アンケート調査でわかることの限界 ~「名古屋スタディ」の質問と回答~
日常生活の中で、様々な場面でアンケート調査に回答する機会がありますが、質問が漠然としすぎていて答えを選ぶのに困ることもあります。ユーザー満足度をネットで回答する場合などは、答えないと進めないのでとりあえずどれか選んでしまうこともあるでしょう。けれども、もし医薬品の安全性に関わる調査だとしたら、そのような回答が含まれている可能性があるのに、安全性のエビデンスとして使ってもよいのでしょうか。
程度がわかりにくい質問
例えば、このような質問があったとしたら、皆さんはどのように解釈して答えますか?



これは、平成27年8月12日時点で名古屋市に住民票のある、中学3年生から大学3年生相当の年齢の女性を対象に、名古屋市が行った子宮頸がん予防接種調査の一部です。平成27年9月上旬に対象者に調査票を郵送し、記入後に返送するという形で行われました。詳細は、下記のページで公開されています。
回答があった約3万人のデータを分析したものが、いわゆる「名古屋スタディ」として、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の安全性を示す資料として示されています。上記の24項目について、ワクチンを接種した人と接種していない人で有意差は見られなかったと結論付けられたのです。
このような郵送によるアンケート調査を分析した結果を、「安全性の証」としていることに私は疑問を感じます。このような質問形式では、答えに表せないことがたくさんあるからです。
例えば「身体がだるい」という質問には、「いつもある」や「ときどきある」と答える人が多いのではないでしょうか。ビタミンB1誘導体を配合した医薬品のCMでも「しっかり寝たのに朝からだる重~」というセリフがあるように、疲れの蓄積によって「だるい」と感じることも多いでしょう。
けれども「いつもある」「ときどきある」という回答だけでは、程度がわかりません。この質問だけでは、どれくらいの「だるさ」なのかがわからないのです。HPVワクチン接種後の健康被害で苦しむ方たちが感じているのは、「異常な倦怠感」です。「だるい」という表現で表す症状とは、程度が大きく異なると思います。
例えば、倦怠感や疲労感について、「自分の上に人が5人乗っかっているような感覚」の人と「日々の疲れが取れず、なんとなくだる重い感じ」の人がいても、あの質問項目と回答からは「いつもある」「ときどきある」としか答えられないので、このような違いは表せないと思います。3日~1週間ぐらい休まないと回復できない、と語っている被害者の方もいるのです(下記参照)。
「自分の上に人が5人乗っかっているような感覚」の人が答えた「いつもある」と、「日々の疲れが取れず、なんとなくだる重い感じ」の人が答えた「いつもある」を同じと考えてよいのでしょうか。
「ひどく頭が痛い」の「ひどい」というのがどれくらいの痛さなのかも、人によって違うでしょう。「異常に長く寝てしまう」という表現も、何時間くらいが「異常」なのかわかりません。「すぐ疲れる」の「すぐ」とは、どんな活動をどれくらいしたら疲れることを指すのでしょうか。
4つの選択肢では表せない「月経不順」
「月経不順」についても、女性の多くは経験があるでしょう。けれども、「月経不順」の程度も人によって様々です。4つの選択肢を見るだけではわからないことが、自由記載欄に書かれています。
以下は、「その他」に書かれた「月経不順」に関する補足(ワクチン接種者)の一例です。
①の月経不順ですが今は完全に生理が止まってしまってます。自分で尿を出せなくなり毎回導尿しています。
ホルモン異常 女性ホルモンの数値が低い 2ヶ月以上生理がつづいた。不正出血で今でも病院に通っている。
月経が始まる前にワクチンを接種したのですが、それが原因かはわかりませんが、月経が今でもきません。今、婦人科に通っています。ホルモン剤を飲むとその時は月経がきますが、自然にはこないので、病院で治りょうしています。今、18才です。
子宮けいがんワクチンを3回接種した後、月経不順が続き心配になり、病院へ行きました。生理はきているけど、排卵していないと言われました(おばあちゃんぐらい…)。その後、1年間毎日薬を飲み続けましたが、止める事にしました。もう少し大人になってから考えようと思いました。薬を飲み続けるという事にも少し抵抗がありました。ワクチンを接種したから?!なのかは、わかりません。
月経不順が続いています。特に、中学3年生頃から、大量出血を、繰り返しています。病院に受診し、ピルを内服したこともありますが、すぐに症状は再発。今年に入り病院をかえたところ、無排卵性月経とのことで、薬を内服し、様子をみています。大量出血は治まっていますが、月経がない時期が続いています。ホルモンバランスのせいか、精神的にも不安定になりやすく、また、一度眠るとなかなか起きられません。そして、太りやすくなりました。
このような場合も、ただ「月経不順」が「いつもある」とか「ときどきある」という回答として処理されてよいのでしょうか。
中学3年生から大学3年生の女性が、「完全に生理が止まってしまった」「2ヶ月以上生理がつづいた」「ホルモン剤を飲むとその時は月経がきますが、自然にはこない」「生理はきているけど、排卵していないと言われた(おばあちゃんぐらい…)」「大量出血を繰り返し、無排卵性月経とのことで、薬を内服している」などと回答していたら、それについてもっと調べようとすることが、「安全性」の検証ではないのでしょうか。
自由記載部分も、下記のページで公開されています。ぜひ、他の回答もご自身の目で確認していただきたいです。
本来なら、この調査をもとに、もっと詳しく対面での調査や追跡調査、他の自治体にも調査を広げるなどのことをするべきではなかったのでしょうか。データ分析が必要なら、そこからまた新たなデータを得るべきではないのでしょうか。
HPVワクチン訴訟で原告として闘っている梅本美有さんは、2024年薬害根絶デーの厚労省前フリートークで「私たちは数字じゃない、生きている人間なんです」と語っていました。
推進派の人たちは、なぜ数字しか見ないのでしょうか。推進派にとっての「正しい情報」とは、製薬会社の意向に沿った情報ということなのでしょうか。数字として処理された結果からは読み取れない事実があることに、なぜ目を向けようとしないのでしょうか。
