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混ぜるな危険!? ワクシニアウイルスとサル痘の関係

以前の記事で取り上げた天然痘ワクチンの水平伝播について調べていたら、「ワクシニアウイルス」(vaccinia virus)についていろいろ気になりました。さらに調べていくと、サル痘と関連した記述もあり、今後の展開が心配です。

天然痘ワクチンは気軽に接種するものではない!?

まずは、厚労省による「天然痘対応指針」にある、予防接種の項目を確認しました。

天 然 痘 対 応 指 針(第5版)平成16年5月14日https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/j-terr/2004/0514-1/dl/01.pdf

別紙のアドバイスシート(P.57~61)に、予防接種をするべきかどうかの判断が、下記のような分類で書かれています。これは致死率の高い天然痘の患者との接触に関することであり、サル痘患者の接触とは異なりますが、接触がなかった人(不安を抱く市民)への記述に注目すべきことが書かれていました。

① 第一級接触
・ 天然痘患者の分泌物の飛沫及びエアロゾール、又はそれらで汚染した物質を介して、感染源への暴露があったと考えられる接触。
Q2:天然痘の予防接種を受ける必要がありますか?
A2:速やかに予防接種を行う必要があります。予防接種は、天然痘に感染した患者さんとの接触後 4 日以内に行うことが最も有効であると考えられています。
② 二級接触
・ 空気を介した接触など感染のリスクの低い接触。
・ 一時的又は遠隔での接触者は、第二級接触としては取り扱わない。
Q2:天然痘の予防接種を受ける必要がありますか?
A2:予防接種を行う必要があります。
③ 二次接触
・ 第一級接触者と密接な接触のあった場合。
Q2:天然痘の予防接種を受ける必要がありますか?
A2:予防接種が不適当とされている場合を除いて、予防接種を行う必要があります。
不安を抱く市民
Q1:なぜ、特別な処置が必要ないのですか?
A1:天然痘患者との密接な接触がないため、感染のリスクがほとんどないと考えられるためです。
Q2:天然痘の予防接種を受けるべきですか?
A2:予防接種は受ける必要はありません。天然痘ワクチンでは、まれではありますが、致死性のものを含む副反応が認められることがあるため、感染リスクが高い者以外には行わないこととされています。

https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/j-terr/2004/0514-1/dl/01.pdf

「感染リスクが高い者以外には行わないこととされています」と書かれています。つまり、「心配だから接種しておこう」というものではないということだと思います。

予防接種(P.62~)の項目には、下記のように書かれています。

II 天然痘ワクチン
1 ワクチンの概要
・天然痘ワクチンは天然痘ウイルスと同属のポックスウイルス科オルソポックスウイルス属ワクシニアウイルスを弱毒化して作成された生ワクチンである。
・日本ではワクシニアウイルス株として LC16m8 株が使用されており、米国で使用されているものに比較し、副反応がより少ないとされている。
2 有効性
・予防接種を適切に実施した場合、善感者における有効率はほぼ 100%。
・暴露後の予防接種においても、暴露後 4 日以内であれば、感染の予防又は症状の軽減が可能である。
3 接種不適当者、接種後の正常な反応、副反応等
予防接種を受けた人からのワクシニアウイルス感染の可能性があるため、接種部位が完治するまで接触のある人の安全性についても考慮する。湿疹、アトピー性皮膚炎、基礎疾患、特に重度の免疫不全のある人との接触は避けるようにする。

https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/j-terr/2004/0514-1/dl/01.pdf

ここでも、「予防接種を受けた人からのワクシニアウイルス感染の可能性がある」と書かれています。

これらの記述から考えれば、サル痘に対しても、広く天然痘ワクチン接種を促すのではなく、曝露した人に対して迅速に接種できる環境を整える対策をとることが、通常の流れだと思われます。


ワクシニアウイルス(vaccinia virus)のリスク

在NY総領事館のサイトにも、天然痘に関するQ&Aがあります。

米疾病対策センター(CDC)の情報から書かれているので、日本のワクチンとは異なりますが、ワクシニアウイルスについては参考になると思います。

Q:ワクチンによって天然痘にかかることがあるのか?
A:ない。天然痘ワクチンは天然痘ウイルスを含んでおらず、天然痘を感染させたり、天然痘を広めたりするものではない。しかし、ワクチンはvacciniaという別の型のウイルスを含んでおり、ウイルスは生きているため、接種部とは異なる体の部分や、他の人の体にまき散ることはある。手洗いや使用済み包帯を注意深く処理し、ワクチン接種部を適切に処置する必要がある。

Q:ワクチン接種を受けた人から、ワクチンのウイルスが移ることがあるか?
A:ある。ワクチン接種部に接触したり、使用済み包帯に触れると、ワクチンのウィルスは移る。ワクチン・ウイルスは空気感染はしないが、発疹や発熱、頭痛や体の痛みを引き起こすことがある。

Q:天然痘ワクチンはどの程度安全か?
A:天然痘ワクチンは、天然痘ウィルスに曝された場合の最善の防護策である。多くの者は、(ワクチンの接種後、)通常、腕の不快感、発熱、身体の痛み等の軽い反応を経験する。最近の試験では、接種された者の3人に一人が、接種後、会社の欠勤、学校の欠席、余暇活動の中止をする程度に具合が悪くなるか、睡眠障害を起こしている。更にワクチンには危険が伴っている。過去、初めてワクチンを接種された100万人の内約1000人は、生命に危険を及ぼすものではないにせよ重い副作用を経験している。これらの反応には、(中毒又はアレルギー的な)強い反応がワクチン接種部で発生することや「バクチナ・ウイルス」(vaccina virus:天然痘ワクチンの中の生ウイルス)の体の他の部分又は他人への感染などである。(以下略)

https://www.ny.us.emb-japan.go.jp/jp/h/08.html

伝播については、「接種部の接触」などによるもので、空気感染はないと書かれていますが、飛沫についてはどうなのでしょうか。おたふく風邪ワクチンの論文では、家庭内での伝播ということで、特にベタベタ触ったりしなくても伝播したような印象でした(下記参照)。

現在、ニューヨークなどでサル痘予防のワクチンが接種されていますが、それは過去に使われていた天然痘ワクチンではなく、Bavarian Nordic社の「Jynneos」です。FDAが2021年9月24日に、サル痘予防のワクチンとして初めて承認しました。

厚労省のサイトによると、「2021年7月17日、米国(USA)の国際保健規則(IHR)担当窓口は、テキサス州ダラスでサル痘のヒト輸入症例が確認されたことを、汎米保健機構(PAHO:WHOアメリカ地域事務局)に通知しました」とあります。「米国への旅行者からサル痘患者が発見されたのは、今回が初めてであり、2003年のアウトブレイク以来、米国で報告された初めての症例です」とのこと。

7月にアメリカで初めての症例が報告されて、9月にはサル痘ワクチンが初めて承認とは、準備よすぎる感じが気になります。このワクチンは、改変ワクシニア・アンカラ(Modified Vaccinia Ankara)と呼ばれるワクシニア・ウイルスの改変型を含有しているとのことです。


コロナ用に天然痘由来ワクチン?

ワクシニアウイルについて調べていたら、他のワクチン開発や治療の研究に使われているという記事が出てきました。例えば、コロナワクチンです。

弱毒化した天然痘のワクチン「ワクシニアウイルス」DIs株に、SARS-CoV-2遺伝子を導入した組換え生ワクチンを開発しているという都政レポート(2021年2月1日)です。

天然痘ワクチンは200年にわたって使われた実績があります。今回使用したDIs株はこれまでのワクチンをさらに弱毒化したもので副作用はほとんどありません。

https://www.koho.metro.tokyo.lg.jp/diary/report/2021/02/01/01.html

「天然痘ワクチンは200年にわたって使われた実績があり、DIs株はさらに弱毒化しているので副作用がほとんどない」という説明がありますが、200年の実績があるからといって、副作用がないことはいえないと思います。200年の実績があっても、同じ株のワクチンをずっと使ってきたわけではないからです。

日本では1976年を最後に、天然痘ワクチンの定期接種が廃止されており、その後は備蓄用として製造されて出番はほとんどなかったはずです。ワクチン株も新しいものになっていますし、食べ物などの変化により私たちの体も変わってきていることでしょう。現在のヒトに対して接種した実績がないなら、安全性は確認できていないのではないでしょうか。

7月29日に、「サル痘」の発症・重症化予防を目的とした使用も認めることを了承されたワクチンはLC16m8 株ですが、8月3日に改訂された添付文書や、医薬品リスク管理計画書(RMP)が公開されていました。


株の弱毒化とその後

天然痘のワクチン株について調べてみると、当時の千葉県立血清研究所で橋爪壮博士がLC16m8 を開発した経緯が「弱毒痘苗株 LC16m8 の開発とこのワクチンの現況」(2011年)という記事に書かれていました。https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/pdf/02302/023020181.pdf

Lister 株を親株として弱毒化した中で、LC16は DIs 株と同程度に極めて弱毒であったとのこと。そこから、LC16→LC16mO→LC16m8となったのですが、2011年時点ではほとんど使われていないと書かれています。

この種痘研究班の成績から 1975 年に厚生省の製造承認を受け,製品として出せるようになったが,わが国では 1976 年に法律を改正し,定期種痘を中止したので,LC16m8 ワクチンは実際にはほとんど使われず,緊急事態用に備蓄されるワクチンの一つとなった.このワクチンは一般には使われなかったが,Orthopox グループのウイルスを取り扱う一部の研究者および海外に派遣された自衛隊員に使用された.

https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/pdf/02302/023020181.pdf

その後、千葉血清は事業を中止することになり、備蓄ワクチンの製造は化血研(化学及血清療法研究所)に移譲。

LC16m8 ワクチンは千葉血清で開発し,製造していたが,2002 年 9 月に千葉血清は事業を中止することになり,このワクチンの製造を 2002 年 7月に化血研に移譲することになった.わが国では2001 年 9 月の米国のテロ事件以降,痘瘡ワクチンの製造が再開され,2002 年 3 月には国家備蓄されることになった.したがって 2002 年 7 月以降は化血研で備蓄ワクチンの製造が継続されることになった
 化血研はこのワクチンの需要が世界的に必要とされることを想定してか,このワクチン製造に米国 FDA の助言も参考にし,最新の製造設備基準を満たす新たな施設の建設をし,現在すでに稼働している.

https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/pdf/02302/023020181.pdf

「このワクチンの需要が世界的に必要とされることを想定」「FDAの助言」とさらりと書いてありますが、2011年に書かれた記事です。

化血研といえば、何か問題を起こしたことが記憶にありましたが、2015年に血液製剤などを長年にわたり承認内容と異なる方法で製造していたことが判明して、問題となっていました。

https://www.pmda.go.jp/files/000212645.pdf

その後、厚労省から事業譲渡が求められていた化学及血清療法研究所(化血研)は新会社を設立し、ワクチン、血漿分画製剤などの主要事業を譲渡。新会社は明治ホールディングス(HD)の連結子会社として事業を行うことになりました。そして2018年7月2日、明治ホールディングス・熊本県企業グループ7社・熊本県庁が出資する「KMバイオロジクス」に製薬事業などの主要事業を譲渡。

今回承認された乾燥細胞培養痘そうワクチン LC16「KMB」の製造販売業者が、「KMバイオロジクス」です。橋爪壮博士が開発したLC16m8が、千葉血清から化血研を経て引き継がれ、どのようにワクチン事業が行われてきたのか気になります。特に、化血研が血液製剤について行っていたことを考えると、簡単には信用できません。サル痘に関する新たな臨床試験も、実施していないのです。

乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」に関する資料https://www.pmda.go.jp/drugs/2022/P20220802001/261976000_15500EZZ00960_K100_1.pdf

サル痘への有効性を確認した臨床試験は、米国で痘そうワクチン接種歴の無い健康成人 154 名を対象に実施した臨床試験(Phase 1/2試験 (NCT00103584))があり、2011年の論文を参照とのこと。

国内では、痘そうワクチン接種歴の無い自衛隊員1529 名及び過去に痘そうワクチン接種歴のある自衛隊員 1692 名を対象に 2002~2005 年に痘そうワクチン LC16m8 を接種した臨床研究成績。そして、268 名の成人(自衛隊員、196 名が初種痘、71 名が再種痘、1 名は不明)を対象に実施した市販後調査(2015年)。人数も少ないですし、コロナワクチンを接種してからこのワクチンを接種した人の事例がありません。


アステラス製薬が研究している「腫瘍溶解性ウイルス」

ワクシニアウイルスを調べていたら、もう1つ気になる研究がありました。アステラス製薬は2018年に鳥取大学から、がん細胞内でのみ増殖する性質のウイルスを用いて、がんを攻撃する腫瘍溶解性ウイルス「ASP9801」の開発権を獲得したようです。同社のサイトには、臨床第1相まで進んでいると、下記、「がん免疫」という項目にあります。

https://www.astellas.com/jp/partnering/primary-focus

遺伝子組換え生物を扱う場合には、承認申請が必要になるようで、下記のサイトに承認申請書と結果通知書が公開されています。そこに、非常に気になることが書かれていました。農林水産分野もすごいことになっていますが、今回は医薬品等分野の「弱毒化ワクシニアウイルス LC16mO 株」の使用について注目します。

◆医薬品等分野◆ ○令和元年11月26日承認
アステラス製薬が、弱毒化ワクシニアウイルス LC16mO 株の使用を申請しています。

承認申請書
https://www.biodic.go.jp/bch/download/lmo/R1.11.26_iyaku_ap1.pdf

結果通知書
https://www.biodic.go.jp/bch/download/lmo/R1.11.26_iyaku_sp1.pdf

結果通知書より

投与後の患者の管理
(5) 本遺伝子組換え生物等の投与後、投与部位を消毒し、投与部位から排出される本遺伝子組換え生物等の環境への拡散が最小限となるよう、注入部位を防水密閉ドレッシング材等で被覆する。
6) 投与を受けた患者を、他の区画と明確に区別された一般個室(以下「個室」という。)に入室させ、投与後、本遺伝子組換え生物等の排出等の挙動が明らかになるまでの期間、患者からの本遺伝子組換え生物等を含む排泄物等の環境への放出を最小限に留めるとともに、伝播リスクを低減化するための管理(以下「個室管理」という。)を行う。
(10) 投与された本遺伝子組換え生物等の排出等の挙動が明らかになるまで、血液、尿、糞又は唾液等に対し、本遺伝子組換え生物等の排出等の検査を経時的に実施する。
(11) 遺伝子組換え生物等の予期しない増殖又は伝播が疑われた場合には、血液、体液、分泌物又は排泄物等に対する本遺伝子組換え生物等の有無を確認するために必要な検査を行う。
2. 生物多様性影響評価書
(3) 遺伝子組換え生物等の使用等に関する情報
国内外において、これまでに本遺伝子組換え生物等の使用実績はない
(4) 生物多様性影響評価
本遺伝子組換え生物等は、以下の理由から病原性を示す可能性は低いと考えられる。
本遺伝子組換え生物等は、オルソポックスウイルス属に属する他のウイルス(以下「オルソポックスウイルス属ウイルス」という。)と共感染しない限り環境中での増殖は限定的であるが、オルソポックスウイルス属ウイルスは、現在、日本における存在は検出されていない。本遺伝子組換え生物等が感染する対象はヒト等一部のほ乳動物に限られており、また、体内の同一細胞に本遺伝子組換え生物等とオルソポックスウイルス属ウイルスが共感染する可能性は低いことから、核酸を水平伝達する可能性は低いと考えられる。

II. 審査の概略
1. 生物多様性影響評価の結果について
(4) 核酸を水平伝達する性質
本遺伝子組換え生物等の複製は感染した細胞の細胞質内で完結し、核に移行することはないため、本遺伝子組換え生物等のウイルスゲノム及び供与核酸が感染細胞のゲノムに組み込まれる可能性はない。
本遺伝子組換え生物等が感染する対象は LC16mO 株と同様にヒト等一部のほ乳動物であるが、LC16mO 株及び Lister 株が自然環境中に定着していないこと及び本遺伝子組換え生物等の正常細胞における増殖は LC16mO 株及び Lister株と比較して抑制されていることから、たとえ環境中に漏出した場合でも、次第に環境中から消失していくと考えられる。
環境中に漏出した本遺伝子組換え生物等が相同組換えによって自己複製可能なウイルスを生じる可能性もある。しかしながら、そのためには本遺伝子組換え生物等とオルソポックスウイルス属ウイルスが共感染する必要があることから、その可能性は低いと考えられる。

https://www.biodic.go.jp/bch/download/lmo/R1.11.26_iyaku_sp1.pdf

これまでにこの遺伝子組換え生物等の使用実績はなく、「オルソポックスウイルス属ウイルス」と共感染しないことを前提に、申請が行われています。けれども、サル痘ウイルスはオルソポックスウイルス属です。

臨床試験は第1相まで進んでいるということは、すでに投与された人はいるということです。このワクシニアウイルスとサル痘ウイルスが揃ってしまったら、どうなるのでしょうか。このような研究が、他にも行われているかもしれません。

もう1点、伝播についても書かれています。この研究でワクシニアウイルスの伝播が疑われた場合には、「血液、体液、分泌物又は排泄物等に対する本遺伝子組換え生物等の有無を確認する」ようにと書かれているということは、天然痘ワクチン接種者のワクシニアウイルスも下水などから伝播する可能性があるのではないでしょうか。もし、たくさんの人が接種したら、どのように伝播するかはまだわかっていないということだと思います。

以上のことから、ワクシニアウイルスの伝播問題は非常に心配です。