見出し画像

HPV感染による中咽頭がん

男性 (男子)にHPVワクチン接種を勧める医師らが、「中咽頭がんの予防にもなる」という説明をしている記事や動画を見かけます。子宮頸がんの予防だったはずなのに、肛門がんや尖圭コンジローマの予防がプラスされ、さらに中咽頭がんまでプラスされようとしています。1つのワクチンで、上から下までそんなにいろいろ予防できるのでしょうか。

アメリカでの男性へのHPVワクチン承認

2009 年10月、FDAはHPV6型、11型による尖圭コンジローマの予防用として9~26歳の男性に対する4価 HPVワクチン(Gardasil)を承認しました。さらに2010年12月、FDAは9~26歳を対象に、HPV6型、11型、16型、18型によって発生する肛門癌および関連する前癌病変の予防ワクチンとして、Gardasil(ガーダシル)を承認。その後アメリカではGardasilは販売終了となり、現在は9価のGardasil9(シルガード9)に切り替わっています。

アメリカでは、2020年6月に9価HPVワクチン(Gardasil9)について、HPV16、18、31、33、45、52、58型に起因する中咽頭がんおよびその他の頭頸部がんの予防に対する適応拡大がFDAにより承認されました。

下記は、製薬会社(MSD製薬)のサイトから一部引用です。

男女ともにHPVに起因する中咽頭がんに罹患するリスクがありますが、男性の中咽頭がんは女性の5倍多くなっています。ほとんどの人では、HPVは自然に消失しますが、消失しない場合には、特定のがんが引き起こされる可能性があります。中咽頭がんは、中咽頭(軟口蓋、咽頭の側壁・後壁、扁桃腺および舌の後方3分の1)へのHPV感染によって生じる可能性があります。米国疾病管理予防センター(CDC)が発表した最新のモデルによると、HPVに起因する中咽頭がんは、子宮頸がんを上回り米国で最も多いHPV関連がんとなっています。
注:HPV検査でHPV DNAが検出されただけではHPVに起因するがんと判断することはできません。
すべての子宮頸がんおよび中咽頭がんがHPVに起因するわけではありません。

https://www.msd.co.jp/news/chq-0623/

以下、CDCのサイトより。


What Is HPV?
HPV is the most common sexually transmitted infection in the United States. Of the more than 100 types of HPV, about 40 types can spread through direct sexual contact to genital areas, as well as the mouth and throat. Oral HPV is transmitted to the mouth by oral sex, or possibly in other ways. Many people are exposed to oral HPV in their life. About 10% of men and 3.6% of women have oral HPV, and oral HPV infection is more common with older age. Most people clear HPV within one to two years, but HPV infection persists in some people.

https://www.cdc.gov/cancer/hpv/basic_info/hpv_oropharyngeal.htm

「約 40 種類のHPVは、性器領域や口、喉への直接の性的接触によって感染します」とあります。口や喉への感染はオーラルセックス、または「他の経路」によるとあるのに、「他の経路」が具体的には書かれていません。これは、子宮頸がんの説明と同じです(下記参照)。

「他の経路」が書かれていないのに、「口腔 HPV 感染は高齢になるとより一般的になります」とあるのがよくわかりません。高齢になると感染がより一般的になるなら、「他の経路」による感染が多くなるということではないのでしょうか。

「ほとんどの場合、HPVは1 ~2年以内に消失しますが、一部の人では HPV 感染が持続します」とあるので、「高齢になるとより一般的になる」というのは若い頃の感染が持続しているわけでもなさそうです。

さらに、「男性の約 10%、女性の3.6% が口腔 HPVに感染している」というのも、なぜ男性の方が多いのか疑問です。やはり「他の経路」が何なのか、とても気になります。

中咽頭がんの増加

以下、NHKニュース(2023年8月)からの一部引用です。

HPVウイルスで急増 「のど」のがん 世界頭頸部がんの日
2023年08月09日

神奈川県に住む30代の男性。3年前、首にしこりがあることに気づきました。病院で検査を受けると、舌の根元に腫瘍が見つかりました。
腫瘍にはがん化した細胞が確認され「中咽頭がん」と診断されたのです。首のしこりは、がん細胞が舌の根元から首のリンパ節に転移してできたものでした。このがんはこれまで飲酒や喫煙が主な原因とされてきました。男性は喫煙も飲酒もしていましたが、告げられた原因は思いもよらぬものでした。

原因はHPV=ヒトパピローマウイルスの感染でした。HPVは主に性交渉でヒトの粘膜や性器に感染するウイルスです。性交渉の経験がある人の大半が、生涯に一度は感染するとされていますが、感染しても自覚症状はなく、多くが1年から2年で体の外に排除されます。しかし、200種類以上タイプがあるHPVのうち、一部のタイプについては、持続的に感染すると細胞のがん化を引き起こすとされています。

https://www.nhk.or.jp/shutoken/yokohama/article/015/05/

「中咽頭がん」はこれまで、飲酒や喫煙が主な原因とされてきて、この男性は喫煙も飲酒もしていたのなら、飲酒や喫煙が原因なのではないのでしょうか。

けれども、「原因はHPV感染」だと言われたそうです。HPVに感染しても発症しない人もいるのに、HPV感染が確認されたら「飲酒や喫煙が原因」と言わないのはなぜなのでしょうか。

従来の飲酒・喫煙で発症する癌と HPV が原因で発症する癌は、生物学的にも予後でも異なると評価された結果から、2017年にTNM分類(国際的ながんの進行度の分類法)でHPV 関連中咽頭がんが独立した分類として取り扱われるようになったそうです。

前述の記事では、HPV感染の予防としてワクチン接種という方法があるとして、医師らのコメントを紹介していますが、最後は下記のようにまとめています。

海外ではHPVワクチンの接種により、口やのどでのHPVの感染を減らすというデータが報告されていますが、中咽頭がんの発症を防ぐというデータはまだありません。
HPVに感染してから中咽頭がんを発症するまで10年から30年かかるとされ、ワクチンの効果をみるのには時間が必要です。
こうした状況のなかで、アメリカ、カナダ、台湾は中咽頭がんの予防のための接種を認めていて、このうちアメリカとカナダでは男性への定期接種が行われています。
一方日本では、口やのどでの感染に対するワクチンの有効性を示すデータや、男性の接種の安全性を大規模に調べた研究はまだなく、有効性や安全性についての議論はまとまっていません。
厚生労働省は、最新の知見をまとめる作業を行っていて、それを元に必要性を議論していくとしています。

https://www.nhk.or.jp/shutoken/yokohama/article/015/05/

これは、2023年8月の記事です。結局、まだ何もわかっていないのではないでしょうか。


ガーダシル添付文書第3版より

現在、日本で男性の接種が承認されているHPVワクチンはガーダシルだけですが、効果・効能に「中咽頭がん」は書かれていません。

ガーダシル添付文書第3版より


前述の記事にも、日本では「口やのどでの感染に対するワクチンの有効性を示すデータや、男性の接種の安全性を大規模に調べた研究はまだなく、有効性や安全性についての議論はまとまっていません」と書かれています。

ですから、もし「中咽頭がんにも効果がある」と勧める医師や専門家がいたら、注意が必要だと思います。