【映画】「ヌーヴェルヴァーグ」感想・レビュー・解説
さて、さすがに『勝手にしやがれ』を観たことがない僕にはちょっと無理のある鑑賞だったかな。前半、かなりウトウトしちゃって物語を追えてなかったのもあるけど、やはり、ゴダール作品を(たぶん)観たことのない僕には、響く映画ではなかった。まあ、これは確実に僕が悪い。『勝手にしやがれ』を観てたり、ジャン・リュック・ゴダールについて多少なりとも詳しかったりしたら、結構面白く観れるんじゃないかなと思う。
で、どうでもいいことを先に。本作では「入場特典」があったのだが、なんとそれが「マッチ」だった。なんとも珍しい。使い道はあまりないが、なかなかカッコいい感じのデザインなので、これはこれでいいかも。あと、これもかなり珍しいが、僕が観た劇場では「上映後に入場特典を渡す」というスタイルだった。「入場特典だけもらって観ないで帰る」みたいな人を防ぎたい、的なことなのかなぁ。そんな人、いたとしてもワラワラ存在するとは思えないけど。
本作は大雑把に前後編に分けられるだろう。前半は、「まだ何者でもなかったゴダールが、どうにかこうにか長編映画の撮影を出来る状況を引き寄せる」という展開。そして後半は、「後に『勝手にしやがれ』として知られることになる映画の撮影のメイキングみたいな映像」である。
前半は、あまりそうは見せないようにしている感じがありつつも、ゴダールが「自分だけが長編映画を撮れていない」ことへの焦りからあれこれ動くという感じだ。「みんな」というのは、当時の映画界の新しい潮流である「ヌーヴェルヴァーグ」の仲間たちということだ。「カイエの仲間の中で」みたいなことをゴダールが言っていたと思うのだが、これは『カイエ・デュ・シネマ』という映画批評誌を指しているようだ(みたいなことも、鑑賞後にネットで調べて知るぐらい、僕は何も知らない)。ゴダールは批評家としては一流と目されていたようだが、カイエの仲間たちが長編映画を次々撮って評価される中、自分だけが28歳になっても撮れていない現状を憂えている。それで、「自分の脚本でやりたかったが、プロデューサーからトリュフォー(だったかな?)の脚本でやれと言われて折れた(作中では『実際はそうしたかったんだ』みたいに言っていたが、本心じゃないと僕は受け取った)」みたいな経緯を経て、ようやく映画を撮れることになった。
しかし、その撮影は当時の常識をぶち壊すようなものだった(とはいえ、当時の常識をよく知らないのでよく分からない)。まあでも、プロデューサーが「ちゃんと働け」みたいにブチギレるシーンがあって、だから「ゴダールがあまりにもゆったり映画を撮ってる」みたいなことは常識外れだったんだろうと思う。そりゃあ、金を出す側としてはキレるよなぁ。なにせゴダールはまだ何者でもなかったわけだし、『勝手にしやがれ』が大ヒットするなんて制作に関わっている人たちでさえ想定していなかったのだから(主演女優が撮影後に、「マジ最悪」みたいにブチギレてるシーンがあったりする)。
ただ、『勝手にしやがれ』を観てないからアレだけど、「批評家として他人の作品をこき下ろしていた人間が、いざ自分が映画を撮ってみたら、マジで不朽の名作になっちゃった」って、マジで天才すぎるよなと思う。凄くないか? 「たまたま上手くいった」とかじゃなくて、「狙って上手くいった」ってことだもんなぁ。凄いもんだ。
さて、公式HPを見てビビったのが役者について。まず、「オーディションによってゴダール役とジャン=ポール・ベルモンド役を射止めたギヨーム・マルベック、オーブリー・デュランは、何とこれが長編デビューとなる新人俳優」と書かれている。マジかよ。しかもオーブリー・デュランの方は舞台役者としてキャリアを積んでいたようだが、たぶんギヨーム・マルベックの方は演技が初めて、ぐらいの可能性すらある。
というのも略歴に、「映画監督、脚本、編集、撮影、作曲までこなすマルチクリエイター 。監督作『Infection volontaire』(14)のほか、『最高の花婿』(14)の装飾助手や助監督、カメラオペレーターなど、映画製作の全工程に精通する異色の経歴を持つ」と書かれているからだ。これだけ出来る人間が、さらに役者も昔からやっていた、というのはちょっと想定しづらいんじゃないか。いや、していてもいいんだが、その場合は余計に驚くというか、二物と言わず三物四物与えてるだろ、と思う。日本で言うなら「Vaundyが役者もやってる」みたいなことだろう。いやさすがにそれはマルチクリエーターすぎるだろ。凄いもんだ。
というわけで、僕の方の問題で本作はそこまで面白いとは感じられなかったが、この作品を良いと感じられる人は結構いるんじゃないかなと思う。繰り返しになるが、僕は『勝手にしやがれ』を観てないので、本作の役者たちが本人に似てるのかどうか判断できないが、レビューを見ると「似てる」みたいなことを書いてる人もいるので、その点も結構頑張ったんだろうなと思う。
『勝手にしやがれ』が1959年の映画らしいが、『七人の侍』が1954年公開らしいので、本作は日本で言うなら「『七人の侍』を撮った黒澤明と、その撮影のメイキング」みたいな内容だと思えばいいだろう。そう考えるとなかなか凄いことしてるなと改めて感じる。
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