこのスタンスが、ラストの展開を非常にリアリティーのあるものに感じさせるという点でも重要で、何度も書くけど、よく出来てるなぁ、という話だった。

あと、物語的に最も関係ない話を最後に書くと、州にもよるのかもしれないが、どうやらアメリカでは、仮釈放になった者に対して「住居」と「仕事」が用意されるそうだ。これは良い仕組みだと感じた。

僕はノンフィクションやドキュメンタリー映画に結構触れるが、「日本の服役囚が仮釈放になった際に、住居と仕事が用意される」なんて話を聞いたことはない。今ざっくりネットで調べてもそんな情報は出て来ない。身元引受人が指定されることと、保護司への定期連絡が必要になるぐらいだ。

日本の場合、身元引受人が決まるので「住居」の問題はクリアされるだろうが、やはり「仕事」は結構苦労するのではないか。それがあらかじめ用意されているというのは、とりあえず大きい気がする。もちろん、「用意された仕事」と「自分で見つける仕事」のどちらが良いのかはなんとも言えないが、「仮釈放した直後にとりあえずちゃんと仕事がある」という状況の方がいいんじゃないかなぁ、と思ったりした。

繰り返すが、とても良い映画だったと思う。ただやはり、「名作」という情報を知らずに観たかったという感覚は消せない。

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