【映画】「おんどりの鳴く前に」感想・レビュー・解説

うーん、どうかなぁ。面白いのかなぁ、これは。主人公が相当しんどい状況に置かれていることは理解出来るが、だからと言って、物語として面白いのかとなると、ちょっとなんとも言えない。

ルーマニアの小さな村で警察官として働くイリエは、村でどうにか果樹園を手に入れたいと考えている。村では大した事件は起こらない。仕事は仕事で粛々とやり、その上で果樹園での仕事もやり、村に貢献しつつ自分のやりがいも得たいと思っている。彼は、結婚し子どももいる兄との会話で、「自分は一人前じゃない」と話していた。イリエは結婚していたことがあるが、今は離婚しており、元妻とは、果樹園を手に入れるための資金を得るためのアパートの売却で今もやり取りを続けている。

そんなある日のこと。まさかの出来事が起こった。村で死体が見つかったのだ。こういう事件が起こった時には、町から検事を呼ぶことになっているようだが、村長のコスティカからは、「ドルネアノ検事に連絡してみろ」とアドバイスを受ける。また、イリエがいる警察署には今、ヴァリという研修生がいるのだが、イリエは彼に、「第一発見者である被害者の妻から事情聴取をしろ」と指示をした。

イリエは、事件の捜査を特段する様子はない。検事に任せることになっているからだろう。また、死体発見の翌日以降も村人に事情聴取をしていたヴァリには、「一人で捜査をするのは規則違反だ」と告げ、これ以上何もするなと言って帰らせた。

さて、その夜のこと。イリエの家にコスティカと、神父のエディがやってきた。彼らは「新人が住民に話を聞いている」と告げる。イリエは、「ヴァリには捜査を止めるよう既に伝えている」と返したのだが、その後2人から衝撃的な話を聞かされることになり……。

物語としては、この村長と神父の訪問を機に様相が一気に変わっていく。ここで何が起こったのかに触れるべきかどうかは悩むポイントではあるが、書くことにしようと思う。もしこれ以上の展開を知りたくないという人は、ここで読むのをやめてほしい。

村長と神父はなんと、「自分たちが死なせてしまった」と告白したのである。彼らは「事故だった」と強調していたが、真相は不明だ。そして村長と神父は、「この件は君に任せる。自分の心に従って行動してくれ。自分が正しいと思う判断をしてほしい」とボールを投げるのである。

普通に考えれば、警察官でありイリエは2人を逮捕すべきだろう。しかし、村というかなり閉鎖的な環境で、さらにその中で強い権力を持つ村長が関わっているという事実がややこしさをプラスする。

この村では、村長の采配によって、必要なものが必要な人のところにちゃんと届くように村の運営がなされているという。恐らくそのことは、イリエも日々実感しているのだろう。そういう言い方をするということはたぶん、ルーマニアの他の村では、貧しさに喘いだり村としてのまとまりが薄かったりするようなケースもあるのだと思う。村長の采配が優れているというわけで、そんな村長を逮捕して村の運営に支障を来すことは果たして正解なのかという観点が1つ存在する。

さらに、村長はイリエが果樹園を欲しがっていることを知っており、自身が持つ果樹園をイリエに贈ることを決めた。村長は「他意はないんだ」と強調していたが、そんなはずがない。明らかに、「アメとムチ」のアメである。イリエにとっては、「果樹園を手に入れることで人生を好転させたい」という想いが強く、だから「待望の果樹園が手に入る」という状況はかなり惹かれるものがあるのだ。

さらに言えば、被害者の妻で未亡人になってしまったクリスティナの存在もある。彼は事件を通じて彼女と関わることになったわけだが、恐らくその中で、美しい彼女に惹かれていったのだ。イリエにはどうやら、村を離れる選択肢は無いようだ。だから、もしクリスティナと一緒になれるとしたら、この村に住み続けることになる。となればやはり、村長にはそのままい続けてもらった方がいいのではないか。そんな想いも過ったのではないかと思う。

そんな色んな思惑が交錯する中で、イリエがどんな決断をするのか。その葛藤を追いかける物語である。

先述した通り、イリエがかなり辛い状況に置かれていたことはもちろん理解できるのだが、そのことが物語敵な面白さにあまり繋がっていないような気がした。ただ、ネットでざくっと調べてみると、「ルーマニアという国の恐るべき腐敗をベースにした作品」なのだそうで、そういう「ルーマニアがどういう国なのか?」みたいなことを知っているともっと面白く観れるのかもしれない。

個人的には正直、そこまでしっくり来る作品ではなかった。

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