【映画】「黒牢城」感想・レビュー・解説

状況設定は秀逸だなと思う。本格ミステリではよく出てくるが、リアルな状況としては設定しにくい状況を、戦国時代を舞台にすることで「あり得る状況」として描き出すというのは、さすが、原作の米澤穂信の手腕だなぁ、と思う。

のだけど、全体的にはあまり面白くなかったなぁ。本作を「時代劇」と見るか「本格ミステリ」と見るかで評価は変わると思うが、僕は「本格ミステリ」だと思って観ていたので、そういう観点からすると、1つ1つの事件がやはりこじんまりしている。戦国時代を舞台にしているから仕方ないのだが、映像のスケールの大きさに比べて事件のスケールが小さく感じられるので、その辺りのバランスは悪いなと思う。小説で読むと、また違った捉え方になりそうだなとは思う。

最終的な真相は、これも戦国時代を舞台にしなければあり得ないもので、そういう意味ではなかなか面白かった。「フーダニット(誰が)」や「ハウダニット(どのように)」にはあまり惹かれなかったが、「ホワイダニット(何故)」の部分は結構斬新だったように思う。作中に伏線的な描写はもちろんあるが、さすがに、現代人がこの「ホワイダニット」の真相に自力でたどり着くのは不可能だと思う。

というわけで、秀逸だったなと感じる点を説明するために、ざっくり内容の紹介をしよう。ちなみに、僕は「荒木村重」という人物を本作で初めて知った気がする(そんなに有名な人???)。マジで歴史が嫌いすぎるので、以下の説明にも色々間違いがあるかもしれないが、それは僕の知識不足によるものだと思ってほしい。

織田信長の家臣だった荒木村重は、織田信長へ反旗を翻すため、有岡城での籠城を決めた。既に周囲は織田軍に囲まれているが、毛利元就が兵を出してくれれば形勢は逆転するはずだ。家臣らも、その前提で籠城戦に臨んでいる。

そんな折、織田信長の使者として天才軍師・黒田官兵衛が有岡城へとやってきた。もちろん、荒木村重を懐柔するためだ。黒田官兵衛は荒木村重に「毛利元就が来るはずがない」と諭そうとするが、荒木村重は「使者は送り返す」という当時の常識を無視して黒田官兵衛を地下牢に閉じ込めることにした。彼は結局、約1年弱も囚われの身となってしまう。

そしてその間に、荒木村重に頼まれて、黒田官兵衛は有岡城で起こる奇っ怪な事件の謎解きをするのである。

最初は、人質の死だった。織田信長に寝返った安部二右衛門の息子・自念を人質として捉えており、そして荒木村重は自念を当面殺さないと決めたのだが、何故か、幽閉していた部屋で弓に射抜かれて殺されていたのだ。しかも、部屋から弓矢は消えていた。

荒木村重は家臣から、「最初は殺さないと言っていた自念を結局は殺すなんて織田信長と同じだ」と噂されていることを知る。荒木村重が自念を殺したことになっているのだ。だから一刻も早く真相を解明し疑いを晴らさなければならないのだが……。

というような話です。

さて、本作は、いわゆる「クローズドサークル」と「安楽椅子探偵」の組み合わせだと言っていいだろう。「クローズドサークル」というのは「絶海の孤島」や「嵐の山荘」のような「外界と切り離された閉ざされた空間」という意味で、本格ミステリではよく、そういう場所で殺人事件が起こる。「容疑者が絞られる」とか「警察を介入させずに済む」みたいな利点があるので、使い勝手がいいのだろう。しかし、当然、なかなかリアルな状況は設定しにくい。

一方「安楽椅子探偵」というのは「現場に行かず、人から話を聞くだけで事件を解決してしまう探偵」のことだ。これも本格ミステリでは度々出てくる設定である。で、本作の場合は、「地下牢に幽閉されている黒田官兵衛」がそれに当たる。

で、本作の場合、どちらもリアルな設定として昇華されている。「クローズドサークル」の方は「織田信長を裏切った荒木村重が籠城する有岡城」という設定がよく出来ている。また、「黒田官兵衛は幽閉されているが故にそもそも現場に行けない」が故に必然的に「安楽椅子探偵」の要件を満たすことになっている。このように本作では、「『クローズドサークル』『安楽椅子探偵』という、なかなかリアルにはなりにくい本格ミステリ的な設定を、戦国時代を舞台にあり得る状況として描いている」という点がかなり特異的でユニークだと思う。

だけど、ストーリー的には、それ以上に特筆すべきところはないかなぁ。さっきも書いたが、舞台のスケールの大きさに比して、どうしても事件のスケールが小さく、バランスが合っていないなという気がする。まあ、これも既に触れたが、最後のまとめ方というか、「ホワイダニット」の部分はなかなか良かったと思うが、ただ、「そういう着地点だった」が故に事件自体のスケールが小さくなってしまったとも言えるだろう。基本的にストーリー重視で物語(映画でも本でも)に触れている僕としては、ちょっと不満だった。

とはいえ、役者陣は素晴らしく、その点に不満はない。まあ豪華も豪華で皆さんお見事という感じ。菅田将暉とか本木雅弘とか吉高由里子は当然として、オダギリジョーとか宮舘涼太とか柄本佑とか坂東龍汰とかその他もろもろのみなさん、とても良かった。「演技合戦」みたいな見方をするなら十分楽しめる映画だろうなと思う。

という感じの映画だった。全体的には、うーん残念だったかな。


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