【乃木坂46】「キャプテン・秋元真夏」と卒業

※乃木坂46に関する他の記事は以下:
<索引>【乃木坂46】
https://note.com/bunko_x/n/n63472c4adb09

映画「いつのまにか、ここにいる」で非常に印象的だったのが、秋元真夏の「卒業観」だ。

「いつのまにか、ここにいる」は、明確な中心的なテーマがあるわけではないが(乃木坂46の「仲の良さ」というのが大きな括りではあるが)、描かれているものの一つとして「西野七瀬の卒業」があった。乃木坂46の絶対的エースの一人として、グループを牽引してきた中心メンバーである西野七瀬の卒業は、乃木坂46というグループ全体に大きな影響を与えるものだった。

そしてそれはもちろん、メンバー個々人にも影響与えるものだった。中でも一番強い(少なくとも表向きにではあるが)反応を示したのが、秋元真夏だったと思う。映画の中で、「卒業って形、無くさない?って思ったことは何度もあります。」と言って涙を流していた。

映画について聞かれたインタビューでも、こう繰り返していた。

【―劇中のインタビュー中にも、真夏さんは泣いていましたよね。
卒業の話になった時ですね。岩下(力)監督に「卒業って必要なんですか?」って質問をされて、私もそれはずっと考えていたことなんです。今は個人でもいろんな活動ができているんだから、卒業をせずに所属していてもいいんじゃないかな、って。
―乃木坂46に籍を置いたまま、個人活動をより充実したものにする?
そうですね。『実家』みたいな感じで、たまに帰るくらいの場所だとしたら、卒業をする必要はないんじゃないか?というのをずっと考えていたところに、監督からその質問がふっと来て。今までそれに触れたらいけないことだと思っていたし、「アイドルには卒業があるのが当たり前なんだ」って思わなきゃいけない、っていうふうに感じていたので、岩下監督に「卒業って必要なんですか?」って聞かれた時に、ちょっと心が保てなくなって泣いちゃいました。】「BUBKA 2020年9月号」

「卒業」というのは、僕の認識では、女性アイドルグループにしかない。ジャニーズを始め、男性アイドルグループの場合、グループ全体で活動を止める、というケースはあるし、「やむを得ない事情」で脱退する、ということもあるが、「卒業」という形で送り出される、ということはほとんどないだろうと思う。もはやファンの側も、それが当たり前のことだ、と思っている。「女性アイドルグループには、卒業という仕組みがある」ということに、違和感は覚えない。アイドルの側も、ずっと(なのかどうか、知識は持っていないが)そうだったのだから、そういうものとして受け入れていることだろう。アイドルになった時点で、「卒業」ということがついて回る。

しかし確かに、別にそうしなければならないわけではないはずだ。もちろん、女性アイドルはどうしても「若さ」ということが大きな強みになるし、その「若さ」の新陳代謝のために「卒業」という仕組みがあることは理解している。僕が女性アイドルグループの運営側にいれば、当然のようにそうするだろう。ただ、システムとして組み込まれている必要はない。アイドルの側から、こういう発言が出てくることは、面白いと思った。

インタビューの中で、「今までそれに触れたらいけないことだと思っていた」と言っているのが印象的だ。昔から、ずっと思っていた、ということだ。それこそ、メンバーの卒業の度に思っていたのだろう。しかし、「卒業なんて必要ない」という発言は出来なかった。そういう発言をしてはいけない、と自制していた理由までは明かされていないから明確な理由までは分からないが、秋元真夏のことだから、グループ全体のことを考えて新陳代謝が絶対的に必要だ」と思っていた、というか、運営側がそう考えるのは当然だと思っていた、ということだろう。

「卒業なんて必要ない」という形で、誰かの卒業を止めることは出来なかったが、自身の卒業についてはそれまでにも語っていた。

【今年で25歳になるので、「卒業しないで」って言われることが増えました。でも私、6年間で辞めたいと思ったことは一度もないんです。】「日経エンタテインメント!アイドルSpecial2018春」

【―卒業を決めたメンバーがよく「ここしかないタイミングだった」みたいに言いますよね。その感覚って今まで一度もないですか?
まったくないです。たとえば、私がこの仕事を嫌だと思って「もうやめます!」って事務所に言うとするじゃないですか。絶対、明日には後悔してますもん。その様子が100%目に浮かぶんですよ(笑)。あと、実際にそういう夢を見たんです。
―夢?
神宮のライブで「乃木坂46を卒業します!」って発表をする夢を見たんです。誰にも事前に相談せず、ステージ上でいきなり発表したからスタッフさんも動揺しているし、「突然の発表!」ってあちこちのニュースで取り上げてもらうんです。でも、次の日になって、私が「やっぱり昨日の撤回したいんですけど、無理ですか?」って土下座しに行ってる夢を見たんですよ。それが怖すぎて】「BUBKA 2019年9月号」

映画の発言を知った後で改めてこういう想いを見ると、これは自分の話をしているのではなく、周囲の人間へのメッセージだったのではないか、という気もする。こういう理由であなたのことを引き留めることはできない、でも、こういう考え方もあるよね、こう考えてもいいんじゃない、別に絶対卒業しなきゃいけないわけでもないんだよ、そうだよね、という訴えだったのではないかと思う。映画について聞かれたインタビューで、ようやく話せるといった感じで、こんな風に言っている。

【―映画でインタビューを受けた時と、現在では「卒業」に対する考え方や捉え方に変化はありますか?
基本的には変わらないです。変わらないですけど、やっぱりいろんな考えもあるんだな、というのは映画を観て余計に感じました。卒業に対するみんなの考え方が描かれているじゃないですか。私とかずみん(高山一実)はわりと似ていて、「ずっといればいいのに」とか「もし誰かが卒業しようと思ったら引き止めよう」みたいなことを普段からよく話しているんです。でも、当たり前なんですけど、卒業を決断して発表するまでにいろいろな思いがあることを、今回の映画を観てあらためて知りました。だから、むやみやたらに引き止めるべきじゃないなって思うんですけど、ただ、(桜井)玲香のことは…】「BUBKA 2019年9月号」

さて、そんな秋元真夏の「卒業観」をあらかじめ知っていたので、雑誌のインタビューで次のような発言をしていて、なるほどなぁ、と感じ入った。

【でもキャプテンに任命されたことで「もうそういうことを気にしなくてもいいんだ!」って思えたんです。「本当はもっと長くグループにいたいのにどうしよう?」と思っていたところにとどまる理由を与えてくれたみたいな。】「BUBKA 2020年2月号」

桜井玲香の卒業に伴って、新キャプテンに指名された秋元真夏が何を考えていたか、シンプルに伝わる言葉だ。

秋元真夏がキャプテンに指名されたことが、特にファンにどう受け止められているのか、僕はよく知らない。たぶん悪い意見はあんまりないと想像するけど、「どうして?」というような反応は少しはあるかもしれない。僕自身、秋元真夏のこの発言を知るまでは、乃木坂46のキャプテンに秋元真夏が相応しいかどうか、ということではなくて、「秋元真夏は大丈夫だろうか?」と考えてしまった。今からキャプテンをやるって、これからのこととか考えると色々大変じゃない?というような。

しかし、そんな心配は、まったくの杞憂だと分かった。

【―キャプテンという重責をそんなふうに受け止められるなんて素敵です。
これは「まだいてください!」ということなのかな?って勝手にポジティブに受け取っちゃいました(笑)。結局、いまこのお仕事がなくなってアイドルでなくなることが私にとっていちばん困ることなんですよね。いちばんの居場所になってるこの場所がなくなることがなによりも怖くて。】「BUBKA 2020年2月号」

彼女自身、1期生の卒業が相次いだことで、【こうなってくるとさすがにちょっと先のことを考えなくちゃいけないのかなって気持ちになってきて】「BUBKA 2019年2月号」という気持ちだったと発言している。世代交代が必要なのに、自分がグループに残っているのは、乃木坂46にとってマイナスなのではないか、という感覚になっていたタイミングでキャプテンに指名されたから、安心したという。秋元真夏らしいなぁ、という捉え方だ。

これまでの発言を踏まえると、秋元真夏は、キャプテンに向いているだろうな、と思う。

【(何故人のことを優先して行動できるのかと聞かれ)あとはなんだかんだで乃木坂46に5年ぐらい在籍していて、このグループが大好きになっちゃったんですよね。ここでなにをしていても、別に自分がちょっとすり減るぐらいなら別にいいかなって】「BUBKA 2017年10月号」

【自分から「こういうことに挑戦したい」ということはあまり言いません。自分を必要としてくれる場所があればなんでも出たいな、という考えなので。どんなジャンルでも信頼してお仕事を任せてもらえる人になりたくて。「安心して頼める」とか「お願いしたらきっちりやってくれる」と思ってほしいので、そのためにも、声をかけていただいたお仕事はすべて全力で頑張ろうって思います。】「日経エンタテインメント!アイドルSpecial2018春」

【良くも悪くも、元々の性格が八方美人なんです。争い事は嫌いだし、みんなと仲良く平和に過ごすのが一番だと思っちゃうから。自分も目立ちたいし、メンバーとも仲良くしたい。スタッフさんから「この子ならこれをやってくれる」って期待されたら、それもしっかり実現したいし、ファンの方からも「この子、頑張ってるな」って思われたい。自分がこう思われたいって気持ちが、いろんな方向に向いてるせいで、色んなことを考えるようになったんだと思います】「BUBKA 2019年4月号」

常に「誰かのために」というスタンスを失わない人だな、という印象は強くある。もちろん、他のメンバーにもそういう気持ちはあるだろうけど、秋元真夏はそれを突き詰めている人、というイメージだ。「自分がちょっとすり減るぐらいなら別にいいかなって」というのを、ナチュラルに言ってるんだろうなぁ、という感じがするし、メンバーも、言行一致していることが分かっているだろう。そういうスタンスは、キャプテンに合っているように思う。

また、他人との関わり方も絶妙なようだ。齋藤飛鳥が以前雑誌のインタビューで、【真夏みたいな人間って本当にいるんだなって感じはあります。全員に優しくしてくれるし、全員にちょうどいい距離感で関わってるけど、でも八方美人みたいな嫌味がなくて。】「BUBKA 2017年10月号」と言っていた。あの、距離感を取るのが難しそうな(けなしてません!)齋藤飛鳥に、こう言わせる秋元真夏の凄さみたいなものは感じる。1期生でありながら、みんなと同じスタートが切れずに苦労した、というエピソードは有名だろうが、その時に「どう受け入れてもらえるか」という経験を重ねたことが、今の秋元真夏に繋がっているのだろうと思う。

それで辛くならないのだろうか、と心配にもなるが、彼女の発言からは大丈夫そうに思える。

【これが3~4年前だったらめちゃくちゃ悩んだと思うんですよ。落ち込みまくって「どうしよう?」って。でもなぜいまそういうことになっていないかというと、別に無理して自分をよく見せようとしてないんですよね。できないことだったらそれはもうできないってそのまま出しちゃってるんです。それは後輩たちに対してはちょっと申し訳ないんですけど(笑)。だから後輩たちに助けを求めることもあるし、特に2期生は一緒に活動している期間も長いから頼りやすくて。さらけ出しても受け止めてくれることがわかっているからこそ、あまりがんばりすぎないでやれてるというか。】「BUBKA 2020年2月号」

こういう自覚を持てているなら、安心だ。

秋元真夏はかつて、乃木坂46の元キャプテンである桜井玲香、そして、初期から乃木坂46の屋台骨として重責を担ってきた生駒里奈に対して、こんな発言をしている。

【目には見えない乃木坂らしさ。それは玲香が作ってくれたこの優しい空気感だったと思います。】「乃木坂46新聞 「真夏の全国ツアー2019」全公演リポート」

【デビューしたてでぼんやりとしたグループのイメージを生駒ちゃんが作り出した】「BUBKA 2018年5月号」

彼女にとっての「キャプテン像」というのは、その存在によって、グループのカラーが示されるようなものなのだろうと思う。秋元真夏が、その理想の「キャプテン像」に向けて進んでいくのか、あるいはまた別の形を目指すのかは分からないが、グループ愛の強い乃木坂46のメンバーの中でも人一倍その想いが強い秋元真夏は、みんなにとって良い方向に導いてくれることだろう。

そんな彼女は、2018年の発言だが、乃木坂46の現状に対してこんなことを言っていた。

【―乃木坂46が大きくなったことで、逆に悩んだりすることはありますか?
乃木坂46というものが先走りすぎてて、私たちは後ろから追いかけているような焦りはあります。みんなが知ってくれている乃木坂46という箱の蓋を開けたら、中身が追いついていないというか。みんなが求めている乃木坂46が何なのか、わからなくなる時がありますね。】「BRODY 2018年10月号」

確かに、乃木坂46という存在は非常に大きくなっていて、だからこそ、みんなが考える「乃木坂46像」もどんどんと発散していっている。求められているものに対して全力を出したい秋元真夏は、その「求められているもの」が焦点を結ばずに、どこに進んでいいか分からないという難しさを吐露している。

また、キャプテンになってからは、こんな風にも感じているという。

【―東京ドーム公演を実現してレコード大賞を2年連続受賞の偉業を達成した乃木坂46が、これから先に成し遂げようとしていることはなんなのかという。
いまはなかなかグループ全体でこれを目指すっていう目標が掲げられないから、それは私たちにとってものすごく大きな課題で。1~2期生は乃木坂46のことが好きすぎてこのまま変わりたくないっていう意識がすごく強いんですよ。昔からの乃木坂46を守っていきたいという意識がすごく強い。その一方、3~4期生はずっと憧れていた乃木坂46に入ってきて、先輩たちに追いつこうっていう意気込みでがんばっていて。だから、それぞれでちょっとがんばりの方向性が違う部分があるんですよね。そこはめちゃくちゃ悩みどころなんですけど。】「BUBKA 2020年2月号」

桜井玲香や生駒里奈はある意味、「これが正解だ」という打ち出し方ができた。2人とも、メンバーに対してそういう言い方はしなかっただろうが、乃木坂46を作り上げてきた1期生として、「みんなこうしていこう!」という、ある方向に引っ張っていくような舵取りも出来た。しかし、3期生・4期生と、どんどん「テレビで乃木坂46を見て、憧れて加入した世代」と一緒に活動していくことで、「みんなこうしていこう!」では難しくなっていく。何故なら、3・4期生にとって、先輩の「みんなこうしていこう!」は、ある意味で絶対的な命令に聞こえてしまうだろうから。恐らく秋元真夏は、そういう状況を回避したいのだと思う。乃木坂46のメンバーがインタビューアーに「後輩に期待すること」を聞かれて、よく答えているのが、「乃木坂46を壊してほしい」ということ。秋元真夏の発言にもあるように、1・2期生には、それは出来ない。だから後輩にやってほしいのだけど、後輩は後輩で1・2期生のやってきたことに憧れを持っているからなかなかそうはならない。上述の悩みは、「みんなで同じ方向を向けてないから、向こう!」というものではなく、「同じ方向を向いてはいけない面々を、そのままの状態でどう一つにするか」という難しさについてなのだろうと思う。

乃木坂46は、どんどんと新しい局面に突入していく。トップアイドルになった今も、そこに安住せず、常に危機感を抱きながら先を見据える彼女たちだから、悪い方向に進むことはないだろうが、絶妙なバランスを、秋元真夏には舵取りしてほしいと期待している。

いいなと思ったら応援しよう!

長江貴士 サポートいただけると励みになります!