【映画】「イニシェリン島の精霊」感想・レビュー・解説

なんか、メチャクチャ変な物語だった。なにコレ? 聖書とかに元ネタがあったりするんだろうか。なんとも受け取り方が難しい映画だ。

ただ、コルムがパードリックを”拒絶した”理由が、コルムが口にした通りのものであるならば、理解できなくもないと思う。「退屈さ」は僕にとっても、大いなる”しんどさ”をもたらすものだからだ。

しかしそうだとして、コルムのその凄まじい”拒絶感”に共感できるのかと言えば、そんなことはない。映画を観れば分かるが、コルムがパードリックを拒絶するそのスタンスは異常だ。そして、「何がコルムをそうまでさせるのか」という理由が、結局最後まで理解できないという点が、この物語の凄まじさだと感じる。

映画では、冒頭すぐ、「コルムが唐突にパードリックから絶縁される」という場面が描かれる。理由は分からない。このような始まり方をする物語の場合、僕はまず、「最終的に、コルムがパードリックを拒絶した理由が明らかになるのだろう」と期待する。恐らくそこに、驚くべき何かがあるのだ、と。

しかし映画を観ていると、「そんな物語じゃなさそうだぞ」ということが理解できるようになっていく。ちゃんと説明はできないが、途中から「最後まで観てもきっと、コルムがパードリックを拒絶した理由がはっきり分かることはないだろう」と気づくようになった。そして、やはりそのまま物語は終わる。

何が凄いって、そういう物語なのに、少なくとも僕には「作品として成立している」ように感じられることだ。そんなの、おかしいと思う。こんな訳の分からないストーリーが、成立しているはずがない。でも、作品の良し悪しはともかく、「とりあえず、物語として成り立っている」という感覚にはなる。不思議だ。とても変な物語だと思う。

もちろん、この物語において一番狂ってるのはコルムだと思うが、しかし結果としてパードリックもヤバい。「1度目の結果」を招いてしまったのは、まあ仕方ないかもしれない。誰だって、「まさかそんなことをするはずがない」と思うからだ。しかし、その「1度目」があった後で、再び行動するのがヤバい。もちろん、よりメタ的な意味で言えば、「コルムとパードリックが関わらなければ物語が展開しない」という理由もあるわけで、そこまで考えれば、「パードリックは監督に動かされているだけだ」と気持ちを落ち着かせることも可能だ。しかしやはり、一般的な感覚で言えば、あの「1度目」の後、再び動くことは、ちょっと考えられない。

そして、パードリックのそのヤバさがある意味で伏線として機能していると言えるのかもしれない。物語の展開は、一層狂気を孕んだものになっていく。

そして、ヤバいのはこの2人だけじゃない。映画の舞台は1923年のアイルランドらしいが、恐らく現代なら何らかの発達障害と診断されるだろう青年が状況をかき回すし、彼の父親である警察官は「法の番人」とは思えない振る舞いをする。噂好きの雑貨店の女店主や、告解中に懺悔する者にキレる牧師など、まともとは言えない人間ばっかり出てくる。もう、何がなんだか分からない。あと、あれが”精霊”なんだろうか? あの人、全員に見えてるんやろか。わからん。

パードリックの妹であるシボーンは、映画に映る人物の中で唯一まともに見える。彼女が、本土と手紙のやり取りをしているシーンがところどころであったが、あれはなんだったんだろう?

良かったのか悪かったのかと聞かれるとなかなか答えにくい映画だが、「印象に残ったか」と聞かれれば、間違いなく印象には残った。意味不明な形で狂気が発露されていく109分は、結構怖いよ。そして、どっからこんな物語を考えたのか、監督の頭の中を知りたいものだと思う。

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