【映画】「Riceboy ライスボーイ」感想・レビュー・解説

なんか、結構良かった。正直、こういう「ヒューマンドラマ」的な作品は好きではないことの方が多いし、本作は特段何が起こるわけでもない感じの物語だったりするのだが、それでも、なんか結構良かったんだよなぁ。正直、何が良かったのか、自分でも上手く説明できない。

というわけでまずは内容の紹介から始めよう。

本作ではまず、母親ソヨンの来歴がナレーションベースで語られる。毛布に包まれて寺に置き去りされており、彼女は孤児院で育った。大人になると金を貯めるためにすぐに働き出したが、その内の1つである居酒屋にやってきた、除隊したばかりの青年に恋をした。そのまま結婚し、息子をもうけたが、夫は幻覚や妄想に悩まされるようになり自死してしまう。こうして未亡人となったソヨンは、故郷の韓国を離れ、カナダへと移住した。

そして物語は、1990年、そんなカナダで息子のドンヒョンが小学校に入学するところから始まる。彼は学校に行きたくないとねばったが母親に連れて行かれた。クラスで上手く話せず、持参した弁当に入っていたキンパを「米食ってる」「なんか変な臭い」と馬鹿にされた。彼の性格も相まって、馴染むのはなかなか難しそうだ。

一方ソヨンは、多国籍の人がいる工場で働いていた。しかし、同じ韓国出身という人はどうやら多くはなく、しかし彼女はそんな環境でも、ちゃんと主張して闘っている。息子にも、「からかわれたら、『テコンドーを教えて上げる』って言いながらパンチするのよ」と強気の教えをしていた。

そんなある日、ソヨンは学校に呼び出されることになり……。

というような話です。

物語は途中から1999年が舞台となり、15歳になったドンヒョンが登場する。ソヨンとの親子関係はまたちょっと変化しており、さらにソヨンには、職場で知り合った韓国人の男性と良い仲である。しかしなかなか上手くいかないもので……。

みたいな感じで話は進んでいく。

のだけど、ホントに別に、大したことは起こらない。いや、「人間の一生」という意味で言えば大きな出来事は起こるが、「映画で描く物語」としては大したことはないだろう。これといって特別なことは起こらない。

もちろん、「差別」は割と前景として描かれる。現代と比べれば差別に対する意識も大分緩かったはずで、そういう差別的な描写はちょいちょい描かれる。

のだが、じゃあそれが物語の核にあるのかというと、そんな感じではない。確かに、ソヨン、ドンヒョン親子にとって大きな影響を持つ状況ではあったが、決して「差別」そのものに焦点が当たっているわけではない。

また、「ライスボーイ」というのは小学校時代にドンヒョンが付けられたあだ名(というか蔑称と呼ぶべきだろう)であり、だから僕は本作を「ドンヒョンを中心軸とする物語」なのだと思って観始めたのだが、正直別にそういう感じでもない。もちろん、物語全体の要素としてドンヒョンの描写は大きな割合を締めるがそれにしても「ドンヒョンの物語」というほどではないよなと思う。

そしてそれは、母親であるソヨンに対しても感じる。本作はやはり「ソヨンの物語」という感じでもないのだ。

だから、「どこに焦点が当たっているんだかよく分からないなぁ」と思いながら最後まで観ていた。でも、別に全然面白かったんだよなぁ。自分でも、結構不思議だった。

さて、「焦点が当たる」と言えば、物語の中盤ぐらいから突如として「ソヨンの夫(ドンヒョンの父親)」にスポットライトが当たり始める。既に亡くなっているのだが、ドンヒョンが学校の授業で「家系図」に関する宿題を出されたことがきっかけで、「亡き父の姿を追う」みたいな話になっていくのだ。

そして同じタイミングで、ソヨンにも大きな転機がやってくる。そして、ドンヒョンとソヨンの状況がなんとなく亡き父親(夫)に向くことで、物語はそれまでとは割と違ったすアンスで展開していくことになる。

で、そのギアチェンジしてからの物語も、やっぱり家族の物語で、普段の僕ならそんなに興味はないんだけど、本作ではあんまり「家族家族」していない感じがあって(いつも思うんだけど、日本語で同じ単語を2度続けて「不必要に過剰」みたいなことを表現するのって、どう英訳するんだろう?)、結構良かった。「上手くいってなかったけど、あれやこれやあって上手くいくようになった」みたいな分かりやすい感じもないし、「ベタベタっとした親子愛」みたいな感じもない。「家族家族している感じ」が全然許容できない僕でもすんなり受け入れられる雰囲気で、そういう点も良かったなぁ。

というわけで、作品としては結構良かったのに、はっきりと焦点が当てられているものが上手く掴めなかったから(もちろん、「アイデンティティ」的なテーマもあるけど、それもメインで描かれているように思えない)、感想として書けることがあまりないのが残念。

メチャクチャどうでもいい話を1つ書くと、作中でソヨンが「高麗葬」の話を始める場面がある。もちろん僕は高麗葬のことなど知らなかったのだが、聞けば聞くほど、日本の「姥捨山」の話とそっくりでビックリした(背負った母親が枝を折って道に落とし、息子が帰り道に困らないようにした、という部分もまったく同じ)。どちらかが原型なのか、あるいはどちらも原型ではないのか(さらに別の国の物語が原型になった可能性もあるだろう)分からないが、ここまでそっくりの物語があるのかと驚かされた。

ちなみに本作は「16mmフィルムでの撮影が美しい」みたいなことがHPに書かれていたのだけど、映像的なものに対する感度が著しく低い僕には、そういうことは良く分からなかった。鑑賞後にHPを見て、「へー、16mmで撮ってるんだ」と思ったぐらいだ。僕の実感としては特にないが、映像的にも綺麗な作品なんじゃないかなと思うので、そういう点でも良いと思える作品なんじゃないかなと思う。

僕が観た時点で、全国で11館でしか公開していないようだが、今時点でのFilmarksのランキングに結構上位に入ってるし、評価も高い。僕が観た回も、劇場は狭めながら座席はかなり埋まってて、結構話題なのかなと思う。かなり地味な作品だと思うが、思いがけず良い作品だったという感じで、観て良かったなと思う。


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