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pottan_
秘湯一人旅
日曜日、快晴。
沢井は軽めの朝食を済ませ、パソコンに向かいメールチェックをしている。
「あなたぁ、じゃ、行ってくるわよー」
玄関の方から声がする。
返事も待たずに玄関の閉まる音。
「ふーっ、出掛けたか」
女房と娘は、都心のスイーツ店巡りをするべく
1ヶ月も前から計画を立てていた。
「あなたも、ぼーっとしてないで、どこかに行ってみたら?」
「ぼーっと・・・」は余分だろ。
と思うのだが、言葉には出さない。
それにしても、スイーツ店巡りとは、いったいどのような胃袋を持っていたら、そのような発想がでてくるんだ?と思うのである。
「巡り」だから、最低2店舗以上にいくつもりだろう。
おまけに、
「夕飯もすませて来るから、
あなたも、冷蔵庫にあるもので適当に済ませてていいわよ」
「いいわよ・・・?」
沢井、申し訳ないけどの一言があって然るべきだと思うのだが、女房にその類の感性はないことも承知している。
沢井、ぶつぶつ言いながらも、何かしら口笛でも吹きたい気分である。
今日はかねてより周到に計画していたことを実行にうつす日だったのだ。
そそくさと着替えを済ませ、表通りでタクシーをひろい、
「○○駅まで」と伝える。
「ご主人、何だか嬉しそうですね」
「えっ?そ、そうかい?」
「窓の外を見ながら、ニコニコしてらっしゃるんで・・・」
それもそのはずである。
インターネットで調べに調べ、「日帰り 秘湯の独り旅」なるものを見つけ、宿の予約は勿論、分刻みの日程まで組んである。
「はい駅、着きました。ありがとうございます」
「あっ、釣りはいいよ」
などと、これまで口にしたことがないような言葉が思わず出る。
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