【映画】「XiXi、私を踊る」感想・レビュー・解説
もう少し面白いかなぁ、と期待感があったのだけど、思ったほどではなかったかな。つまらなくはなかったけど、そこまで面白いとも言えなかったかな。
XiXiというのは、中国人ダンサーだ。彼女は今、ベルリンで生活している。
まず、そこに至るまでがなかなかぶっ飛んでいる。
彼女は中国の映像系の大学を中退しているらしいが、その頃に、中国に交換留学生としてやってきていたフランス人(かどうかは分からないが、故郷がフランス)のメデリックと出会い結婚。娘ニナをもうけた。しばらく中国にいたようだが、XiXiの方からフランスへの移住を提案し、家族でフランスに移り住んだ。メデリックが技師として働き、XiXiが専業主婦という形である。
XiXiはニナが幼い頃から、「生涯創作プラン」と名付けたビデオ日記を撮り続けていた。始めこそ家の中だけでだったが、そのうち外でも撮るようになった。また彼女は、撮影者にも被写体にもなった。
そしてそんな生活を続ける中で彼女は、「ここでの私は自分を見失っている。なぜ受け身のまま生きているんだろう?」というような疑問を抱くようになる。異国の地で専業主婦をしているという自身の境遇に疑問を抱いたのだろう。
さて、作中で、「彼女はある時からビデオ日記を数ヶ月休んだ」と字幕で表記される。そしてその後で、「彼女がビデオ日記を再開したのは、夫と娘を置いて放浪の旅に出るようになってからだ」と続くのだ。
え???
彼女は別に、夫や娘のことが嫌いになったわけではない。むしろ、深く愛しているようだ。しかしそれ以上に、「このままここに留まっていること」に耐え難くなったのだろう。そんなわけで彼女は、ヒッチハイクで野宿もアリというムチャクチャな旅を続け、そしてベルリンへと辿り着いたのである。
これだけでもなかなかのものだが、実はこの行動、彼女の母親と同じなのだそうだ。XiXiの母親は、夫の不倫を知って離婚を申し立てたが、夫は「君のことを愛しているから離婚はしない」といい切ったそうだ。そしてさらに、「もしも離婚したいなら、男児を生んでからにしろ」とも言ったという。
そしてその後生まれたのがXiXiだったのである。母親は、XiXiが4歳の時に家を出て、「これからは芸術活動にだけ時間を費やす」と決意したのだそうだ。作中には、XiXiが母親とやり取りする場面も映し出されていたので、どこかの時点でまた関わりが復活したのだろうが、まあなかなかファンキーな一家である。
で、本作は、そういう形式のドキュメンタリーはそれなりにあると思うが、監督自身もまたかなり前面に出てくる。本作は「XiXi」と「XiXiを撮る私」の2人が主人公と言っていいように思う。
監督はこの映画の撮影を始めた当初、ヨーロッパの映画学校を卒業したばかりだったという。台湾出身なのだが、卒業後も台湾に戻りたいとは思えず、ヨーロッパをうろうろしていた。そんな時、ベルリンで出会ったのがXiXiだった。
彼女が台湾に帰りたくないと思っていた理由は祖母にある。祖母は「留学中の生活のことは忘れなさい。普通に生きていくのよ」と常に言ってくるような人なのだそうだ。監督は、「故郷に戻って『いい娘』でいるのは無理だと思った」みたいなことを言っていた。
台湾には「子供は原石だ」という発想があるという。これは「子供は角だらけだ」ということを意味している。そして「大人になる」というのは、「そんな角を無くしていくこと」であり、それこそが「理想の生き方」とされているのだそうだ。祖母は常に、「自分で角を削らなければ、社会に削られるだけだ」といつも言っていたという。
そういう環境から遠ざかりたいと思っていた時に、あらゆる意味で「自由そのもの」みたいなXiXiと出会い、そして彼女と関わることで監督自身も変化していった、という記録が収められた作品である。
さて、本作は「抑圧された女性の解放」みたいなテーマが底流にあると思うのだけど、問題は、XiXiがちょっとぶっ飛びすぎていて、そのテーマがメチャクチャ霞むということだ。なにせ、「突然夫と娘を置いて家を出てヒッチハイクの旅に出る」ぐらいだし、上裸で踊ったり、監督とおそろいで角刈りにしたりとやりたい放題である。
また、元夫(書き忘れたが、既に離婚しているらしい)のメデリックは、ニナにとってXiXiの存在は悪影響でしかないと判断し遠ざけようとしている。まあ、それも比較的当然の判断だろう。「主張の真っ当さ」で言えば、どう考えてもメデリックの方が圧倒的に真っ当だ。
XiXiがもう少しギリギリ常識の範囲内の人間であれば、監督自身の語りによっても浮かび上がる「抑圧された女性の解放」というテーマは見えやすいし受け入れやすくもなると思うのだが、いかんせんXiXiが狂気的な人格なので、そのテーマはちょっと薄らいでしまう。
なのでそういう意味で言うなら、「抑圧された女性の解放」みたいなテーマは諦めて、「XiXiの人間的魅力」みたいな方向に全振りした方が良かったんじゃないかなぁ、という風に感じてしまった。
さて、それはそれとして、個人的に羨ましいなと思うのは、「愛する夫と娘を置いてまで、自らを突き動かす何かがある」ということだ。僕には本当にそういうものがないので、いいなと思う。人間としてはどうかと思うけど、そういう「抑えがたい衝動」みたいなものがちゃんとあって自覚できている人生の方が良かった気がするなとどうしても考えてしまうのだ。
彼女は監督とのインタビューの中で、「後悔はしていない。自分が選択した道を進むことが出来たから」みたいなことを言っていた。XiXiは後半、結構大変な状況に陥るのだが、僕の記憶だと、その後に流れた場面だったと思う(実際の時系列順かは不明だが)。そんな風に言えるような何かが欲しかったなと思う。
そんなわけで、正直思っていたほどの面白さではなかったが、XiXiの存在感はなかなか圧倒的だったし、そういうエネルギッシュな感じは羨ましかった。
いいなと思ったら応援しよう!
サポートいただけると励みになります!