オミクロン株対応とインフルエンザのワクチン、同時接種の安全性は確認されていない!?
コロナとインフルエンザのワクチンを、同時に接種できるようになったという記事がありました。今接種するならオミクロン株対応ワクチンだと思いますが、オミクロン株対応ワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種が安全であるというデータは、どのようにして得たのでしょうか?
厚労省が参考にしたデータとは?
テレビ朝日「グッド!モーニング」2022年10月6日放送分からの記事に、下記のように書かれています(一部引用)。
■コロナ&インフルのワクチン“同時接種”
国は新型コロナとの同時流行に備え、今年から新型コロナとインフルエンザワクチンの同時接種も可能とする新たなルールを定めました。
しかし、同時接種に懸念点はないのでしょうか?
杉原理事長:「(同時接種は)心理的な心配感はあるでしょうし、当然、副反応はある。副反応も『両方やるから、出やすいんじゃないの?』と。僕らからすると、(副反応が)1回で済むんじゃない?という話」
同時接種は、海外の治験で安全性が確認されているうえ、副反応が1回で済むというメリットが大きいと指摘します。
杉原理事長:「(Q.副反応が同時接種でひどくなることは?)そういう情報はないです。理論的には、今までのワクチンで、そういうことは見当たらない」
(「グッド!モーニング」2022年10月6日放送分より)
海外の治験というのは、どの治験なのでしょうか? オミクロン株BA.5対応ワクチンは、ヒトに接種したデータさえまだ得られていないのに、いつ同時接種の治験を行ったのでしょうか? 治験というのが起源株ワクチンで行われたものであるなら、きちんとそれを知らせる必要があると思います。これから追加接種するのに、コロナ起源株とインフルの同時接種はしないでしょう。
追記:
10月13日付のリリースで、ヒトに投与して7日後のデータが出たと発表されました(下記参照)。
以下は、東京新聞WEBより一部引用です。
2022年10月2日 06時00分
◆抗体量変わらず、安全性も問題なし
Q インフルとコロナのワクチンを同時接種した場合の有効性と安全性は?
A 海外の報告では、それぞれ別に打った場合と比較して、抗体の量の差はほとんどなく、単独で打った場合と比べて有効性は劣らないとされた。米国の疾病対策センター(CDC)は、副反応についてコロナワクチンのみを追加接種した場合と比較したデータを発表している。それによると、同時接種したケースは、接種した場所の痛みなど局所的な症状はファイザー製が1.10倍、モデルナ製が1.05倍で、発熱や倦怠(けんたい)感などの全身の症状はファイザー製が1.08倍、モデルナ製が1.11倍だった。厚労省の専門部会は有効性と安全性に問題はないと結論づけた。
CDCが公開しているデータとは、これだと思います。以下、文字数が多いので、翻訳サイトを使用した和訳です。
「2021年9月22日から2022年5月1日まで、米国疾病対策予防センターが設立したスマートフォンを用いた任意モニタリングシステムv-safeを通じて、接種後0~7日目の自己申告によるワクチンデータを収集した。参加者は、COVID-19接種後にv-safeに自主的に登録した人」とのことです。
自己申告によるものであり、7日目までのデータです。
要点をまとめた部分には、下記のように書かれています。
Findings In this cohort study of self-reported data from 981 099 persons aged 12 years or older, simultaneous administration of a COVID-19 mRNA booster dose and an influenza vaccine was associated with 8% to 11% increases, respectively, in systemic reaction compared with COVID-19 mRNA booster alone. These differences were statistically significant.
Meaning Findings from this study suggest that simultaneous administration of COVID-19 mRNA booster and influenza vaccines may be associated with increased likelihood of systemic reactions.
12歳以上の981,099名の自己申告によるコホート研究において、COVID-19 mRNAブースターとインフルエンザワクチンの同時接種は、COVID-19 mRNAブースター単独投与と比較して、全身反応がそれぞれ8~11%増加することが示唆され、有意差があった。
本研究の結果、COVID-19 mRNAブースターとインフルエンザワクチンの同時接種は、全身性反応の可能性を高める可能性があることが示唆された。
これを厚労省の専門部会は、安全性に問題ないと結論づけたようです。
981,099名というのは多いように見えますが、同時接種の報告があったのは、そのうちの92,023名(9.4%)です。
Of a total of 981 099 persons aged 12 years or older registered with v-safe, simultaneous administration of COVID-19 mRNA booster and seasonal influenza vaccines was reported by 92 023 (9.4%) v-safe respondents;
Health impacts in the week after vaccination were reported by 11 658 respondents (19.0%) who simultaneously received Pfizer-BioNTech COVID-19 booster and influenza vaccines and 8210 respondents (26.8%) who simultaneously received Moderna COVID-19 booster and influenza vaccines. Inability to perform normal daily activities in the week following vaccination was reported by 9519 respondents (15.5%) who simultaneously received Pfizer-BioNTech COVID-19 booster and influenza vaccines and 6811 respondents (22.2%) who simultaneously received Moderna COVID-19 booster and influenza vaccines; fewer than 1% of respondents simultaneously administered vaccines required medical care, including 22 respondents (0.02%) who reportedly received care at a hospital. Information regarding reported hospitalizations (through a linked vaccine adverse event reporting system report, v-safe follow-up call, or v-safe free-text data) was available for 19 (86.4%) of the 22 respondents, including 10 (45.5%) who indicated hospitalization was unrelated or reported in error. Among the remaining respondents, reasons for hospitalization included excessive vomiting, supraventricular tachycardia, cardiac arrhythmia, chest discomfort, autoinflammatory disease flare, kidney infection, hypoxia, and stroke. Respondents who simultaneously received influenza and Pfizer-BioNTech COVID-19 booster vaccines were not more likely to report a health impact in the week following vaccination (aOR, 0.99; 95% CI, 0.97-1.02) than respondents who received a COVID-19 Pfizer-BioNTech COVID-19 booster alone; respondents who simultaneously received influenza and Moderna COVID-19 booster vaccines were slightly more likely to report any health impact in the week following vaccination (aOR, 1.05; 95% CI, 1.02-1.08) than respondents who received a Moderna COVID-19 booster alone.
ワクチン接種後1週間の健康への影響は、ファイザー・バイオンテック社製COVID-19ブースターとインフルエンザワクチンを同時に接種した11658人(19.0%)と、モデルナ社製COVID-19ブースターとインフルエンザワクチンを同時に接種した8210人(26.8%)から報告された。ワクチン接種後の1週間に通常の日常生活ができなかったと報告したのは、ファイザーバイオンテックCOVID-19ブースターとインフルエンザワクチンを同時に接種した9519人(15.5%)と、モデルナCOVID-19ブースターとインフルエンザワクチンを同時に接種した6811人(22.2%)。同時接種した回答者で医療を必要としたのは1%未満で、その中には病院で治療を受けたという22人(0.02%)の回答が含まれている。報告された入院に関する情報(リンクされたワクチン有害事象報告システムレポート、v-safeフォローアップコール、またはv-safeフリーテキストデータを通じて)は、入院が無関係または誤って報告されたと回答した10人(45.5%)を含む22人中19人(86.4%)について入手可能だった。残りの回答者の入院理由は、過度の嘔吐、上室性頻拍、不整脈、胸部不快感、自己炎症性疾患の再燃、腎臓感染、低酸素症、脳梗塞などであった。インフルエンザワクチンとファイザー・バイオテック社のCOVID-19ブースターワクチンを同時に接種した回答者は、ワクチン接種後の1週間に健康への影響を報告する可能性は高くなかった(aOR, 0.99; 95% CI, 0.97-1.02)。インフルエンザワクチンとモデルナCOVID-19ブースターを同時に接種した回答者は、モデルナCOVID-19ブースターを単独で接種した回答者よりも、接種後の1週間に何らかの健康影響を報告する可能性がわずかに高かった(aOR、1.05;95%CI、1.02-1.08)。


The phase 4 trial that included persons who simultaneously received dose 2 Pfizer-BioNTech COVID-19 and influenza vaccines did not identify any serious safety concerns. Hospitalization following either of these vaccine combinations was uncommonly reported to v-safe. Given the limited data collected by v-safe, it is not possible to determine whether hospitalization was related to vaccination unless specifically noted by the respondent.
ファイザー・バイオテック社製COVID-19とインフルエンザワクチンの同時接種者を対象とした第4相試験では、安全性に関する重大な懸念は確認されなかった。これらのワクチンの組み合わせによる入院がv-safeに報告されることはまれだった。v-safeが収集した限られたデータでは、回答者が特に指摘しない限り、入院がワクチン接種と関連しているかどうかを判断することはできない。
「v-safeが収集した限られたデータでは、回答者が特に指摘しない限り、入院がワクチン接種と関連しているかどうかを判断することはできない」という部分は、とても重要だと思います。自己申告なので、本人がワクチンと関連があると思うか思わないかで、調査結果も変わってくるということではないでしょうか。
7月22日の資料に上記のデータなどがまとめられた資料がありました。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000968057.pdf

これで安全といえるのか?
テレビ朝日の記事に出てくる治験というのが、上記に出てきた第4相試験のことなのかわかりませんが、詳細は下記に書かれています。
2021年4月1日から6月26日の間に行われたもので、「インフルエンザワクチンとCOVID-19ワクチン2回目を同時投与し、21日目にプラセボを投与する群」(340名)と、「プラセボとCOVID-19ワクチン2回目を同時投与し、21日目にインフルエンザワクチンを投与する群」(339名)にランダムに振り分けたとのこと。アストラゼネカ社とファイザー社のワクチンを使用しているので、製薬会社が行ったものではないようです。
第4相試験というのは販売後に行われるもので、PMDAが公開している「臨床試験の一般指針」には、下記のように書かれています。

この第4相とされる試験の中で、有害事象について気になる記述がありました。
There were 173 unsolicited adverse events after vaccination reported by 112 participants in the concomitant COVID-19 and influenza vaccine group after day 0 and 155 unsolicited adverse events reported by 99 participants in the COVID-19 vaccine alone group.After day 21, 66 unsolicited adverse events were reported by 49 participants in the concomitant COVID-19 and influenza vaccine group compared with 84 unsolicited adverse events reported by 57 participants in the COVID-19 alone group (appendix pp 47–48, 59–66).
Rates of medically attended adverse events were similar between groups after day 0 (25 medically attended adverse events reported by 22 participants in the concomitant COVID-19 and influenza vaccine group and 27 medically attended adverse events reported by 20 participants in the COVID-19 alone group) and after day 21 (18 medically attended adverse events reported by 15 participants in the concomitant COVID-19 and influenza vaccine group who received placebo at day 21 compared with 15 medically attended adverse events reported by 14 participants in the COVID-19 alone group who received the influenza vaccine at day 21; appendix pp 47–48, 67–71).
最初の接種日には、COVID-19とインフルエンザワクチンの同時接種群の112名から173件の自発的な報告がされ、COVID-19ワクチン単独群の99名から155件の自発報告があった。
21日目の接種後、COVID-19とインフルエンザワクチン併用群(21日目にプラセボ)では49人から66件の自発的な報告があったのに対し、COVID-19単独群(21日目にインフルエンザワクチン)では57人から84件の自発的な報告があった。
受診を必要とした有害事象の発生率は、最初の接種日にCOVID-19とインフルエンザワクチン同時接種群22名から25件の報告、COVID-19単独群20名から27件の報告があり、21日目にプラセボを投与された同時接種群15名から18件の報告に対し、21日目にインフルエンザワクチンを投与されたCOVID-19単独群14名から報告された15件とともに、群間で差がなかった。
Unsolicited adverse eventsとmedically attended adverse events の訳が、なんだか翻訳サイトだとしっくりこないので調べてみました。
SolicitedとUnsolicitedは、副作用の説明ではよく使われる用語のようですが、決まった日本語訳はないようです。
日本内科学会雑誌第100巻第8号「Evidence-based Medicine(EBM)有害事象と医薬品の因果関係評価について」より
Solicitedとは試験や調査等登録患者を一定期間観察して,有害事象が発症しないかを観察する,つまり観察される集団があらかじめ定義されている安全性情報をいう.
Solicitedは、「このような症状が発生するかどうか観察してください」という依頼の下で観察したデータだと思います。一方、Unsolicitedは、臨床現場の医師が自発的に報告する副反応疑いの症状などを指すようです。
medically attended adverse events は、病院での受診を必要とする有害事象を指すようです。つまり、自然に治る感じではなく、症状が重いケースが多いのだと思います。
そもそも、コロナワクチン単独でも有害事象がものすごく多くて、その因果関係はきちんと調べてられていない状態です。自発報告が「併用群の112名から173件」「単独群の99名から155件」というのはどちらも多いと思いますし、それについても接種との関連を検証する必要があるはずです。受診を必要とする有害事象の報告が「併用群22名から25件、単独群20名から27件」というのも、単独群でもこんなに多いから併用群の多さが目立たないのではないでしょうか。
それで「単独と併用を比べても大きな差はありません」という結果になっても、それは安全だといえるのでしょうか・・・。

Our findings show that concomitant administration of six different combinations of COVID-19 and influenza vaccines raised no safety concerns, produced acceptable reactogenicity profiles, and preserved binding antibody responses. The systemic reactogenicity profiles were considered acceptable despite an increase in the rate of systemic events above 25% in two cohorts.
その結果、COVID-19とインフルエンザワクチンの6種類の併用投与は、安全性に関する懸念はなく、許容可能な反応原性プロファイルを示し、結合抗体反応は維持された。全身反応性プロファイルは、2つのコホートで全身反応の発生率が25%以上増加したものの、許容範囲内と考えられた。
いったいどこまでが、「許容範囲内」なのでしょうか。
自己申告によるデータは2021年9月22日から2022年5月1日、第4相試験とされているものが2021年4月1日から6月26日。どちらも、まだオミクロン株対応ワクチンは販売されていない期間です。
つまり、これから同時接種する可能性があるのはオミクロン株対応ワクチンなのに、厚労省が参考にしたデータはオミクロン株対応ワクチンでの調査ではないのです。
同時接種で健康被害が起きたら、どちらが原因かわからない?
同時接種した後に体調不良が起きたら、どちらのワクチンのせいになるのでしょうか。インフルエンザワクチンでも、救済制度で認定されている事例はあります。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000968536.pdf

どちらが原因かわからなければ、救済の認定はこれまで以上に難しくなるのではないでしょうか。また、「同時接種が必要」だと認めた医師の責任は、問われないのでしょうか。
インフルエンザワクチンの添付文書
インフルエンザワクチンの添付文書などは、下記のサイトで確認できます。多数の製薬会社から出ていますが、改定された時期は同じです。2022年7月に改定されたものが、最新版として公開されています。
「Drug Safety Update No.293」(2020年10月)には、下記のように書かれています。

今までは間隔をあけることになっていたのに、なぜ2020年に同時接種してもよいことになったのでしょうか。そもそも、同時接種の必要があるというのは、どのようなときなのでしょうか。
