【映画】「ザリガニの鳴くところ」感想・レビュー・解説
良い映画だった。それは間違いない。誰かにオススメかどうかと聞かれたら、オススメだと答えるだろう。
ただ、特にこれと言ってひっかかる部分のない映画でもあった。そのことは僕にとってはちょっと残念なことだ。僕は本でも映画でもなんでも、「思考が刺激されること」を求めている。どんな思考でもいい。頭の中がグルグルとしてくるような作品を常に望んでいる。で、そういうグルグルを文章にしたい。
でも、この『ザリガニの鳴くところ』には、少なくとも僕にとってはそういう要素はなかった。最初から最後まで、スルスルと進んでしまい、自分の思考がグルグルしないまま終わってしまったのだ。
それは、なんとなく「ミステリ的な展開」をイメージしていたから、ということもあるかもしれない。原作は「ミステリ小説」として売り出されているし、映画の予告やチラシなんかも、割とミステリ要素を推しているデザインであるように僕には感じられた。
ただ、この映画は、全体としては「恋愛」がメインであるように思えてしまった。あくまで僕にとっては、だ。もちろん、扱われているテーマは様々にある。子ども時代からの苦労続きの生活や、マイノリティを排斥する雰囲気、そしてその風潮の中で開かれる裁判と、被告人を信じて闘う弁護士の奮闘などなど。主人公が辛い境遇を乗り越えて、作家として大成していく過程はなかなか見どころがあるし、彼女の人生の合間合間に挿入される、「彼女が被告人となって行われている裁判」の展開も興味深い。
それでも僕はこの映画は、「恋愛」がメインであるように感じられた。別に恋愛がメインだからダメだというのではないのだが、観る前になんとなく想定していたものと違っていたため、自分のテンションがあまり上がらなかったということもあるかもしれない。
原作を読んでいないのであくまでも予想だが、たぶん原作は、もっと「主人公カイアの生き様そのもの」がメインになっているのではないかと思う。そして映画では、その中から、恋愛の部分をメインで抽出した、ということではないか。原作は、単行本で512ページもあるようなので、そのまままるっと映画に出来る物語ではないだろうし、であればぎゅっと凝縮されるのも仕方ないだろう。
あと個人的には、「ザリガニの鳴くところ」というタイトルについては、もう少し言及してほしかったなぁ、と思う。「ザリガニの鳴くところ」というタイトルでミステリというのは、なかなかキャッチーだと思うし、アンミカがテレビでこの映画について紹介している映像でも、「『ザリガニの鳴くところ』というタイトルの意味を知って驚く」みたいな趣旨のコメントをしていたような気がする(気のせいかもだけど)から、映画の中でちゃんと説明があるのだと思ってた。映画では、幼少期に兄から「危なくなったらザリガニの鳴くところまで逃げろ。母さんの口癖だ」と言われる場面が出てくる。この発言が、物語のどこかで伏線的に回収されるのかなと思ってたけど、そんなことはなかった。映画のラストにまたちょっと「ザリガニの鳴くところ」に言及されるが、うーんという感じ。
冒頭で書いた通り、良い映画だと思う。ただ、刺さったかどうかと言われると、まったく刺さらなかった。そういう意味では、良くない映画といえるかもしれない。
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