【映画】「哀れなるものたち」感想・レビュー・解説
僕にとって意外だったのは、原題が「Poor Things」だったことだ。というのも僕は、「哀れなる者たち」だと思っていたからだ。原題をそのまま訳すと、「哀れなる物たち」ということになる。「Things(物)なのかー」という感じだった。「者」の方がなんとなく理解しやすい気がするのだけど、「物」だとどういう解釈になるんだろうなぁ。
さて、この映画、結構前から劇場の予告映像でかなり観ていて、面白そうだなと思っていたので、結構楽しみにしていた。のだけど、「思っていたほどグッと来ないなぁ」という感じだった。
なんとなくだが、作品のあちこちに「深掘り出来そうな何か」が落ちている感じがする。でも、どうにもそれらが拾い上げられず、スルーされているような印象が強かった。「ベラ」という女性の人生譚に焦点が当たるのは当然として、でも「それだけの物語じゃないだろう」という感覚が結構強かった。
しっくりこなかった理由の1つはたぶん、「ベラの変化の理由が上手く可視化されているようには思えない」という点にあると思う。この映画を深く考えずに観ていると、「性的欲求に魅了されて、ベラは人間らしく成長した」みたいな見え方にしかならないだろう。
実際にはたぶんそうではないはずだ。本を読んだり、老婦人と出会ってやり取りしたり、社会主義の集会に参加したりと、ベラはもっとアカデミックな部分での変化もあったはずだ。普通に考えれば、天才外科医ゴッドウィンが新たに”治療”し邸内で観察している女性とは、その点が最も異なる、みたいな対比が描かれるためにあの女性は描かれていたような気がする。知的に成長したベラと、そうではなかった女性。その違いが明確に描かれることによって、作品全体を通して伝えたいことがより届きやすくなる、ような気がするんだよなぁ。
映画の中では、結局、「性的な関心」ばかりが描かれているような気がした。別に、それがメインに来てもいい。それはそれで、「『本能しかない脳』と『大人の身体』が接続された場合の1つの可能性の描写」として真っ当だと思うし、画的にも観客を惹き付けやすくなるだろうし、別にいい。ただどうも本作は、「『性的な関心』ばかり」という風に見えてしまった。
魅力的な設定だと思うし、さっきも書いた通り作中のあちらこちらに「深掘りできそうなアカデミックさ」が散りばめられているのだから、もう少しそっちにも描写を割り振っても良かった気がする。141分と、割と長めの部類に入る上映時間だったのだから、全体のバランスをもう少し調整することは出来たんじゃないだろうか。
みたいなことを感じてしまった。まあ、監督が描きたかったものがこの形であるなら、もちろん僕が文句を言うようなことではないのだけど、いち観客としては、「物語は、もう少し色んな方向に可能性が拓けていたよなぁ」と感じてしまった。
ビジュアル的な面で言うと、あまりそっち方面の感性は無いのだが、かなり良かったと思う。ベラの衣装は奇抜だけど、ベラのキャラクターを視覚的に表している感じがするし、街や海や空が「過剰なほど作り物めいて見える」ような演出(何がそうさせているのかわからないけど、照明とかかな?あとはCGか)もまた、「ある意味で『作り物』であるベラ」の存在を強調しているような感じがする。
また、ベラを演じたエマ・ストーンが「体当たり」の演技をしているのも凄いなと思う。本作ではエマ・ストーンは、制作の側としても参加しているという話を何かで知ったけど、そういう「いち役者としてだけではない形で関わっている」みたいな感覚も、この「体当たり」の演技に関係しているのかなという感じがする。
ちょっと僕には上手くはまらなかったけど、でも評価されるのは分かる感じするなー、という映画。僕はどちらかというと、天才外科医ゴッドウィンとその父親の話を観たいかな。「親指を鉄の箱に打ち付けて放置」「胃液が必要かどうか調べるために、胃液を出ないようにした」「性器に熱いアイロンを押し付けた」などなど、息子に対しての振る舞いとは思えないムチャクチャなことをやっている父親で、「おいおいどんな父親だよ」ってそっちにちょっと興味が湧いた。
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