【映画】「夢と創造の果てに ジョン・レノン最後の詩」感想・レビュー・解説
本作は、ビートルズとかジョン・レノンのファンなら観た方がいいと思う。ただ、僕のように全然詳しくない人間は観ない方がいいだろう。全然意味が分からなかった。
僕が本作を観る前の時点でジョン・レノンについて知っていたのは、「オノ・ヨーコと結婚したこと」「銃撃され亡くなったこと」ぐらいだ。だから本作を観て「ビートルズが解散した」という話を知ってビックリしたりした。全然知らなかった。ジョン・レノンがビートルズを脱退したってのももちろん知らなかったし。あと、ジョン・レノンに関連してよく出てくる「失われた週末」というフレーズも、結局僕にはよく分からなかった。こんな風に、「みんな知ってるでしょ?」という前提であらゆる説明が省かれるのだ。
そしてそんな人間には、本作に出てくる人名とか曲名はさっぱり分からないし、だから証言者たちが何の話をしているのかも全然理解できない。映画を観ながら、初めてかもしれないが、「あー、これはちゃんと感想を書くのを諦めるしかないな」と思った。僕は普段から映画を観ながらメモを取っているのだけど、メモをしていても、それがなんの話なのか全然理解できないからまったく意味がないのだ。なかなかハードな鑑賞だったぜ。
鑑賞後にはトークイベントもあったのだけど、その中で誰だか分からない人が「近年観たビートルズ関連の映画で一番良かった」と言っていた。「こういう噂があることは知ってたけど、まさかそれについてここまで詳しく語られるなんて」「あのアルバムについてジョンがこう言ってたらしいけど、今までそんな話聞いたことないから驚いたけど、でもまあそりゃあそうだよなって思った」みたいな話をしていた。相当なビートルズファンらしいけど、そんな人物でも「初めて聞いた」みたいなエピソードが山盛りだったそうだ。だから大ファンならメチャクチャ楽しめると思う。
さて、そんな僕でも「面白いな」と感じる部分はあって、一番印象的だったのは、ジョン・レノンが撃たれた日に病院にいた人物の証言だ。彼はBBCだかどこだかの報道番組のプロデューサーだそうで、その日は恋人とデートがありバイクを走らせていたという。しかし隣を走っていたタクシーが急に車線変更してきて衝突。救急車で病院に運ばれたという。
幸い軽症だったため、担架に載せられれたまましばらく通路に放置されていたそうだが、その内慌ただしくなり「銃創だ!」という声が聞こえる。その後医者やら警察官やらがバタバタし、ある人物を(恐らく)手術室に運び込んでいった。
その後、部屋から出てきた2人の警察官が男の頭の付近で立ち止まり会話を始めたという。そしてそこで、「信じられるか? ジョン・レノンだぞ」と言ったというのだ。男は警察に聞き返したが、マズイと思ったのか、それからジョン・レノンの名前を出すことはなかった。
その後彼は通りがかる看護師や医師に話を聞いたのだが、プロである彼らは誰も立ち止まらない。しかし、掃除をしていた男性がおり、男は彼を捕まえて「会社に電話して、ジョン・レノンが撃たれたと伝えてくれないか」と、名刺と20ドルを渡して頼んだという。ただその試みは、病院の関係者によって事前に阻止されたようだ。
その後男は病室に運ばれ、女医(なんだと思う)から「ベッドから出ないで下さいね。それと、あの電話は緊急通報用で、関係者しか知らない番号を押さないと通話できないんで行っても無駄ですよ」と忠告を受けるのだ。
しかし男は見事、ジョン・レノンの死を会社に伝えることが出来た。そのために彼が行ったスピーチがなかなか秀逸だった。
【(自分を病室に運んでくれた女医に対して)あなたは昔から医者を目指していた?(はい) 良い医者になりたいと思っていた?(はい) じゃあ例えば、あなたが今通勤中で、目の前を歩く幼い子どもに車が突っ込んでくるのを想像してみて。あなたは恐らく、子どものところに駆け寄り、手を引いて、子どもを助けるでしょう。それはあなたが思う「理想の医者」の姿ですよね?(はい)
もしあなたが私に電話することを許してくれるなら、私も理想のジャーナリストになれます】
こうして彼は女医から「レントゲンの準備が整っているか見にいきますね。あなたはベッドから出ないでしょうし、緊急通報の番号が113であることも知らないでしょう。それでは10分後に戻ってきます」という返答を引き出すのだ。あまりにもドラマ的過ぎて、多少の誇張があってもおかしくない話だなとは思うが、エピソードとしてはメチャクチャ印象的だった。
あるいは本作には、「ジョン・レノンが撃たれる直前、ジョン・レノンを撃った犯人から話しかけられた」という女性も登場する。彼女は、「自分のせいじゃないと頭では分かっているけど、でもどうして『おかしな人がいると警備員にあの男を突き出さなかったのか?』と今でも考えてしまう」と話していた。本人も自覚している通り、まったく非はないが、それでも「あの時ああしていれば」と考えずにはいられないのだろう。
また、ジョン・レノンがグリーンカードを取得した際のエピソードも面白かった。作中では全然説明されなかったが(恐らく常識なのだろう)、再選を目指すニクソン大統領が、若者が民主党に投票することを恐れ、ロンドンでの薬物所持の前科を理由に国外退去命令を出していたのだ。その状況に夫婦で闘い、5年掛けてグリーンカードを勝ち取ったそうだが、その審議を行う裁判を傍聴したという人物がインタビューに答えていた。
彼は「ジョンにグリーンカードが発行されることはもう決まっていたようなもので、ほとんど形式的な質問だった」みたいなことを言っていたのだが、その中で裁判官から、「ジョン・レノンが州の保護を受ける可能性はあるか?」と質問したのだそうだ。これは要するに「失業保険を受給する可能性があるか?」という確認であり、グリーンカード取得のためには聞かなければならない質問事項として決まっているのだろう。しかし、相手はジョン・レノンである。インタビューに答えていた人物は、「死ぬほど著作権を持ってるジョン・レノンにそんなことを聞くなんて」と笑っていた。
さて、彼が国外退去命令を受けるきっかけになった薬物所持についても興味深い話がある。当時ロンドンでは、ピルチャーという刑事(なのかな?)が著名人の摘発で名を挙げようと躍起になっていたようで、それでジョン・レノンも狙われたという。しかしその後、ピルチャーが汚職の罪で逮捕される。なんと、大麻を仕込んだりして罪のない人間を無理やり罪人に仕立て逮捕していたというのだ。ムチャクチャな話しすぎるだろ。
しかしジョン・レノンは、当時弁護士から「罪は認めた方がいい」と言われたという。理由はよく分からなかったが、まあ「裁判にするとよりダメージが大きい」という判断だったのだろう。ただ、結局このことがグリーンカード取得の障害になったりしたわけで、代償は大きかったようだ。
というわけで、こういうエピソード単位で興味が持てる話はあったが、全体としては「誰がいつの何についての話をしているのか」がさっぱり分からず、ほぼ理解出来なかった。大ファンなら観た方がいいと思うけど、そうではない人は避けた方がいいんじゃないかな。
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