【映画】「セールスマン」感想・レビュー・解説
なるほど、確かに面白そうな設定だし、撮り方だし、人物だと思う。現在の物価に換算すると350ドル相当になる豪華版の「聖書」を訪問販売で売り歩く4人の男たちに密着した、1969年の映画だ。2017年にG・ルーカス・ファミリー財団の支援で修復された映画だそうだ。
映画は僕にはあまり合わず、睡魔に襲われながらの鑑賞だったが、ずっと気になっていたことがある。それは、「どうしてこれほど『カメラ』の存在を誰もが無視できるのか」ということだ。もちろん、「カメラが意識されるような場面はすべてカットしているだけ」という身も蓋もない理由かもしれないが、メインとなる4人だけではなく、「聖書」の訪問販売を受ける一般人も、カメラの存在をまったく意識していない。
それはなかなか異常なことのように思える。
映画では、「聖書」をすんなり買う人ばかりが出てくるわけではない。むしろ、粘って粘って買わない人も多い。玄関口で門前払いというケースもあるわけで、家の中に入れてくれているだけまだ「買う気はある」と言えるかもしれないが、しかし決して乗り気でもないという人が出てくるわけだ。
そういう家にも、カメラは当たり前に入っていき、しかも誰の意識も向けられずに、「交渉」の様子を坦々と映し出している。その様がとても不思議に感じられた。現代なら、素人をターゲットにしたドッキリ企画や、街中でのYouTuberによる撮影など、「何らかの形で被写体になる機会」は多いし、だからさほどカメラの存在を気にしないでいられるのは分かる。しかし、白黒で撮影された1969年のこの映画でも、映し出される者たちが皆カメラの存在に意識を向けないことは、なんかすごいことに感じられた。
映画全体として、とにかくその点だけ、強く印象に残った。
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