【映画】「正義廻廊」感想・レビュー・解説
中盤から後半にかけてはなかなか面白かったのだけど、最終的には「???」という感じだったし、モヤモヤする物語だったなぁ。いや、そう感じさせる物語なんだろうし、受け取り方としてはあってるんだろうけど、何とも言えない感覚になった。全体としては、「つまらなかった」という印象が強いかなぁ。
正直、本作は、どこに焦点が当たっているのかイマイチよく分からない物語だった。全体としては基本的に「法廷劇」が描かれるわけだけど、その中に色々要素が詰め込まれている。ミステリ的な要素もあれば、陪審員の人間ドラマ的なものもあるし、「自分はやってない」と主張する被告の主張やその人物を犯罪に引き込んだとされるサイコパス的な人物の言動も色々描かれる。かなり盛りだくさんで、そして、個人的には、焦点が絞られていなさ過ぎる気がした。
本作は、2013年に香港で実際に起こった「両親殺害バラバラ事件」を元にしているらしい。恐らく世間的にもかなり話題になったのだろうし、だから韓国の人からすれば「あの事件の裏側を知れる映画」みたいな感じなんだと思う。日本で言うなら「和歌山毒物カレー事件」みたいな感じだろうか。香港の人は、この事件について事前情報を色々と知っていて、そしてその上で本作を観てさらにあれこれ考えられる、みたいな映画なんだろうなと思う。
だから、そもそもこの事件のことをこの映画で初めて知る僕のような人間向きには作られていないように感じられた。
また、元々事件を知っている人には特に問題に感じられないだろうが、そうではない人にとっては「実話であること」がある種の制約としても機能しうるだろう。というのも、陪審員や裁判官・弁護士などはともかく、被告人やその家族を実際以上に悪く描いたりすることには倫理的な問題が生まれそうだからだ。本作は正直、物語的に振り切ればもう少し面白く展開させられたように思う。ただやはり、なかなかそう簡単にはいかなかったんじゃないかという気がする。事件自体を元から知っていれば、実際の状況・展開などと照らし合わせて観ることも出来るが、それが出来ない場合はやはり、「分かりづらさ」「物足りなさ」みたいな感覚として伝わってしまうような気がする。
まあこの辺りのことは別に作品の良し悪しとは関係ない(作品が対象とする人物が鑑賞しているかの話なので)が、やはり「評価しにくいなぁ」という感覚になってしまうことは避けられない。
そんなわけで、全体としては「うーん」という感じだったのだが、映像的には面白い演出があった。本作は、状況としては基本的にずっと「裁判」を描いているのだが、映像的には常に裁判所というわけではない。陪審員や裁判官・弁護士が「犯行現場」や「被告人2人が食事をしている場」などにあたかも存在しているかのような演出がなされているのだ(伝わるだろうか?)。被告人らの証言を踏まえた上で、「どういうことが起こっていたのか?」「どういう状況だった可能性があるのか?」みたいなことが映像で再現される。もちろんそれは「実際に起こったこと」というわけではない。被告人らが嘘をついているかもしれないし、警察が無理やり自白させた内容かもしれないからだ。だから、同じ場面(例えば「犯行現場」)でも、幾通りかのパターンが映し出されたりする。こういうことが起こったかもしれないし、ああいうことが起こったかもしれない、というわけだ。そしてそれを、陪審員や裁判官・弁護士らがその場で観ているかのような演出になっていて、これはなかなか面白かった。
あと、本作は基本的に「ヘンリーという被告がアンガスという被告をそそのかして殺人に加担させた」という想定で、それが真実なのかどうかが争点になっていると言っていいのだが(つまり、ヘンリーが主犯であることはほぼ疑いがない)、その巻き込まれたと主張しているアンガスの演技が絶妙だ。彼はIQが低いという設定(IQ89とかだったかな)で、「『署名したら寝ていい』って言われたから署名したんだ」「もういいよ、濡れ衣でも何でも着せてよ」みたいなことを法廷で言ったりする。とにかく裁判の争点は、「アンガスは本当のことを言っているのか?」に絞られていくのだ。
そしてこのアンガスが、なんとも言えない絶妙な雰囲気を醸し出すのだ。「本当に頭が悪くて成り行き任せにしていたらこんな大変なことになっちゃった」みたいにも見えるし、「馬鹿のフリをして罪から逃れようとしている」ように見えなくもない。彼の演技のお陰で「えっ? どっちなん?」みたいな揺らぎが生まれているように思うし、見事だったなと思う。
面白くなりそうな雰囲気はずっと漂っていて、割と期待感もあったのだけど、思いのほかそこまでではなく、ちょっと残念だったかな。いや、面白いと感じる人はいると思うけど。
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