【映画】「グッドワン」感想・レビュー・解説
なるほど、なかなか純文学って感じだったなぁ。いや、純文学ってのも違うかもだけど、観る側にかなり読み取る力が求められる作品な気がする。決して難しい作品ではないが、見る人によって読み取る深さに大分違いが出そうだ。ちなみに僕は、全然読み取れてない気がする。
観ながら考えていたことは、「大人になりたいと思ったことは特にないが、子供っぽさからは脱したいよな」ということだ。
僕は今42歳だが、「大人になったなぁ」と思うことは未だに全然ない。結婚・出産みたいなことを経験していないことも関係しているかもしれないが、未だに感覚としては、大学生ぐらいの時と大差ない気分だ。唯一、姪・甥にたまに(毎年ではない)お年玉をあげる時に「大人になったかな」と思うぐらいだ。
子どもの頃、僕は割と身近にいる大人のことがメチャクチャ嫌いで、親とか教師に敵意を抱いていた(とはいえ、表立ってその敵意を見せることは多くなかったが)。「こんな大人になりたいな」と思える存在には結局出会えなかった気がする。きっとそういうことも「大人になった感覚がないこと」と関係している気もする。「子どもの頃に嫌悪感を抱いていたあの『大人』という集団に含まれてしまうのは嫌だな」と感じているんじゃないかな、きっと。
ただそれはそれとして、「幼稚さ」みたいなものからは脱したいなと思う。「幼稚さ」というのをどう定義したらいいか分からないが、僕の中では割と「空気の読めなさ」みたいなものに近い。今自分がいる場において「求められていること」「求められていないこと」が分からない、みたいな感じが僕はあんまり好きじゃない(ただ、「求められていることをしろ」「求められていないことをするな」みたいなことではない)。
そしてそういう意味で、本作に出てくる大人2人、クリスとマットのことはあまり好きになれない。「幼稚さ全開」という感じがするからだ。そしてそんな「幼稚な大人」を、表向きは優しく、しかし実のところ冷ややかに見ている17歳の少女サムの視点で物語は展開されていく。
サムは、父親のクリスと、クリスの友人であるマット、そしてマットの息子のディランで山に登る予定だった。しかし当日、ディランが荷造りしていないことが分かり、切れたマットが玄関先で息子と揉め、結局ディランは来ないことになった。おじさん2人と女子高生という奇妙な山登りが始まる。
クリスとマットの関係はよく分からないものの、恐らく昔から気心が知れた仲なのだろう。ふざけたりアホみたいなことを言ったりしている。そしてそんな「幼稚な大人」を横目に、サムはひとり「ちゃんとした大人」の振る舞いをする。そんな彼女の振る舞いからは、「まあどうせいつものことだからね」みたいな諦念さえ感じさせられた。
そんな2泊3日の山でのキャンプの一部始終を、サムの視点から描き出す物語である。
サムが何を考えているのか、はっきりと口に出すことはないので、その言動から読み取るしかないのだが、全般的に「自分がちゃんとしなきゃ」みたいなスタンスなんだろうなという気がする。もちろんそう思わせているのはおじさん2人なわけで、ホントにクソみたいな輩である。
個人的に、サムの心情が分かりやすく表出されていたなと感じたのが、「この旅で初めての質問だね」と父親に返す場面だ。父親は「いつもしてるさ」と口にするのだが、サムはさらに「してないよ」と短く返す。サムは、「今この場がちゃんと成立するように、父親のこともマットのこともちゃんと見ている」のに、父親はまったくそうではないのだ。この、「自分の楽しさにしか関心がない」みたいな感じも、凄く「幼稚」だなと感じた。
そしてそんなクリスのセリフで一番イラッとしたのが、「楽しい日にしよう」である。自分が言われたらマジでキレるだろうなぁ。しかもクリスはたぶん、本心から「楽しい日にしよう」と思ってそう口にしているはずで、だから余計に腹が立つ。サムはきっと、「お前のせいだからな」ぐらいのことは言いたかったんじゃないだろうか。
僕は「家族」のことを「血が繋がっているだけの他人」だとずっと思ってて、だから昔から「家族だから何?」みたいな感覚がメッチャ強い。「血が繋がっているだけの人」とたまたま話が合うなんて確率はかなり低いだろうし、実際に合わない。
ただどうしても世間では(特に、日本より欧米の方がよりその傾向は強いだろうが)、「家族は大事」「家族は大切にしないと」みたいな感覚が根強いよなと思う。うるせぇ、って感じだよなぁ。僕がサムの立場だったら、マジで、クリスみたいな人間とは一刻も早く距離を置きたいと思うだろう。
ただたぶんサムは、まだ17歳ということもあるかもしれないし、親が離婚した(ちゃんと理解出来たわけではないが、恐らくサムはクリスにとっては「前妻の子」なんだと思う)みたいなことも関係してくると思うのだが、やはり父親であるクリスのことを「捨てきれない」のだろう。その辺りの葛藤も色々含まれている感じがした。なかなかに捻れているし、改めて「家族ってだりぃ」って思う。
正直なところ、僕にはあまり刺さらなかったのだが、刺さる人にはかなりズバズバ刺さる映画じゃないかなと思う。あと、サムを演じた女優(リリー・コリアスという名前らしい)は凄くいい。実年齢はよく分からないが、17歳の役が出来る程度には若い人なんだろう。けど、なんか凄く絶妙な雰囲気を醸し出している。まさに「大人でもないし子どもでもない」みたいな感じがあって、彼女の佇まいによって本作が成立している部分もあるよなと思う。
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