【映画】「キサラギ」感想・レビュー・解説
さて、何故か劇場公開していたので観に行ってきた。2007年の映画だそうだ。何なら、中古で買ったDVD(まだ観ていない)が家のどこかにあるのだが、何だかんだで初めて観た。
ワンシチュエーションの舞台演劇のような作品で、しかも色々あって役者は全員喪服、舞台装置に特殊なものは特段ないので、ほぼ「脚本のみ」の作品と言っていいだろう。で、その脚本が実に面白い。「自殺したアイドルの1周忌の追悼会に集まったファン5人が、成り行きでその死の真相について議論する」というシンプルな設定ながら、次々に色んな事実が明らかになり、そして最終的に「そんなところに着地するのか」という展開になっていく。
普通に考えると、「それはやり過ぎだろ」という設定なのだが、本作の場合あんまりそんな風には感じさせない。「元々ネットで知り合った者同士で、顔を合わせた後もハンドルネームのままで会話をする」という設定で、それが全然不自然に見えないのだ。さらに、「お前は実は◯◯だったのか!」みたいな展開が連続するのだが、それについても、「マイナーなグラビアアイドルだった如月ミキのファンの集まり」ということもあり、違和感はない。これが人気アイドルだったらこんな偶然はあり得ないと感じるだろうが、本作では「D級アイドル」と表現されているので、それであれば、かなり自然な展開と言えるだろう。
物語の展開のさせ方も上手く、「この人物がこのタイミングでこの話をするのは納得感がある」みたいな流れで情報が出されていく。もちろん、全体を通した再検証みたいなことをしているわけではないので、振り返ってみたら「実はリアリティのない展開」もあったりするかもしれないが、観ている時にはそんな風に感じたりはしなかった。
しかも、公開当時の2007年は、今から18年前だから、僕は23歳。その頃はなんとなく、「オタク的なもの」にまだそこまで寛容ではなかった印象がある(あまりちゃんとは覚えていないが)。その時代にこの『キサラギ』という作品がどう受け取られていたのかよく知らないが、「推し活」が当たり前の現代においては、公開当時よりも本作は受け入れられやすくなっていると言えるかもしれない。そういう意味でも、なかなか面白く観れる作品ではないかと思う。
というわけで、内容としては先ほど説明した程度なのだが、もう少し詳しく書いておこう。
2006年2月4日に、マイナーなグラビアアイドルだった如月ミカが亡くなった。自殺と判断されたが、「自宅に油を撒き、それに火をつけた」という死に方で、自殺という判断に不審を抱くものもいた。
そして2007年2月4日、如月ミカのファンクラブサイトを運営する家元が呼びかける形で(最初に提案したのはオダ・ユージだったようだが)、ネット上での知り合いでしかなかった5人が「如月ミカ一周忌追悼会」に参加した。家元、オダ・ユージ、スネーク、安男、いちご娘。の5人で、彼らは顔を合わせてからもハンドルネームのまま呼び合い、お互いの素性をよく知らないまま会話を始めた。
しかし、盛り上がっている中、オダ・ユージが口火を切った。「如月ミカは自殺ではなく、殺されたのではないか?」と。如月ミカは亡くなる直前、マネージャーに遺言のような留守番電話を残しており、それが決め手の1つとなって自殺と判断されたのだが、オダ・ユージは彼女の死後独自の調査を開始し、その場にいたメンバーが知らなかった事実を様々に掘り起こしていたのだ。
そしてその過程で、1人の人物に疑いが向けられることになるのだが……。
というような話です。
個人的にはラスト、「その仮説だと、1点だけおかしな点が残る」という話になって以降に明かされる真相が上手いなと思った。5人のキャラクターや人間関係の要素まですべて伏線回収的に拾い集めている感じがあって面白い。ただ、ストーリー的なまとまりはあれでいいとして、その最後の結末に直接的に関わる人物の気持ち的には良かったんだろうか? つまり、「その人物がそれをしていなければ、もしかしたら如月ミカは死んでいなかったのでは?」と思ってしまったので、同じことをその人物も感じたりしたんじゃないか、ということだ。最後に如月ミカがそんな行動を取れたとするなら、逃げることだって出来ただろう。そうしなかったのは、その人物のある行動のせいなわけで、僕だったらかなり後悔するかもしれないな、と感じたりした。
まあそんなわけで、感想として書きたいことはあまり多く出てこないのだが、なかなか面白い映画だった。しかしそれにしても、小出恵介と香川照之が出ているってのは、なんか凄いよなぁ。配信等では観れない映画らしいが、恐らくそのせいなんじゃないかという気がするし。
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