【映画】「ここは退屈迎えに来て」感想・レビュー・解説

人生において、戻りたい瞬間はどこにもない。
過去のどんな瞬間にも、別に戻りたくない。
常に僕は、現在から未来の方向へ進んでいきたい。
過去からは、離れたい。
過去に対して「捨てる」なんて強い言葉を使うつもりはないけど、自分が通ってきた過去には、常に興味がない。

過去に戻りたい、と思う人生は辛いだろうな、と思ってしまう。
それは常に、今の自分を否定する行為でしかないからだ。
だから僕は、過去が輝いていなくて良かったと思う。
暗黒というほど酷い人生だったわけじゃないけど、未来の方が楽しそうだと思える人生で、僕は良かったと思う。

子供の頃、自分の未来には何もないと思っていた。
どこにもたどり着けないし、っていうかたどり着きたいと思える場所もなかったし、何もしたくなかったし、そしてその時も別に楽しいわけじゃなかった。
それから、騙し騙しずっとやってきたけど、結局今の僕は20代の頃の蓄積で成り立っているし、20代の僕は10代の頃の経験で成り立っている。そう考えると、長かったけど、ようやく今、色々やってきたことが目に見える形に集約し始めているんだなぁ、という感じがする。

どの時代にも、どの地域にも、“椎名”みたいな高校生はいるだろう。そんな“椎名たち”の中で、どれだけの人間が、「高校時代に戻りたい」と思わない人生を送れているだろうか?
そう考えれば、ろくでもない学生時代にも、なんとなく価値を感じられるような気がする。

内容に入ろうと思います。
この映画は、いくつかの時代を縦横無尽に飛び回る。2013年、2010年、2004年…。
2013年、「私」は地元でフリーのライターとして生計を立てている。高校を卒業して約10年、東京に出ていたけど、特にこれといって何があったわけでもない。相棒のカメラマンである須賀は、結婚し子供もいるが、未だにリトルプレスから写真集を出したかったとか、藤代冥砂が羨ましいとか言っている。でも、その気持ちも分からないではない。
高校時代の友人であるサツキと久々に再開し、なんとなく流れで椎名に会うことになった。高校時代、彼の周りは常に華やいでいたし、楽しそうだった。そんな、みんなの憧れみたいな人。久々に会いに行くので、なんとなくウキウキしている。
そんな2013年の彼らが高校時代を思い出すようにして、2004年の出来事が描かれていく。そして、何らかの形で椎名と関わる人達の話も進行していく。
東京には何もなかった。私はまだ何者にもなれていない。いつになったら私は、何者かになれるんだろう…。
というような話です。

なんとなくこの映画には期待していました。面白そうな予感があったんだよなぁ。でも、思っていた感じとはちょっと違ったかな。

僕が勝手に期待してたのは、「もっとグサグサ来るんじゃないかな」ということでした。原作を書いた山内マリコのことを知っているからかもしれないけど、「地方と東京」とか「今と高校時代」とか「現実と夢」とかの対比が、『浮ついて生きている』(この表現は映画の中で登場する)人を抉っていく映画なんじゃないかな、と思ってたんです。そういう鋭さを持った映画なんじゃないかななんて、勝手に思ってました。

でも、割とそうでもなかったですね。確かに、見る人によってはグサグサくるポイントはあるのかもだけど、そういう描き方をしてないような気がしました。むしろ、「諦めを許容する」みたいな感じがあって、それはそれで悪いわけではないんだけど、自分が勝手に想定していたものと違ったんで、あれ?ってなっちゃう部分はありました。

映画を見ながら考えていたのは、やっぱり椎名のことでした。椎名みたいな人生は、嫌だなぁ、と。そりゃあ、「人生のピーク」みたいなものがまったくない人生ってのもつまらないかもしれないけど、「人生のピーク」が高校時代っていうのも、それはそれで辛すぎるな、と。

個人的に、なるほど上手い描き方をするなぁ、と感じた部分がありました。あまり具体的に書かない方がいいと思うんでふんわり書くけど、「椎名が結婚していること」が明らかになる場面です。映画の中で、「高校時代の椎名」っていうのはたくさん出てくるんだけど、「現在の椎名」については、姿はおろか、情報すらほとんど出てきません。だから、「今椎名がどうなっているのか」っていうのは、漠然とした噂とか、勝手な妄想とかで組み立てられていくわけです。

でも、この「椎名が結婚していること」が明らかになるシーンで、ようやく椎名に関する確固たる情報が出てくることになります。そして、詳しくは書かないけど、その情報の出され方が、高校時代イケイケだった椎名と対比させているんだろう、というような感じがあって、うまいなぁと思いました。椎名の結婚相手が話している相手が結婚している(or付き合っている)人(←分かりにくい日本語ですいません)が50代のオッサンである、っていうのも、たぶんある種の対比になっていて、人生に勝ち負けみたいなものがあるとしたら、本当にどの時点でそれが決するのかは分からないなぁ、ということが改めてこの映画の根底に流れているんだろうな、と感じました。

あと、全然どうでもいい話だけど、40代後半のオッサン(マキタスポーツ)と付き合っている(援助交際ではないっぽい)女の子が結構良かったなぁ。エンドロールによると、片山友希という女優さんだそうです。なんか、良かった。

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