【映画】「鮫肌男と桃尻女」感想・レビュー・解説

全体的に「なんのこっちゃ?」って感じの物語だったのだけど、思いがけず面白い映画だった。いやしかし、マジで意味はまったく理解出来なかったなぁ。だから、何が面白いんだかさっぱり理解できないし、不思議な感覚だなと思う。そもそもタイトルを何となく知っていただけの映画で、内容も監督も誰が出ているかも知らず、「レストア版が公開されるってことは割と有名な作品なんでしょう」ぐらいの感じで観た。タイトルからなんとなく「コメディ」っぽいイメージを抱いていたこともあって、全然違う感じで驚いた。

物語は銀行強盗から始まるのだけど、それは割とすぐに終わり、物語は2年後に飛ぶ。鮫肌という男(後にヤクザだと分かる)が山中を逃げている。そしてイカツイ連中がそれを追っている(彼らもヤクザである)。冒頭の時点では全然説明がなく分からなかったが、どうやら鮫肌は組の金を盗んで逃げているところのようだ。

さてそれとは別に、桃尻とし子という女性が登場する。彼女は、2年前の銀行強盗に居合わせた人物であり、そしてホテルで働く従業員でもある。ただ彼女は、こちらもあまり状況がよく分からなかったものの、ホテルのオーナーと結婚しているらしく(しかもウィキペディアによると、どうやら叔父らしい。「おじさん」とは呼んでたけど、まさか「叔父さん」だとは)、そしてそんなオーナーに嫌気が差している。それで家出することに決めたのである。

で、山の中で、車を運転していたとし子と逃げ回っていた鮫肌が邂逅する。とし子はなんとなく(だと思っていたのだが、ウィキペディアによると「鮫肌に惹かれた」からだそうだ)鮫肌についていく。とし子は恐らく、鮫肌が大金を盗んだことも、それでヤクザに追われていることも理解していないのではないか。「なんかヤバい状況だ」ということは理解していそうだが、恐らく「叔父よりマシ」と考えたのだろう。

こうして「逃げる鮫肌・とし子」「追うヤクザ」という構図になるのだが、さらにそこにややこしい要素が加わる。とし子の叔父が雇った殺し屋だ。とし子に執着している叔父は、「とし子が男を駆け落ちした」と判断。そして旧知の殺し屋に「とし子の連れの男を殺せ」を命じるのだが……。

というような話です。

僕が書いたストーリーだけ読むと、なんとなくシリアスな感じの雰囲気に思えるかもしれないが、そうでもない。コメディというほどの感じでもないのだが、全体的に「脱力している」という印象が強かった。普通ならカッコつけそうな場面でカッコつけた感じにせず、普通ならもっと笑える感じにも仕上げられそうなシーンをするっと描いていく。作り手側の「これ面白いでしょ!」「これカッコいいでしょ!」みたいな思惑は全然滲んで来なくて、リアルなわけではないけど誇張しすぎているというほどでもない、なんとも言えない絶妙なテンションが最初から最後まで続いていたなと思う。

そして、そんな印象を一層強くしているのが、ほぼ唯一と言っていい女性の登場人物である桃尻とし子だろう。先程も書いた通り、彼女は恐らく鮫肌が置かれている状況を大して理解していないし、それは当然自分自身に対しても同じことが言える。そして「だから」と繋げるべきか「なのに」と繋げるべきか悩むが、彼女はずっと「ここにいますけど、ここにはいません」みたいな雰囲気で作中に存在し続けるのだ。この感じが凄く良かったなと思う。

しかも彼女は途中までずっと「ホテルの従業員の服装」のまま逃避行を続ける。銀行の事務員みたいな服装で、山中を歩くのにも、ヤクザから逃げるのにも全然向いていない。そんな、とにかく「あらゆる意味で場に馴染まないはずの存在」が、どうしてか、しばらくすると鮫肌ととても良いコンビに見えてくるから不思議だ(まあ、服を着替えたってのもあるかもしれないけど)。

いやホント、本作で扱われている要素とかキャラ設定とか役者の演技って、「寿司とラーメンと焼き肉を一緒に料理しました」みたいな、「どう考えてもそんなの合わないでしょ!?」っていう組み合わせな気がするのに、出力されたものは結果的に「何がどうなってるのか全然分からないけど、絶妙なハーモニーですね」みたいな感じがあって、マジで意味が分からない。まったく不思議な映画である。

あと、設定やキャラ設定から想像するよりも遥かにバイオレンス要素が少ないのも意外だった。最後の最後はまあともかく、割と最初の方で血みどろのドンパチがあって以降は、流血とか暴力とかはあまり出てこない。正直、ストーリーと言えるようなストーリーが存在しない物語で、だから普通はバイオレンス的な要素に頼りつつ展開させるんじゃないかって気になるけど、全然そういう感じで物語を進めない。これもなんか凄い手腕だなという感じがした。

さて、本作にはなかなか個性的な役者が出てくるが、鮫肌を演じた浅野忠信がカッコいいのは当然として、岸部一徳もなかなかカッコよくてビックリした。あとは、殺し屋を演じた我修院達也はインパクト大だったなぁ。

で、本作は、映画の最初の方で役者紹介みたいな映像が始まるのだけど、その中で「BOBA」って表示された役者がどう見ても田中要次で、「田中要次だろ」って思ったら、やっぱり田中要次みたい(昔はBOBAって名前だったようだ)。まあどうでもいい話だけど。

いやしかし、基本的にストーリーにしか興味がない僕には大変珍しいことだけど、ストーリーと言えるようなストーリーがほぼない本作は、なんかメチャクチャ面白かった。変な映画。


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