【映画】「アメリ デジタルリマスター版」感想・レビュー・解説

いやはや、絶妙に奇妙な物語でなかなか面白い。なんとなく「オシャレ映画」というイメージだけあったのだけど、主人公のアメリが思った以上になかなかキテレツな人物で、だからそのオシャレさ以上に、興味深さの方が勝った感じだ。

まず、アメリが大人になるまでの子ども時代の話がヘンテコで面白い。父親は医者で、母親が教師。アメリは、父親に抱きしめてもらいたかったがそれは叶わず、だから、月に1回父親から検診を受ける際に気が動転し、心臓の鼓動が異常な速さになってしまう。それ故父親はアメリのことを「心臓病」と信じて、学校にも行かせなかった。家では、教師である母親がアメリに勉強を教えるが、元々情緒不安定だった母親との関係性はなかなか厄介なものだった。さらに学校に行っていなかったため友達もおらず、アメリは「空想の世界」に逃げ込むことになる。

また、「クジラ」と名付けた金魚を手放さなければならなくなった後、母親からカメラを買ってもらったのだが、家の近所で撮影をしていると、目の前で隣人が車で事故を起こした。するとその隣人はアメリに、「お前が写真を撮っていたから事故が起きたんだ」と信じさせる。そうなると大変だ。テレビをつければ、色んな事件、事故、災害のニュースがやっている。アメリはそれらも、「自分が写真を撮ったせいかもしれない」と考えてしまう。しかし、真実が分かった後、アメリは隣人に復讐を決意するのだが、この復讐もなかなか面白いのだ。

こんな風に、かなり奇妙な子ども時代を過ごしてきたアメリは、やはりそのまま、ちょっと変わった大人になっている。

大人のアメリは、「ドゥ・ムーラン」というカフェで働いている。このカフェにも、なかなかキテレツな従業員・客がいて、アメリはその中で比較的楽しく過ごしているわけだが、やはり友達はおらず、人と関わるのが苦手で、空想の世界から抜け出せずにいる。

そんなアメリの人生を変えることになったのが、ダイアナ元妃の交通事故である。しかし、事故そのものがアメリに影響を与えたわけではない。事故のニュースを目にしたアメリは驚き、思わず手に持っていた何かを落としてしまったのだ。それがコロコロと転がり、壁の一部に当たる。すると、どうやらその壁の一部が外れるようだと気づいたのだ。中には、恐らく以前住んでいたのだろう少年が、宝物を隠したのだろう箱が見つかった。

そこでアメリはこんなことを考える。もしも40年前に住んでいた少年を探し当ててこの宝箱を返したら、凄く喜んでもらえるのではないか、と。で、もしそれが実現したら、アメリ自身も自分の世界から飛び出そうと決意する。ダメなら、それまでだ。

みたいなところから物語が始まっていく。まあ、これだけでも、「なんだそのストーリー」ってな感じなもんだろう。

さて、その「元少年探し」は、割と早い段階で解決する。しかし、これでアメリの中の「何か」に火がついたのか、アメリはさらに自分の周りに「思いがけない奇跡」を生み出そうと奮闘していくことになる。この展開も、なかなか面白い。この展開は割と「伏線回収的な要素」が強いからだ。全然物語と関係ないだろうと思っていた要素が、「なるほど、それがそれとそんな感じで繋がるわけなんですね!」という展開になっていくからだ。この辺の描写は正直なところ、ストーリーがあるような無いようなという感じなのだけど、でもとても面白い。アメリの動機が謎すぎることも面白いし、全員ではないにせよ、アメリの行動によって良き方向に進む人物も確かにいるからだ。

さて、さらにその物語の背景で、もう1つストーリーが展開していくことになる。正直僕は、この要素についてはしばらくの間上手く捉えきれていなかった。つまり、「アメリの謎のお節介に関係する何か」だとばかり思っていたのだ。でも、実はそうじゃないことが次第に分かってくる。いや、分かる人にはもっと早い段階で分かっていたのかもしれないけど、僕は割と後の方になって「なるほど、そういうことね!」となった。

まあその要素は、割と分かりやすい名前をつけられる展開ではあるのだけど、でもそういう風に要約しちゃうのも「なんか違うなぁ」という感じになる、やはりヘンテコな展開なのだ。何せ、舞台が「証明写真機」なのだ。意味が分からないだろう。ただ、「なるほど、アメリならこうなるよなぁ」という謎の説得力もあって、だからこれは、それまでのアメリの描写が見事だった、ということに尽きると思う。普通には、こんな展開はまず成立しない。「アメリ」という要素が代入されるからこそ、このヘンテコな連立方程式は解けるのである。

あとはホント、パリの町並みが画になるなぁ、と思う。なんでかそれが、「アメリのヘンテコさ」と結構マッチするのだ。不思議である。

さて、別にそれを狙ったわけではないのだけど、僕が観たのは実は「デジタルリマスター版」ではなく、公開時と同じ35mmフィルムのものだ。いくつか映画館の選択肢がある中で、上映時間で選択したところユーロスペースで観ることにしたのだが、ユーロスペースだけは公開当時のフィルムでの上映だったのだ。まあ僕は、映像のことはよく分からないので、フィルムだろうがデジタルリマスター版だろうが何でもいいのだけど、確かに、フィルム独特だろうざらついた感じがあって、それはそれで良かったなぁ、と思う。なんか、ポスターもくれたし。

そんなわけで、観れて良かったなぁと思う。たぶん、公開した当時に映画を観ている人だったら(僕がちゃんと映画を観るようになったのは、ここ10年弱ぐらい)、「こんな映画観ない!」と判断していたように思うけど、全然好きなタイプの作品でした。良き良き。

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