【映画】「FUJIKO」感想・レビュー・解説
メチャクチャ面白かったわけではないけど、なかなか良かったかな。主演の片山友希の存在感が結構良かったなぁ。っていうか、好きなタイプの顔かも。そして彼女の雰囲気が、「バッタバタの人生」によく合ってた感じがする。葬式(か通夜)の時に泣いてる顔とか、メチャクチャ良かったもんなぁ。
ストーリーラインはとてもシンプルだ。1977年に子どもを産み、その後思いがけずシングルマザーとなってしまった富士子が、右往左往紆余曲折すったもんだの末に人生をどうにか軌道に乗せていく、という物語である。全然知らなかったが、公式HPに「監督が自身の“母の人生”と真正面から向き合い生まれた渾身作」と書かれていて、まあ実話そのものではないんだろうけど、「1977年に母親がシングルマザーになった」みたいな部分はきっとホントなんだろう。
物語は、保険のセールスレディが雷の日、休憩中の男性(飲食店勤務のようだ)に生い立ちの話を始める、なんてところから始まる。富士子は、まさに雷の日に娘を出産した。家業としてクリーニング工場を営む夫の元へと嫁いだのだ。
しかし、そこは(現在の価値観からすれば)あり得ないぐらい酷い家だった。娘を出産したばかりの富士子に、「すぐに働きに出てこい」と、夫の母・姉が言ってきたのである。言われた通りに仕事をするが、娘・麻理が泣く度に仕事を離れる。そんな様子を見ていた義母・義姉から、「麻理は私たちが育てるから、あなたは仕事に専念して」と言われてしまう。そして有無を言わさず麻理を連れ去ってしまったのだ。
その後なんやかんやとあって、富士子は夫の実家から麻理を奪い返し、さらに実家も出ることに決めたのだ。話を聞いてくれている飲食店勤務の男性には、「勢い余って」みたいなことを言っていた。
さて、実家を飛び出したはいいものの、じゃあどうするか。富士子は、懇意にしていた喫茶店のママを頼ってどうにか住む場所は確保したが、そこからが大変だった。0歳の麻理を預かってくれる保育園がないのだ(今はどうか知らないが、当時は0歳児を預かるところはほぼなかったそうだ)。富士子は片っ端から保育園へと直談判に行くが、すべて断られてしまう。が……。
というわけで、どうにか働きに出られるようになったものの、まだまだ困難は続く。それでもどうにか生きていかなければならない……。
というような話です。
今の時代でもシングルマザーは大変だと思うが、それでも以前と比べたら色々整ってはいるのだろう。しかし本作の舞台となる1970年代後半から前半に掛けては、全然そういう雰囲気ではなかったようだ。
印象的だったのが役所での対応。「0才児は預かれない」と担当者が突っぱねるのに対してどうしたらいいのか聞くと、担当者は「実家に頼ったら?」「相手の男性は?」と聞き、それを富士子が断ると、「だったら里親に出すぐらいしかないですねー」と言うのだ。まあ、当時はそういう状況だったのかもしれないが、それにしても酷い言い方だった。恐らくだが、担当者もそして社会的にも「離婚したあんたが悪い」というのが当然の風潮だったのだろう。怖っ!
また、父親が亡くなった際、兄弟も集まったのだが、東京で就職した兄が「お前は実家に戻れ」と富士子に命令する。また別の場面では、「これでようやく母親として胸張っていられるだろ」みたいなことも言っていた。そういう時代だったわけなんだが、やはりあまりにも酷いよねと思う。今もそういう男尊女卑は色んな場面で残ってたりするだろうし、ホント大変だよなと思う。
ストーリー的には、「もうちょい何かあると良かったかなぁ」と感じた。悪くはなかったが、あまりにもスルッと行き過ぎてしまったというか、いや、紆余曲折は紆余曲折なんだけど、「紆余曲折の中の王道」みたいな感じがあって、ちょっと物足りなかったかな。まあでも、これが実話そのものなんだとすればそれはそれで興味深い(まあでも、さすがにあの展開はフィクションだと思うが)。
冒頭で触れた通り、富士子を演じた片山友希は凄く良かった。本作には、ちょい役みたいな感じでリリー・フランキー、YOU、竹下景子、岸本加世子などが出てくるのだが、全編通じて関わってくるのは片山友希(とMEGUMI)ぐらいなので、彼女の存在感は割と重要だ。で、かなり良い雰囲気を醸し出していた。たぶん僕は彼女の存在を本作で初めて知ったと思うのだが、また気になる役者を見つけたなという感じである。岸井ゆきのみたいな感じで、美人側にも冴えない側にもナチュラルに立てそうな雰囲気があって、ハマれる作品は多いんじゃないかという感じもする。
あとどうでもいい話だが、僕は静岡出身で本作も静岡が舞台なので、「あんまりなさそうでいて、やっぱり静岡にもちゃんと方言ってあるよなぁ」と改めて実感した。特徴的なのは「~だもんで」ぐらいだが、後はちょっとした語尾とかイントネーションとかが、今も静岡に住んでる弟の感じに近いなぁ、なんて思ったりした。
で、エンドロールに「常田大希」の名前が出てきてビビった。どうやら、作中で印象的な形で登場する「Dear Chiyo」という曲(まあ、これは曲名ではないと思うが)を手掛けたみたいだ。にしても「なんで常田大希?」と思ったのだが、監督が元々MVやCM畑の人で、それでKing Gnuとも関わりがあったみたいだ。そういう繋がりは強いよなぁ。
というわけで、凄く刺さったというわけではないので書けることはあまりないが、エンタメとして観る分には普通に楽しめる作品じゃないかなと思う。個人的には、片山友希を発見できたので良かった。
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