【映画】「もう、歩けない男」感想・レビュー・解説
凄く良かった、という感じではないが、普通には良い映画だったと思う。ただやはり、「実話である」という情報の難しさも感じた。
この映画は、実話を元にしている。映画の最後には、主人公になった実在の「アダム」の写真も映し出される。人生の絶頂と言ってもいい瞬間に、自身のミスで四肢麻痺に陥ってしまった男の奮闘の物語である。
さて、言い方は悪いが、この映画は「フィクション」だとすれば、ちょっとありきたりだと感じる物語だ。不注意から四肢麻痺になり、自暴自棄に、しかしヘルパーや家族の助けもあり、障害を持ちながらも前に進んでいく、という物語だ。もちろん悪いわけではないし、良い話だが、しかし「よくある物語」という印象は拭えない。
だからこそ、「実話である」という情報が重要になる、と言えるだろう。フィクションと比べた場合の「物語の平凡さ」は、それが事実であることの裏返しである、というわけだ。
しかし、「実話である」という情報は諸刃の剣でもある。それは、僕が「実話を元にした物語」ばかり観すぎているからかもしれない。というのも、「実話である」というのは僕にとって、「なんか凄い話である」という意味として伝わってしまう。実際、これまで観た映画は大体そうだった。「こんなことが実際に起こったのか!」と衝撃を受けるような、とんでもなく凄まじい現実が描かれる物語が多かったのである。
つまり、「凄い現実だからこそ、これを映画にしようと考えたのだろう」というような意味を、私は「実話を元にしている」という情報から勝手に汲み取ってしまうのだ。
そして、そういう前提を持つ僕にとっては、ちょっとこの映画は「平凡」に感じられてしまった、というわけだ。いや、確かにアダムは凄いと思うが、世界中探せば同じような話は結構見つかりそうでもある。
まあそんなわけで、「今一つ」感は否めなかった。
登場人物の中では、ヘルパーのエフゲニアがダントツで魅力的だった。入院生活を終え、自宅に戻ったアダムだが、障害を持ってしまった自分の姿に気持ちが追いつかず、家族に八つ当たりしたり、担当するヘルパーを首にしたりと荒れていた。そんなアダムにエフゲニアは、ビシバシやっていくのだ。このビシバシ感は、なかなか見ていて痛快だった。彼女が語るヤギの話も、「エフゲニア」という人物を象徴するような感じがあって、なんとも魅力的だった。
あと個人的には、クリスティーンとの最後のやり取りは、ちょっとよく分からなかったなぁ。いや、アダムの方の理屈は分かるけど、クリスティーンはちょっとなんとも。いや、まったく分からんではないのだけど、なかなか僕の中からは取り出しにくい理屈という感じで、ムズかった。
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