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食事は「済ませる」ものではなく「堪能する」もの─神戸北野ホテルで過ごした、静かな"食"の時間〜ディナー編〜

「当ホテルは"泊まる"ホテルではなく、"食べる"ホテルなんです」
「すべてこだわりを持ってご提供させていただいております」

そう言って聞かせてくれた、男性スタッフの方。その言葉どおり、私たちは、このホテルがふんだんに与えてくれる「食の恵み」を思う存分に堪能することができた。

『神戸北野ホテル』がある北野の街は、どこか時間の流れが緩やかだ。坂道が多く、観光地でありながら、足早に通り過ぎる人は少ない。異人館が点在するこのエリアには、かつて異国の文化が持ち込まれ、生活とともに、さまざまな食やもてなしの文化も根づいてきた。

旧外国人居留地

そんな北野の街に溶け込むように建てられているこのホテルも例外ではない。全30室という限られた空間には、年末とは思えないほど穏やかで静かな時間が流れている。その夜、私たちが向かったのは、このホテルの時間が最も"濃く"流れる場所だった。

ディナーが始まる。


「記念日ディナーコース」(乾杯シャンパン付)

すっかり日が落ちた午後6時30分。久しぶりに履くヒールの音にやや緊張しながら通されたのは、フレンチレストラン「アッシュ」。二つ分のテーブルが純白の布で覆われている。その上には過不足のないカトラリーと、静かな余白。3組ほどしかいない、静かで贅沢(ぜいたく)な空間。

ご挨拶の一皿(丹波の栗)

最初の一皿は、黄金色に輝く和栗とムース。テーブルの静かな余白をそっと埋めるように置かれたグラスは、まさに「ご挨拶の一皿」と呼ぶにふさわしい。思わず目を奪われる。焦りを抑えている自分の中には、確かに"目の前の一品をゆっくりと味わいたい"という想いがあるようだった。

小豆島のイメージが強いが、実は神戸が発祥と言われている「オリーブ」。明治時代、日本で初めて国営のオリーブ園ができて以降、オリーブは神戸を代表する食材の一つ。神戸北野ホテルの玄関口にもオリーブの木が植えられており、その日の朝に収穫したばかりのオリーブを使ったパイ包みをふるまってくれた。

明石浦ブリの軽い柑橘マリネとかぶのサラダ仕立て

やわらかく濃厚な口当たりの寒ぶり。柑橘マリネでさっぱりと食べられる。

明石のイカのベニエ カラスミ

揚げたとは思えないほど軽い食感。カラスミと柚子胡椒(ゆずこしょう)が旨味をグッと引き立たせる。

菊芋の食感と、ほうれん草のオイルクリームが絶品の魚料理。

香り高いトリュフをたっぷり削った神戸牛。里芋の塩釜焼きといただく。

デザート前のチーズセレクション

デザート前にふるまってくれた選りすぐりのチーズ。ブリーチーズを少し炙(あぶ)ることでよりなめらかな舌触りに。

砂漠の薔薇(ばら)

神戸北野ホテルを代表するデザート。フランス語で"クッキー"を意味するテュイルの中にアイスクリームを挟んだ一品。カカオ70%使用とのことでこっくり濃厚な味わいだが、オレンジソースが爽やかに包みこんでくれる。

「記念日ディナーコース」薔薇の演出ケーキ

溢れんばかりの薔薇にドライアイスの演出。ケーキは軽い口当たりで、食後にもペロリと食べられてしまう。

食後のお茶菓子

さらにコース終了前のお茶菓子まで。テーブルの上で過ごした時間は、気づけば約2時間に及んでいた。五感すべてを使う食事とは、こういうことなのだろう。ナプキンをテーブルに置く頃には、食事を終えたというよりも、「時間を過ごし切った」という確かな感覚だけが、静かに残っていた。







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