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知的好奇心しかない

昔から色んな「欲」が少なかった気がする。欲しいものとかやりたいことはあまりなかったし、「食欲」「性欲」「睡眠欲」「名誉欲」「支配欲」「独占欲」とかそういうものも、ゼロではないが、他者と比べるとたぶんかなり薄いんだと思う。

で、結局僕には「知識欲」しかない。とにかく「知りたい」という欲求が強いのだ。

以前テレビ番組の中でマツコ・デラックスが、「昨日まで知らなかったことを知ってから死にたい」みたいなことを言っていたのを耳にしたことがある。そしてその時に、「あー、僕もそれだ」とメチャクチャ共感させられた。そう、僕もとにかく「知りたい」のだ。「知ってどうしたい」みたいなことは別にない。ただ知りたい。何かを知れば知るほどより知りたくなるし、だから「知りたい」という欲求が途切れることはない。本当に僕は、この「欲」だけでどうにか生き延びてきたなという感覚がある。

だから研究者とかになったら良かったのかもだけど、ただ飽きっぽいというか、「色んなことを知りたい」という感覚の方が強いのもあって、「1つのことを深く」みたいな方向にはあまり行かないのが残念なところだ。「広く浅く知りたい」という人間は残念ながら研究者には向いていないだろう。

「知りたい」というのは決して「はっきりした知識」みたいなことだけではない。僕はアートや美術に触れることも結構あるのだが、それは「分からない」という感覚を得るためである。「知りたい」と「『分からない』に出会いたい」はかなり近い感じがするし、さらに「分からない」に出会うことで「自分がどういう人間なのかを知れる」という側面があるとも言えるだろう。「よく分からないけどなんか良い」みたいな感覚になれるものと出会うことで、今まであまり認識されなかった自分の一面が理解できるような気がするのだ。

そして同じようなことは「人間」に対しても感じる。「人間」も「よく分からない」方が面白いと思うし、そういう人と関わりたいなと感じることが多い。誰が何をどんな風に考えているのかみたいな「行動原理」「価値観」に興味があるのだ。だから僕は、「どうやったら目の前にいる相手がそういう話をしてくれるか?」みたいなことを意識してコミュニケーションを取っている。「こいつには何を話しても大丈夫そうだ」と思ってもらうことで、相手の話を引き出したいと考えているのだ。

今の時代、AIの存在が強くなりすぎて、「知識をたくさん持っていること」の価値が以前にも増して薄れているように思えている。確かに、「仕事」や「社会生活」みたいな領域においてはその通りかもしれない(ただ、AIの発展によって誰でもある程度の知識が得られるようになったことで、「本当の専門性」みたいなものが重視されるようにもなるとは思うが)。ただ、「人としての面白み」みたいなものは「知識の有無」によっても大きく変わると思っている。「思考」も「価値観」も「既に脳内にあるものだけ」ではなかなか深まらないからだ。「知識を取り込んで、脳内でグチャグチャして、さらにそれを何らかの形でアウトプットする」みたいなことを繰り返している人の方が話していても面白いと感じることが多いし、僕はそういう人と関わりたいなと思う。

以前読んだ『下流思考』(内田樹)の中で、子どもたちが授業中に「それって何の役に立つんですか?」と質問して教師を困らせる、みたいな話に触れられていた。結構前の本だし、さらにその本で取り上げられている事例も出版時点よりも前のものなので、今の教育現場でどうなっているのかは分からない。ただ、子どもたちが「将来役に立つ知識しか要らない」みたいに考えている状況はさほど変わっていないのではないかと思う。

で、先程書いたことと同じだが、「社会で役に立つこと」と「人間的魅力のために役に立つこと」は全然違う。そしてそれがどんな知識であれ、後者の「人間的魅力のため」にはなり得ると思っているし、AI時代で「知識を持っていること」が重視されなくなっているからこそ余計に、「知識の有無」が人間的魅力を大きく左右するとも言えるのではないかと思う。

とまあ、我田引水的に「知的好奇心を持っている方が人間として魅力がある」みたいな主張をしてみた。僕自身がどういう人として周囲から見られているか分からないが、「面白い・興味深い奴だな」みたいな見え方になっているとすれば、それはほぼ100%「知的好奇心」のお陰だと思う。

だから逆に、「同質性の高い集団」は好きではない。僕は「僕とは違う(同じでもいいのだけど)あなたの考えが知りたい」わけで、趣味仲間や家族など「同質であることが求められがち」な状況は割と避けてきた。「うわっ、メッチャ同じこと考えてるじゃん!」みたいな興奮を覚えることはよくあるが、しかしそれは「僕とあなたは違う人間だ」ということが諒解されているからこそであり、「同質性の高い集団」ではあまり起こらないように思う。

そんなわけで、僕は常に「自分とは違うもの」「よく分からないもの」に出会いたいと思っているし、そういう感覚がどうにか僕を生き延びさせているなとも考えている。

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